Richromatic
彼と買い物をした帰り道、散歩がてらにいつもと違うルートを通ると、大きな公園があった。
一角には遊具があったが、ほとんどは何もない広場だった。あちこちに木も植えられていて意外と自然が多い場所だった。
「……綺麗だね」
彼が歩きながら、そう言った先にはピンク色の花。他の葉や草は枯れて茶色になっている中、その花のピンク色と葉の深い緑色が鮮やかに見えた。
「椿かな?」
「んー、近くで見ないと分からない」
俺の問いに彼はそのピンク色の花に近づくと、そっと花びらに触れる。
「あ……」
彼が触れた花は、ほろほろと花びらを散らしていく……。静かに地面に舞い降りていった様子が、儚くて綺麗だなと思っていた。
「あぁ、可哀想なことしちゃった」
「でも、なんか綺麗だった……。色が綺麗だからかな?」
「そっか。これは山茶花だね。花びらが散っていくから」
「あぁ、そういえば。椿は花ごと落ちるんだよね」
「そうそう」
彼は『母さんの影響だよ』と言っていたが、花は詳しい。こうやって、外を歩いていると時々教えてくれる。
花の名前が分かったところで、再び歩き出した。
「山茶花も花言葉あるの?」
俺がそう聞くと、彼は考えるような仕草を見せたが、すぐにスマホを取り出した。
「あると思うけど、知らないから調べる」
「あはは……ごめんね、調べさせちゃって」
「あった!……」
「どうしたの?」
見つけたのに、すぐに口にしない彼。
どうしたのかと思っていると、恥ずかしそうにこっちを向いた。
「色によって花言葉が違うんだけど……。さっきのはピンクだったから……永遠の愛」
そう言って彼はそっぽを向いてしまった。その様子が可愛くて思わず笑ってしまう。
「そっかー。良いところに咲いてたなぁ。聞いてみて良かった」
「もう、揶揄わないでよ……」
むくれてそう言った彼だったが、すぐに笑った。
「触っただけで散っちゃうくらい儚いのに、花言葉は永遠の愛なんだね……」
「だからこそ、綺麗なんだよ。花はなくなっても、込められた想いや言葉は消えないから」
さらりと紡がれた彼の言葉に、胸が音を立てた。
「……そういう考え方、素敵だね」
「ふふふ。ありがとう。僕、寒くなってきちゃった。早く帰ろう」
照れ隠しだろうか、彼はそう言って笑うと先に歩き出した。
たまたま見つけた花に込められた言葉に倣って、彼とこんな風にずっと過ごせたら……と、彼の背中を見ながら思っていた。
一角には遊具があったが、ほとんどは何もない広場だった。あちこちに木も植えられていて意外と自然が多い場所だった。
「……綺麗だね」
彼が歩きながら、そう言った先にはピンク色の花。他の葉や草は枯れて茶色になっている中、その花のピンク色と葉の深い緑色が鮮やかに見えた。
「椿かな?」
「んー、近くで見ないと分からない」
俺の問いに彼はそのピンク色の花に近づくと、そっと花びらに触れる。
「あ……」
彼が触れた花は、ほろほろと花びらを散らしていく……。静かに地面に舞い降りていった様子が、儚くて綺麗だなと思っていた。
「あぁ、可哀想なことしちゃった」
「でも、なんか綺麗だった……。色が綺麗だからかな?」
「そっか。これは山茶花だね。花びらが散っていくから」
「あぁ、そういえば。椿は花ごと落ちるんだよね」
「そうそう」
彼は『母さんの影響だよ』と言っていたが、花は詳しい。こうやって、外を歩いていると時々教えてくれる。
花の名前が分かったところで、再び歩き出した。
「山茶花も花言葉あるの?」
俺がそう聞くと、彼は考えるような仕草を見せたが、すぐにスマホを取り出した。
「あると思うけど、知らないから調べる」
「あはは……ごめんね、調べさせちゃって」
「あった!……」
「どうしたの?」
見つけたのに、すぐに口にしない彼。
どうしたのかと思っていると、恥ずかしそうにこっちを向いた。
「色によって花言葉が違うんだけど……。さっきのはピンクだったから……永遠の愛」
そう言って彼はそっぽを向いてしまった。その様子が可愛くて思わず笑ってしまう。
「そっかー。良いところに咲いてたなぁ。聞いてみて良かった」
「もう、揶揄わないでよ……」
むくれてそう言った彼だったが、すぐに笑った。
「触っただけで散っちゃうくらい儚いのに、花言葉は永遠の愛なんだね……」
「だからこそ、綺麗なんだよ。花はなくなっても、込められた想いや言葉は消えないから」
さらりと紡がれた彼の言葉に、胸が音を立てた。
「……そういう考え方、素敵だね」
「ふふふ。ありがとう。僕、寒くなってきちゃった。早く帰ろう」
照れ隠しだろうか、彼はそう言って笑うと先に歩き出した。
たまたま見つけた花に込められた言葉に倣って、彼とこんな風にずっと過ごせたら……と、彼の背中を見ながら思っていた。