Spectral Color
「暑いー!ちょっと休憩しよ」
「いいよ」
一番暑い時間を避けて家を出てきたつもりだったけれど、この季節の日差しは冬と違って夕方に近づいても容赦ない。二人で買い物をして戻ってきたところだけれど、あまりの暑さに通り道にある緑の多い公園で一休みすることにした。
「ねぇ、あそこ陰だから、あそこに座ろう」
と、瑞貴が片手に持ったティッシュのパックをぶらぶらさせながら先に行き、木陰のベンチに腰掛ける。
「ジュース飲んじゃう?」
「飲む」
買い物袋から、さっき買ったばかりのジュースのペットボトルを取り出して彼に渡してから、俺もベンチに座った。
「陰だとちょっとだけ涼しいね」
ジュースを一口飲んでから彼がそう言った。ふわり、と風が通り抜けていくと、汗ばんでいた肌が一瞬ひんやりとする。
「そうだね。この公園、自然が多いよね」
買い物帰りに公園に寄り道をすることが多い。前に住んでいた家に瑞貴が遊びにきた時も、買い物帰りに公園に寄っていた。その時は秋頃だったから、山茶花を見たんだっけな。
「ここ、ちゃんと植栽が手入れされてる感じする。いいところだね。たまには緑が多いところに行かないと、心が疲れちゃうからね」
「この前、翔と川行ったじゃん」
「あれは弾丸ツアーだったから疲れたけど……。でも、いい場所だったね。また行きたいかも」
「じゃあ、翔に言っておくよ。すぐ飛んでくると思うよ」
俺がそう言うと、彼が笑った。
「翔ほど動けないけれど、思い切って旅行もいいよねぇ……一泊でもいいからさ」
彼が上を見上げながらそう言う。つられて俺も上を見上げると、葉の間から光が溢れている。こういうの、久しく見ていなかったな……なんてぼんやり思っていた。
「それなら、連休取ってもいいんじゃない? 有給も使わないとだし」
「そうだよね。有給! 溜まってるの!」
「じゃあ、緑を見に行く旅行、家で計画しようか」
そう言って、俺はベンチから立ち上がる。
「さ、帰ろう」
そう言って瑞貴に向かって手を差し出すと、彼はちょっと照れたように笑って俺の手を取って立ち上がった。
「……今の、お姫様みたいじゃない?」
「俺にとっては、お姫様みたいなものだからいいの」
「僕はお姫様じゃないよぅ」
不貞腐れながらそう言う彼が可愛らしくて思わず笑ってしまった。
突然降って湧いた旅行の話、彼と計画するのが楽しみで、帰り道は少しだけ浮き足立っていた。
「いいよ」
一番暑い時間を避けて家を出てきたつもりだったけれど、この季節の日差しは冬と違って夕方に近づいても容赦ない。二人で買い物をして戻ってきたところだけれど、あまりの暑さに通り道にある緑の多い公園で一休みすることにした。
「ねぇ、あそこ陰だから、あそこに座ろう」
と、瑞貴が片手に持ったティッシュのパックをぶらぶらさせながら先に行き、木陰のベンチに腰掛ける。
「ジュース飲んじゃう?」
「飲む」
買い物袋から、さっき買ったばかりのジュースのペットボトルを取り出して彼に渡してから、俺もベンチに座った。
「陰だとちょっとだけ涼しいね」
ジュースを一口飲んでから彼がそう言った。ふわり、と風が通り抜けていくと、汗ばんでいた肌が一瞬ひんやりとする。
「そうだね。この公園、自然が多いよね」
買い物帰りに公園に寄り道をすることが多い。前に住んでいた家に瑞貴が遊びにきた時も、買い物帰りに公園に寄っていた。その時は秋頃だったから、山茶花を見たんだっけな。
「ここ、ちゃんと植栽が手入れされてる感じする。いいところだね。たまには緑が多いところに行かないと、心が疲れちゃうからね」
「この前、翔と川行ったじゃん」
「あれは弾丸ツアーだったから疲れたけど……。でも、いい場所だったね。また行きたいかも」
「じゃあ、翔に言っておくよ。すぐ飛んでくると思うよ」
俺がそう言うと、彼が笑った。
「翔ほど動けないけれど、思い切って旅行もいいよねぇ……一泊でもいいからさ」
彼が上を見上げながらそう言う。つられて俺も上を見上げると、葉の間から光が溢れている。こういうの、久しく見ていなかったな……なんてぼんやり思っていた。
「それなら、連休取ってもいいんじゃない? 有給も使わないとだし」
「そうだよね。有給! 溜まってるの!」
「じゃあ、緑を見に行く旅行、家で計画しようか」
そう言って、俺はベンチから立ち上がる。
「さ、帰ろう」
そう言って瑞貴に向かって手を差し出すと、彼はちょっと照れたように笑って俺の手を取って立ち上がった。
「……今の、お姫様みたいじゃない?」
「俺にとっては、お姫様みたいなものだからいいの」
「僕はお姫様じゃないよぅ」
不貞腐れながらそう言う彼が可愛らしくて思わず笑ってしまった。
突然降って湧いた旅行の話、彼と計画するのが楽しみで、帰り道は少しだけ浮き足立っていた。