Richromatic
今日も帰りが遅くなってしまった。
最近、残業が多くてすごく疲れてる。時期的に仕方がないとはいえ、忙しすぎて彼にも会えてない。明日はやっと休みだし、そろそろ会いたい。
鍵は貰ったけれど、まだ勝手に使う勇気はないから彼に連絡を入れると、来ていいよとすぐに返事が貰えた。
はやる気持ちを抑えられず、足早に彼の家へ向かった。
彼の家に着いてから、シャワーを借りた。その後、支度を済ませて部屋に戻ると、彼がソファで紙の束を片手にしていた。
さっきまで、普通に照明が付いていたのに、戻ってきたら間接照明のオレンジ色が部屋を包んでいた。
「薄暗いところで何読んでるの?」
「新薬の臨床の論文」
チラリと彼の手元を覗き込むと、英語がびっしりと詰まった論文だった。
僕からしたら、ただでさえ難しい内容なのにそれを英語で理解するのだからやっぱり彼は秀才なのだと改めて思う。
「もっと明るくして読めばいいのに」
「蛍光灯だとなんか目が疲れるんだよね。暗いの嫌?」
「別に……」
そう言って、自分のバッグから資料の束を取り出して彼の隣に座った。
「あれ、持ち帰り仕事?珍しいね」
「展示の準備が忙しすぎて……。どうせすぐ寝ないでしょ?ちょっとだけ」
そう言って、僕は彼の腕に寄りかかって資料を開いた。触れ合ったところから伝わる温度が、忙しくて逆立っていた気持ちを宥めてくれたような気がして、小さくため息をついた。
「温かい……眠いなら先に寝てもいいよ?」
「やだよ。ちゃんと構ってくれるまで寝ない」
そう返したら彼が笑う。
「じゃあ、どっちかが先に読み終わったら終わりにしようか」
「それじゃぁ頭に入らなくない?」
「そんなことないよ?」
「これだから秀才は。ずるい」
僕の言葉に彼は小さく笑って、また難しい論文に目線を戻していた。
たくさん話したいこともあったけれど、二人でこうしているだけでも良いなって気づいたから、今はこの静かで穏やかな夜を楽しもうと、彼の体温を感じながらそう思った……。
最近、残業が多くてすごく疲れてる。時期的に仕方がないとはいえ、忙しすぎて彼にも会えてない。明日はやっと休みだし、そろそろ会いたい。
鍵は貰ったけれど、まだ勝手に使う勇気はないから彼に連絡を入れると、来ていいよとすぐに返事が貰えた。
はやる気持ちを抑えられず、足早に彼の家へ向かった。
彼の家に着いてから、シャワーを借りた。その後、支度を済ませて部屋に戻ると、彼がソファで紙の束を片手にしていた。
さっきまで、普通に照明が付いていたのに、戻ってきたら間接照明のオレンジ色が部屋を包んでいた。
「薄暗いところで何読んでるの?」
「新薬の臨床の論文」
チラリと彼の手元を覗き込むと、英語がびっしりと詰まった論文だった。
僕からしたら、ただでさえ難しい内容なのにそれを英語で理解するのだからやっぱり彼は秀才なのだと改めて思う。
「もっと明るくして読めばいいのに」
「蛍光灯だとなんか目が疲れるんだよね。暗いの嫌?」
「別に……」
そう言って、自分のバッグから資料の束を取り出して彼の隣に座った。
「あれ、持ち帰り仕事?珍しいね」
「展示の準備が忙しすぎて……。どうせすぐ寝ないでしょ?ちょっとだけ」
そう言って、僕は彼の腕に寄りかかって資料を開いた。触れ合ったところから伝わる温度が、忙しくて逆立っていた気持ちを宥めてくれたような気がして、小さくため息をついた。
「温かい……眠いなら先に寝てもいいよ?」
「やだよ。ちゃんと構ってくれるまで寝ない」
そう返したら彼が笑う。
「じゃあ、どっちかが先に読み終わったら終わりにしようか」
「それじゃぁ頭に入らなくない?」
「そんなことないよ?」
「これだから秀才は。ずるい」
僕の言葉に彼は小さく笑って、また難しい論文に目線を戻していた。
たくさん話したいこともあったけれど、二人でこうしているだけでも良いなって気づいたから、今はこの静かで穏やかな夜を楽しもうと、彼の体温を感じながらそう思った……。