Richromatic

「たこパしよ!!」

昔から彼のこういう突拍子もないことを言うのは嫌いじゃない。
ただ、この時期に何故たこ焼きなのか聞いたら『この前は鍋やったから』と、返ってきた。なるほど。
どうやら、彼は俺のパートナーのことが気に入ったようで、遊ぶ時は『あの子も一緒に連れてきて』と必ず言われる。俺のパートナーも、彼のことは『アイツは信用してもいい』と言っているので、取り敢えずは意気投合はしたのだろう。

それで……この有様だ。
最初は、楽しくたこ焼きを作って(たこ焼き器は、言い出した彼が家から持ってきた)そのうち、闇鍋ならぬ闇たこ焼きを作っていたのだが、お酒の入り方もあり、散々騒いで二人とも寝てしまった。
「もぅ……」
二人とも寝ちゃったら、片付けるの俺じゃん?
俺の家だから仕方ないけどね、ちょっとは手伝ってほしいなぁ。
誰かな?日本酒持ち込んだの。多分、持ち込んだ本人が一番最初に寝てるよね。
「まぁ、仕方ないかぁ……」
ローテーブルに散らかった食器やグラスを集めてキッチンのシンクに置いてくる。
テーブルの上を片付けたら、ラグの上で伸びてる子と、ソファで寝てる子にタオルケットと毛布を掛けてあげた。

「先に片付けよ……」
そう独り言を呟いて、洗い物を始めた。
初めは最低限だった食器やグラスの数も、気がつけば随分と増えていた……。
三人で一緒に過ごすなんて、少し前までは想像したことなかったな。

ふと、静かになった部屋を見ると、不思議と寂しさを感じた。何かに似てる感覚……。
「あぁ、そっか。祭りの後か……」
楽しかった時間の後は、少し寂しさを感じる。
だから、またすぐ約束をするのかもしれない。

洗い物を切りの良いところで終わりにして、リビングで寝ている二人の肩を揺する。
「二人とも起きて。風邪ひくよ」
そう言うと、二人は何やらむにゃむにゃ言いながら薄目を開けて起きたようだった。
風邪をひくよ なんて言って二人を起こしたのは建前で、本当は、一人でいる静かな部屋が耐えられなかっただけかもしれない。


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