Spectral Color
「昔ね、クラゲ飼ってみたかったんだよね」
夕飯の支度をしている時に、瑞貴が唐突にそう話しだした。
「そうなんだ。水族館で見るの好きだもんね」
「うん。それでね、水族館まで行くの大変だから、家で飼っちゃえばいいじゃんって思ったの」
彼は割いたカニカマをボウルに入れながらそう言う。
「うん。でも飼ってたっけ?」
「ううん。飼いたくて色々調べたんだけど、必要な物とか多いし、水の管理とかちょっと大変そうで諦めちゃった。カラージェリーフィッシュを何色か飼いたかったんだけどねぇ」
カニカマを入れ終わると、今度は茹でて水気を切った春雨をボウルに入れていた。
「キュウリ切れた?」
「切れたよ。はい、入れるよー」
まな板から千切りにしたキュウリを滑らせるようにボウルに入れる。
「今でも、クラゲ飼いたい?」
予め合わせておいた調味料を瑞貴がボウルに投入したところでそう訊いてみた。
「んー……そうでもない。忙しくてそんなにクラゲのこと見ていられないだろうし」
「そっか」
「それに……もう独りじゃないから、何か飼わなくても大丈夫」
そう言って瑞貴が穏やかに笑う。不覚にも、胸の奥がキュッと締め付けられた。
「ふふふ。じゃあ、また水族館でクラゲを見ようね」
「うん」
「さて……こっちも焼き上がったみたいだよ」
火にかけていたフライパンからパチパチといい音がする。
「じゃあ、僕こっち盛り付けちゃうね」
「うん」
彼が小鉢を出して、ボウルの中身を盛り付けていくのを視界の端で見ながら、フライパンに皿を被せて、ひっくり返した。
「わぁ、上手ー!」
テーブルに持っていくと彼が嬉しそうにそう言った。
「はい、今日も上手に出来ました」
「ふふふ。安慈は料理上手。でもさ、クラゲの話をした後にクラゲ食べるってシュールだね」
「クラゲの話を振ってきたのは瑞貴でしょ?」
「そうだけど」
今夜のメニューは、二人で作った餃子と中華クラゲの春雨サラダ。
「まぁ、ちょっとシュールかな?」
「ふふ。早く食べよう」
「「いただきます」」
二人で声を合わせて食べ始める。
今度、水族館でクラゲを見たら、瑞貴はクラゲ食べたくなるのかなぁ……? なんて、思ったけれど口にしないでおいた。
「美味しい?」
「うん、美味しい」
こうしてニコニコしながら食べてくれる人がいるなら、料理も作り甲斐あるよね。
今日も美味しくできました。
夕飯の支度をしている時に、瑞貴が唐突にそう話しだした。
「そうなんだ。水族館で見るの好きだもんね」
「うん。それでね、水族館まで行くの大変だから、家で飼っちゃえばいいじゃんって思ったの」
彼は割いたカニカマをボウルに入れながらそう言う。
「うん。でも飼ってたっけ?」
「ううん。飼いたくて色々調べたんだけど、必要な物とか多いし、水の管理とかちょっと大変そうで諦めちゃった。カラージェリーフィッシュを何色か飼いたかったんだけどねぇ」
カニカマを入れ終わると、今度は茹でて水気を切った春雨をボウルに入れていた。
「キュウリ切れた?」
「切れたよ。はい、入れるよー」
まな板から千切りにしたキュウリを滑らせるようにボウルに入れる。
「今でも、クラゲ飼いたい?」
予め合わせておいた調味料を瑞貴がボウルに投入したところでそう訊いてみた。
「んー……そうでもない。忙しくてそんなにクラゲのこと見ていられないだろうし」
「そっか」
「それに……もう独りじゃないから、何か飼わなくても大丈夫」
そう言って瑞貴が穏やかに笑う。不覚にも、胸の奥がキュッと締め付けられた。
「ふふふ。じゃあ、また水族館でクラゲを見ようね」
「うん」
「さて……こっちも焼き上がったみたいだよ」
火にかけていたフライパンからパチパチといい音がする。
「じゃあ、僕こっち盛り付けちゃうね」
「うん」
彼が小鉢を出して、ボウルの中身を盛り付けていくのを視界の端で見ながら、フライパンに皿を被せて、ひっくり返した。
「わぁ、上手ー!」
テーブルに持っていくと彼が嬉しそうにそう言った。
「はい、今日も上手に出来ました」
「ふふふ。安慈は料理上手。でもさ、クラゲの話をした後にクラゲ食べるってシュールだね」
「クラゲの話を振ってきたのは瑞貴でしょ?」
「そうだけど」
今夜のメニューは、二人で作った餃子と中華クラゲの春雨サラダ。
「まぁ、ちょっとシュールかな?」
「ふふ。早く食べよう」
「「いただきます」」
二人で声を合わせて食べ始める。
今度、水族館でクラゲを見たら、瑞貴はクラゲ食べたくなるのかなぁ……? なんて、思ったけれど口にしないでおいた。
「美味しい?」
「うん、美味しい」
こうしてニコニコしながら食べてくれる人がいるなら、料理も作り甲斐あるよね。
今日も美味しくできました。