Achromatic

二人して帰宅が遅くなると、この季節はどうしても部屋が冷え切ってしまう。帰ってすぐにエアコンは入れるけれど、部屋が暖まるのに時間がかかる。二人で夕食と入浴も済ませたのに、
寝室は大して暖まっていなかった。
「うー、寒い」
瑞貴が早々にベッドに入って布団に包まる。
「今日、寒かったもんね。なかなか暖まらないね」
そう言って、俺もベッドに入ると彼が抱きついてくる。
「寒いから」
まだ、何も言ってないのに、そう言ってきた彼が可愛いらしくて思わず笑ってしまう。
「布団も冷たいんだもん。しょうがないじゃん」
「俺、何も言ってないよ? 別にくっついてていいし」
「こうして、くっついてるとさ……あったかくて眠くなっちゃう」
「いいじゃない。今日も疲れたでしょ。早く寝よう」
「でも、僕もうちょっと安慈と話していたい……」
そう言って、彼が足を絡めてきたが、彼の足の冷たさに驚いてしまった。
「足冷たっ!」
「僕、冷え性なの」
「さっきお風呂入ったのにもう冷えちゃったの?」
「いつもそうだよ」
「これじゃあ、眠れないんじゃない? 靴下履く?」
「ううん。こうしてくっついてればいい」
そう言って、彼はまた俺の足に自分の足をくっつけてくる。
「もう、冷たいよぉ」
「温かいんだから、その体温分けてよ」
そう言って彼は更に脚を絡めて、身体も寄せてきたから、自分の熱を移すようにぎゅぅ、と抱き締める。
「温かい?」
「うん。……幸せ」

瑞貴の言葉に胸がキュッと締め付けられる。彼は、俺の胸元に顔を擦り寄せて気持ち良さそうに目を閉じている。
「そっか……こうしてると幸せだね」
「うん……」
それから、お互い何も言わずにいたら、暫くして彼の呼吸が穏やかになっていた。もう、寝てしまったようだ。
「……おやすみ」
俺の体温が移ったのか、さっきよりは温かくなった彼の背中をもう一度抱き締めて、俺もそっと目を閉じた。

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