Richromatic
あぁ、もう。ほんっと予定外。
自分の仕事を終わらせずに長期休暇に入った奴のせいで、予定が全部狂った。
せっかく休みの前の日だというのに、なんで僕が仕事をしなかった奴の尻拭いをさせられてるんだ。もう、何時間この資料室に缶詰にされてるんだろう……。太陽を見ていないどころか、このままじゃ終電すら逃してしまいそうだ……。
絶対にアイツは次の展示会は外す。僕が干してやる。今日の恨みは絶対忘れないからな……。
今日は仕事終わりで彼と夕飯に行って、そのまま彼の家に行くつもりだったのに……。
溜息をつきながら展示のレイアウト案を作っていると、テーブルに置いていたスマホが震えた。
『まだ仕事してる? 電車間に合う?』
彼からのメッセージに、少し嬉しくなりつつも、終わらない仕事に溜息を吐く。
『もうすこし。レイアウト案出したら取り敢えず終わる。電車は分からない。ごめんね。今日は会えないかも』
そう、返事をして作業を再開した。
自分から『会えないかも』なんて言いたくなかったけれど、遅くまで彼を待たせてしまうのも悪いと思ったからそう言った。
こういう時こそ会いたいんだけどな……。
なんとか、仕事を終わらせて、引き継ぎをメモに残してやっと退勤した。
もう23時を回っていたが、電車は間に合う。
こんな時間に彼の家に行ってもなぁ……着く頃には日付変わりそうだし。明日の午前中に会いに行こうかな。
そんなことを考えながら、関係者出入り口から外に出ると、すっかり冷え切った冬の空気が肌を刺す。うぅ、寒い……。
「お疲れ様」
通りの方からそう聞こえて顔を上げると、彼がこちらに手を振って車の側に立っていた。
「えっ、なんでいるの? いつから待ってたの?」
慌てて彼に駆け寄ると、彼が不思議そうな顔をする。
「あれ、メッセージ見てないかな? 電車間に合わないと困るだろうから、迎えに行くよって。着いたのはついさっきだけど」
「え、あ……ごめん。集中してたから見てなかった」
言われてスマホの画面を見れば通知が出ていた。
仕事を終わらせたい一心だったから、しばらく見てもいなかった。
「そっか。でも、間に合うくらいで終わって良かった」
彼はニコニコしながらそう言った。
彼の顔を見たら、一気に張り詰めていた気持ちが緩んでしまって、彼の胸に顔を埋めるようにして抱きついた。
「このまま家に行ってもいいですか?」
そう言うと、彼がクスクスと笑って『もちろん』と返事をする。
「こんなことになった僕の愚痴も聞いてくれますか?」
「気の済むまでどうぞ」
「ちょっとお腹もすきました」
「それでは、何かお腹に優しいものをご用意しましょう」
「……大好き」
「ありがとう」
そうして、彼の車で一緒に帰る。
もう、こんな缶詰状態の残業は二度としたくないけれど、彼のおかげで今夜の苦労が報われた気がした……。
自分の仕事を終わらせずに長期休暇に入った奴のせいで、予定が全部狂った。
せっかく休みの前の日だというのに、なんで僕が仕事をしなかった奴の尻拭いをさせられてるんだ。もう、何時間この資料室に缶詰にされてるんだろう……。太陽を見ていないどころか、このままじゃ終電すら逃してしまいそうだ……。
絶対にアイツは次の展示会は外す。僕が干してやる。今日の恨みは絶対忘れないからな……。
今日は仕事終わりで彼と夕飯に行って、そのまま彼の家に行くつもりだったのに……。
溜息をつきながら展示のレイアウト案を作っていると、テーブルに置いていたスマホが震えた。
『まだ仕事してる? 電車間に合う?』
彼からのメッセージに、少し嬉しくなりつつも、終わらない仕事に溜息を吐く。
『もうすこし。レイアウト案出したら取り敢えず終わる。電車は分からない。ごめんね。今日は会えないかも』
そう、返事をして作業を再開した。
自分から『会えないかも』なんて言いたくなかったけれど、遅くまで彼を待たせてしまうのも悪いと思ったからそう言った。
こういう時こそ会いたいんだけどな……。
なんとか、仕事を終わらせて、引き継ぎをメモに残してやっと退勤した。
もう23時を回っていたが、電車は間に合う。
こんな時間に彼の家に行ってもなぁ……着く頃には日付変わりそうだし。明日の午前中に会いに行こうかな。
そんなことを考えながら、関係者出入り口から外に出ると、すっかり冷え切った冬の空気が肌を刺す。うぅ、寒い……。
「お疲れ様」
通りの方からそう聞こえて顔を上げると、彼がこちらに手を振って車の側に立っていた。
「えっ、なんでいるの? いつから待ってたの?」
慌てて彼に駆け寄ると、彼が不思議そうな顔をする。
「あれ、メッセージ見てないかな? 電車間に合わないと困るだろうから、迎えに行くよって。着いたのはついさっきだけど」
「え、あ……ごめん。集中してたから見てなかった」
言われてスマホの画面を見れば通知が出ていた。
仕事を終わらせたい一心だったから、しばらく見てもいなかった。
「そっか。でも、間に合うくらいで終わって良かった」
彼はニコニコしながらそう言った。
彼の顔を見たら、一気に張り詰めていた気持ちが緩んでしまって、彼の胸に顔を埋めるようにして抱きついた。
「このまま家に行ってもいいですか?」
そう言うと、彼がクスクスと笑って『もちろん』と返事をする。
「こんなことになった僕の愚痴も聞いてくれますか?」
「気の済むまでどうぞ」
「ちょっとお腹もすきました」
「それでは、何かお腹に優しいものをご用意しましょう」
「……大好き」
「ありがとう」
そうして、彼の車で一緒に帰る。
もう、こんな缶詰状態の残業は二度としたくないけれど、彼のおかげで今夜の苦労が報われた気がした……。