Richromatic
なんとなく付けていたテレビには、世界の不思議な現象や怪事件などを取り上げるバラエティ番組が流れていた。
こういった都市伝説的な番組は、俺が小さい頃から定期的に見かけるから今でも人気コンテンツなのだろう。
「……僕さ、小さい頃、神隠しにあったんだよね」
一緒にソファに掛けていた彼が、ぽつりとそう言った。
「え?」
彼とは、俺が六歳の頃からの付き合い。彼は一つ歳下だけど、そんな話は初耳だ。もっと小さい頃の話なのか?
「え、幾つの時?」
「5歳くらいじゃないかな?……兄さん達の学校が夏休みだった時に、ひいおばあちゃんの家に遊びに行ったんだよね。山とか川とかある田舎。それで、兄さん達と山に虫捕りに行ったの。
でも、兄さん達は意地悪だから、さっさと先に行っちゃうんだよね。僕、追いつくのに必死で全然虫捕れなくて」
ぼーっとテレビを見つめながら、彼はそう淡々と話している。
彼の実家はそんなではないはずだけど、曾お婆さんともなると田舎の地主か何かなのだろう。
「そしたらね、カブトムシ見つけたんだよ。でも見つけた場所がね、山の中の小さい神社の鳥居でさ。カブトムシ捕まえて、近くにいたはずの兄さん達を呼んだらいないの。はぐれちゃったって泣きそうになってたらね、辺りから声がしたんだ……」
「え。ちょっと、もう怖いんだけど」
内容もさることながら、彼が淡々と話すのが余計に怖くてそう話を遮った。
「ふふふ。『可愛いねぇ、可愛いねぇ。可愛いおなごだねぇ』って聞こえたの。でも、僕は男の子だよって返したら『おなごだったら食べたかったねぇ』って言われて、それからなんかよく覚えてないんだけど、気づいたら、僕は山の入り口にいて、兄さん達は涙目だったし、もう家族とか近くの人が周りにいっぱいいたんだよね。僕、数時間、行方不明になってたんだって」
「あぁぁ、良かったぁぁ……」
彼の話が終わると、妙に安心してしまい、横に座っている彼を思わず抱き締めてしまった
「そのまま何かに連れて行かれたら、食べられちゃってたし、俺も君に出会えなかった……。良かったぁ戻ってきて。君のいない世界なんてもう想像つかない」
「えっ、あ……」
彼が腕の中で居心地悪そうにモゾモゾと動く。
抱きしめる腕を緩めて彼の顔を見ると、何故か頬を赤らめて、視線があちこちに彷徨っている。
「どうしたの?」
「ぅ……ごめん……。怖がりなの知ってて、揶揄ってやろうって……。今の……作り話……」
何だって?
「えー⁉︎ひどい!今、本気で神隠しに遭わなくてよかったって思ったのにぃ!」
「だからっ、そんな風に真面目に返されちゃって僕の方が恥ずかしいっていうか……あぁ、もう。こんな嘘つくんじゃなかった。けしかけたのに返り討ちじゃないか……」
そう言って、彼は力が抜けたように俺の胸に顔を埋めた。
彼の話し方が上手かったせいか、俺はこれっぽっちも作り話しだとは思わなかったけど……。
「可愛いなぁ。食べちゃいたいねぇ」
彼の話に出てきた『何か』の真似をして、なかなか顔を上げてくれない彼の頭をそっと撫でた。
こういった都市伝説的な番組は、俺が小さい頃から定期的に見かけるから今でも人気コンテンツなのだろう。
「……僕さ、小さい頃、神隠しにあったんだよね」
一緒にソファに掛けていた彼が、ぽつりとそう言った。
「え?」
彼とは、俺が六歳の頃からの付き合い。彼は一つ歳下だけど、そんな話は初耳だ。もっと小さい頃の話なのか?
「え、幾つの時?」
「5歳くらいじゃないかな?……兄さん達の学校が夏休みだった時に、ひいおばあちゃんの家に遊びに行ったんだよね。山とか川とかある田舎。それで、兄さん達と山に虫捕りに行ったの。
でも、兄さん達は意地悪だから、さっさと先に行っちゃうんだよね。僕、追いつくのに必死で全然虫捕れなくて」
ぼーっとテレビを見つめながら、彼はそう淡々と話している。
彼の実家はそんなではないはずだけど、曾お婆さんともなると田舎の地主か何かなのだろう。
「そしたらね、カブトムシ見つけたんだよ。でも見つけた場所がね、山の中の小さい神社の鳥居でさ。カブトムシ捕まえて、近くにいたはずの兄さん達を呼んだらいないの。はぐれちゃったって泣きそうになってたらね、辺りから声がしたんだ……」
「え。ちょっと、もう怖いんだけど」
内容もさることながら、彼が淡々と話すのが余計に怖くてそう話を遮った。
「ふふふ。『可愛いねぇ、可愛いねぇ。可愛いおなごだねぇ』って聞こえたの。でも、僕は男の子だよって返したら『おなごだったら食べたかったねぇ』って言われて、それからなんかよく覚えてないんだけど、気づいたら、僕は山の入り口にいて、兄さん達は涙目だったし、もう家族とか近くの人が周りにいっぱいいたんだよね。僕、数時間、行方不明になってたんだって」
「あぁぁ、良かったぁぁ……」
彼の話が終わると、妙に安心してしまい、横に座っている彼を思わず抱き締めてしまった
「そのまま何かに連れて行かれたら、食べられちゃってたし、俺も君に出会えなかった……。良かったぁ戻ってきて。君のいない世界なんてもう想像つかない」
「えっ、あ……」
彼が腕の中で居心地悪そうにモゾモゾと動く。
抱きしめる腕を緩めて彼の顔を見ると、何故か頬を赤らめて、視線があちこちに彷徨っている。
「どうしたの?」
「ぅ……ごめん……。怖がりなの知ってて、揶揄ってやろうって……。今の……作り話……」
何だって?
「えー⁉︎ひどい!今、本気で神隠しに遭わなくてよかったって思ったのにぃ!」
「だからっ、そんな風に真面目に返されちゃって僕の方が恥ずかしいっていうか……あぁ、もう。こんな嘘つくんじゃなかった。けしかけたのに返り討ちじゃないか……」
そう言って、彼は力が抜けたように俺の胸に顔を埋めた。
彼の話し方が上手かったせいか、俺はこれっぽっちも作り話しだとは思わなかったけど……。
「可愛いなぁ。食べちゃいたいねぇ」
彼の話に出てきた『何か』の真似をして、なかなか顔を上げてくれない彼の頭をそっと撫でた。