Richromatic
「ねぇねぇ、レシピって何語?」
家に遊びに来ていた親友が、料理をする俺の横で突然そう言った。
「あー……『レシピ』自体は英語」
「へぇ。英語なんだ。フランス語だと思ってた」
そう言って、彼は片手に持っていたビールの缶に口をつけた。
「あぁ、元々はラテン語の recipio 。受け取るって意味の言葉だって。それが、命令形の recipe に変わって、医師が薬剤師に向けて書いた処方箋のことを差したんだけど、そのうち料理の材料とか手順を書いたもののことを言うようになったんだって」
「へぇ。さっすが。何でそんなこと知ってるの?」
「あぁ、カルテに薬の処方を書くときにRp.って書くんだけど、それがレキペの名残なんだって。まぁ、俺はカルテ書く側じゃなくて、作れって言われる側だけど」
「やだー。超頭良いー。惚れそう」
親友が巫山戯てそう言うけれど、これは『彼』がいない時限定。彼がいたら、多分、今頃噛みつかれている。
「はいはい、彼がいる時はやめてね」
「分かってるよー。あの子まだかな?」
「そろそろだと思うよ」
そう言って、パラパラと仕上げのディルを皿に盛った。それと同時に、玄関の鍵が開く音がする。
あ、丁度良いタイミングだった。
「あっ、おかえりー!」
親友が、玄関まで出迎えに行くと、彼が戸惑った様子で『ただいま』と言ったのが聞こえた。
「お疲れ様。すぐ夕飯にできるよ」
「ありがとう」
彼がニコリと笑ってそう言った後、俺の手元を見てすぐに目を丸くした。
「あ……ねぇ、どうして僕の食べたいもの分かったの?」
「え?サーモン食べたかったの?」
「あ、うん。魚食べたいなーってなんとなく思ってた」
親友は、俺が彼の食べたいものを当てたことに驚いて『テレパシー!』と何故か嬉しそうに騒いでいて、それを横で聞いてる彼は苦笑いしていた。
テレパシーなんか使ってないよ。
彼の心を掴んでおくレシピの一つ目。
『彼の言った小さな事も頭に留めておくこと』
そして、今日の前菜はサーモンのカルパッチョ。
前に彼と買い物行った時に『食べたいなー』って呟いていたのを覚えてただけなんだけどね。
今、彼が嬉しそうな顔をしているし、親友もなんだか楽しそうなので良しとしよう。
家に遊びに来ていた親友が、料理をする俺の横で突然そう言った。
「あー……『レシピ』自体は英語」
「へぇ。英語なんだ。フランス語だと思ってた」
そう言って、彼は片手に持っていたビールの缶に口をつけた。
「あぁ、元々はラテン語の
「へぇ。さっすが。何でそんなこと知ってるの?」
「あぁ、カルテに薬の処方を書くときにRp.って書くんだけど、それがレキペの名残なんだって。まぁ、俺はカルテ書く側じゃなくて、作れって言われる側だけど」
「やだー。超頭良いー。惚れそう」
親友が巫山戯てそう言うけれど、これは『彼』がいない時限定。彼がいたら、多分、今頃噛みつかれている。
「はいはい、彼がいる時はやめてね」
「分かってるよー。あの子まだかな?」
「そろそろだと思うよ」
そう言って、パラパラと仕上げのディルを皿に盛った。それと同時に、玄関の鍵が開く音がする。
あ、丁度良いタイミングだった。
「あっ、おかえりー!」
親友が、玄関まで出迎えに行くと、彼が戸惑った様子で『ただいま』と言ったのが聞こえた。
「お疲れ様。すぐ夕飯にできるよ」
「ありがとう」
彼がニコリと笑ってそう言った後、俺の手元を見てすぐに目を丸くした。
「あ……ねぇ、どうして僕の食べたいもの分かったの?」
「え?サーモン食べたかったの?」
「あ、うん。魚食べたいなーってなんとなく思ってた」
親友は、俺が彼の食べたいものを当てたことに驚いて『テレパシー!』と何故か嬉しそうに騒いでいて、それを横で聞いてる彼は苦笑いしていた。
テレパシーなんか使ってないよ。
彼の心を掴んでおくレシピの一つ目。
『彼の言った小さな事も頭に留めておくこと』
そして、今日の前菜はサーモンのカルパッチョ。
前に彼と買い物行った時に『食べたいなー』って呟いていたのを覚えてただけなんだけどね。
今、彼が嬉しそうな顔をしているし、親友もなんだか楽しそうなので良しとしよう。