容赦なく吹き荒ぶ風と礫のように打ち付けてくる雨。辺りは真っ暗闇で殆ど何も見えない中、一人の男が森の中を歩いていた。
男は黒いローブを纏い、フードを目深に被っていた。
こんな酷い嵐の中、彼は小さな灯りを片手に、黙々と、しかし薄らと笑みを浮かべて歩いていた。その足取りは道に迷った様子はなく、何かを目指しているようだった。
強い風で森の木々は大きくしなり、木から花や葉が落ちていく。
男は、目的の場所に着いたのか、歩みを止めて上を見上げる。
一本の木の下で立ち止まった男は、白いラッパ状の大きな花にそっと触れた。
「やっぱり、君は綺麗だねぇ。香りも良いし……。君ならきっと……」
男がそう言った後、風が吠えるような音を立てて通り抜けた。
そして、男が触れた花から不自然な光が放たれる。
それを見た男は、ニヤニヤと不気味な笑みを浮かべてまた歩き出し、暗い闇の中に姿を消した……。