Spectral Color
うっすらと目を覚ました。部屋の中はまだ暗い。夜中に目を覚ますなんてよっぽど疲れているのか……。隣にいる瑞貴は、気持ち良さそうにスヤスヤと眠っている。彼の方を向いて、もう一度寝よう、と目を閉じようしたその時、背中に何かを感じた。
何かの気配、というほど実体があるようには感じられない。ただ、何かに見られているような感じがする。振り返るべきか? いや、無理。身体が動かない。これが金縛りか? え、金縛りって本当になるの?
無理無理無理無理。怖い。瑞貴、起きて。お願い、起きて。
背中に何かゾワゾワとしたものを感じるのは変わらない。むしろ、近づいてきている気がする。
何なの、お前。俺、ホントこういうの無理なんだって。あまり心当たりは無いのだけど、俺、何か悪いことしましたか?
あれだ、あの漫画のアレ。えぇぇぇ……俺、呪われてるの? 知らず知らずのうちに恨みを買ってしまっていたのか……。
瑞貴。お願い、起きて。そして、できたらこれを祓って。
なんとか寝ている彼に手を伸ばそうとするが、自分の手はまったく動かない。
あぁ、俺はアレに襲われてこの世を去るのか……。
動けないまま絶望したところで、突然、瑞貴が飛び起きた。
「ちょっとぉ! 邪魔しないでくれる⁉︎」
そう彼が叫んだと同時に、動かなかった俺の体がふっと軽くなった。
「ぁ……瑞貴……」
「……ん?」
飛び起きた瑞貴は、目をパチパチと瞬かせて周りを見回している。
「うわ……寝言で起きるとか……」
瑞貴がそう言って恥ずかしそうに俯いたところに、俺は思い切り彼に抱き付いた。
「瑞貴ぃ!」
「わぁ! どうしたの⁉︎」
「何かいた! 何かいたの!」
「何? 怖いのいたの?」
「怖いのいた」
「そっかそっか。もう、いなくなった?」
「うん……瑞貴が祓ってくれた」
「祓った? まぁいいや。ほら、寝るよ」
ものすごく軽くあしらわれながら、俺は瑞貴にベッドに寝かされた。
「……こっち側怖い」
「代わってもいいけど、逆にこっち側だと怖いのが見えちゃうんじゃない?」
「…………」
「……場所交代して、僕が抱っこする?」
「お願いします……」
そう答えると、瑞貴は『しょうがないなぁ』と溜息混じりに笑って、俺がもともと寝ていた側に寝そべった。
「おいで」
その言葉に素直に従って、彼の胸に顔を埋めるようにして抱き付いた。
「何がいたんだろうねぇ……?」
「無理。確認できない。金縛りに遭った。呪◯かもしれない」
「怖いの苦手なくせに、あぁいうの読むからだよ」
「だって……」
「安慈も疲れてるんだよ。しっかり休もうね」
そう言って、背中をトントンと叩かれているうちに落ち着いてきた。
「大丈夫、そういうのは僕がやっつけてあげるからね」
「うん……」
彼の体温と鼓動が心地良くて、ウトウトしてきた。
ひとりじゃなくて良かった……と心の底から思いながら、ゆっくりと眠りに落ちていった……。
何かの気配、というほど実体があるようには感じられない。ただ、何かに見られているような感じがする。振り返るべきか? いや、無理。身体が動かない。これが金縛りか? え、金縛りって本当になるの?
無理無理無理無理。怖い。瑞貴、起きて。お願い、起きて。
背中に何かゾワゾワとしたものを感じるのは変わらない。むしろ、近づいてきている気がする。
何なの、お前。俺、ホントこういうの無理なんだって。あまり心当たりは無いのだけど、俺、何か悪いことしましたか?
あれだ、あの漫画のアレ。えぇぇぇ……俺、呪われてるの? 知らず知らずのうちに恨みを買ってしまっていたのか……。
瑞貴。お願い、起きて。そして、できたらこれを祓って。
なんとか寝ている彼に手を伸ばそうとするが、自分の手はまったく動かない。
あぁ、俺はアレに襲われてこの世を去るのか……。
動けないまま絶望したところで、突然、瑞貴が飛び起きた。
「ちょっとぉ! 邪魔しないでくれる⁉︎」
そう彼が叫んだと同時に、動かなかった俺の体がふっと軽くなった。
「ぁ……瑞貴……」
「……ん?」
飛び起きた瑞貴は、目をパチパチと瞬かせて周りを見回している。
「うわ……寝言で起きるとか……」
瑞貴がそう言って恥ずかしそうに俯いたところに、俺は思い切り彼に抱き付いた。
「瑞貴ぃ!」
「わぁ! どうしたの⁉︎」
「何かいた! 何かいたの!」
「何? 怖いのいたの?」
「怖いのいた」
「そっかそっか。もう、いなくなった?」
「うん……瑞貴が祓ってくれた」
「祓った? まぁいいや。ほら、寝るよ」
ものすごく軽くあしらわれながら、俺は瑞貴にベッドに寝かされた。
「……こっち側怖い」
「代わってもいいけど、逆にこっち側だと怖いのが見えちゃうんじゃない?」
「…………」
「……場所交代して、僕が抱っこする?」
「お願いします……」
そう答えると、瑞貴は『しょうがないなぁ』と溜息混じりに笑って、俺がもともと寝ていた側に寝そべった。
「おいで」
その言葉に素直に従って、彼の胸に顔を埋めるようにして抱き付いた。
「何がいたんだろうねぇ……?」
「無理。確認できない。金縛りに遭った。呪◯かもしれない」
「怖いの苦手なくせに、あぁいうの読むからだよ」
「だって……」
「安慈も疲れてるんだよ。しっかり休もうね」
そう言って、背中をトントンと叩かれているうちに落ち着いてきた。
「大丈夫、そういうのは僕がやっつけてあげるからね」
「うん……」
彼の体温と鼓動が心地良くて、ウトウトしてきた。
ひとりじゃなくて良かった……と心の底から思いながら、ゆっくりと眠りに落ちていった……。