サイドストーリー
side:ゼツ
初めて、師匠以外の剣に対してここまで心動かされた。
村に残してきた弟達を養う為、オレが騎士団に入ったその日にその男は現れた。無愛想で誰をも見ていないような冷たい赤の瞳、さらりと襟足が靡くグレーの髪の毛、凛とした立ち振舞いに柔らかさはなく、どこか厳しそうな印象を持たせる男。騎士団の試験を難なく突破していく姿に目を惹かれた。
オレも、先日の頭を使う筆記はギリギリであったものの、本日の実技試験は余裕をもって突破でき、その男と共に入団が許可された。どの騎士団に所属になるかは実力や戦い方、団長からの推薦などで決められるようで、入ったばかりのオレ達は一度中央都市で纏めて面倒を見られる。たまに、色んな騎士団の団長達がオレ達を見に来て、適正などを判断していた。
まだ配属先が決まっていない新人のオレは、入団試験で目立っていた男に真っ先に駆け寄った。
「そこのおんし!」
「……」
声を掛けたら無視された。聞こえなかったんだろうかと目の前に立ち、少しばかりオレより身長の低い男を見下ろした。
「おんしじゃ、おんし」
「……何の用だ」
鋭い目付きで見上げられる、声も僅かに威圧的で驚いた。でも、不機嫌と言うよりは元から鋭い目付きで、低い声な気がする。
「オレはゼツ!さっきの試験一緒におったじゃろ」
「知らんな」
笑顔で話し掛けると冷たくあしらわれた。あれ、オレ実技試験は成績二位だったのに…。一位はいちいち下を見ないという事か、"いち"だけに、ハハハ。
「用が無いなら話し掛けるな。」
くだらない事を考えていたらハッキリと告げられる、無気力なのか人と話すのは面倒らしい。
「いや、さっきの試験でおんしの剣に見惚れてしまってのう、今までどんな訓練をしてきたんじゃ?」
質問を投げ掛ければ、男の眉が微かに動いて腕を組みはじめた。
「特別な事はしていない。日々鍛練、毎日時間が許す限り。…それだけだ」
「ほぉん…?我流か?」
「あぁ」
冷たそうに見えて会話はしてくれるようだ。まだ、多少面倒そうではあるが案外冷たい奴じゃないのかもしれない。
「ちなみにおんし、名は?オレはゼツ・トゥワルフ・レンカっちゅうんじゃ、まあ、ゼツって呼んでくれ、よろしくな!」
「……ベルザ・ディ・アーロだ。」
「…アーロ……アーロ家か?」
相手の名に流石に驚きを隠せなかった。アーロ家と言えば貴族の名前、しかも名の知れた貴族の名前だ。だと言うのに、ベルザと名乗った男は自慢げでもなく、まるで名に興味がないように頷いた。
「アーロ家だが次男だ、後を継ぐ必要も無ければ両親も誰も、俺の事は気にしていない。アーロ家と言えど、俺は好き勝手にやっている。」
「……なんか大変そうじゃの」
「そうでもない。」
「ほうか」
聞いている言葉だけで受け取ると、家族から気にされていないようで何と返せば良いかわからなくなったが、ベルザはあまり気にしてはいないようだった。
しかしながら家族と支えあって生きてきたオレからしたら、誰にも気にされず好き勝手出来すぎると言うのは…、好き勝手しても怒ってくれる人がいないというのは、悲しいことのように思える。思わずベルザの頭を撫でると、目を丸めて此方を見上げられた。
あ、初めて感情がよく見てとれたな。
「よしよし」
「……」
「良い子じゃ♪」
「……」
撫でていたら腕を掴まれて離された。
「何のつもりだ?」
直ぐに腕を離されて無表情に戻る。困惑すらも表情にあまり出ないのか、さっきの表情が嘘のようだ。
「なんとなぁく、話を聞いて撫でたくなっただけじゃ」
「撫でるなら俺以外の頭にしろ。」
「いや、おんしを撫でたくなったっちゅう話ぜよ」
「?」
理解出来ないのか小さく首を傾げられた。
え、今の話の流れで理解できんか…!?ここでオレが別の奴の頭を撫でに行ったら不審者が過ぎるじゃろ…!
「オレが家族の代わりに構い倒してやろうっちゅう事じゃ!」
「断る。」
即答で断られた。何だこの男、近寄りがたい雰囲気を出しておきながらめちゃくちゃ面白いじゃないか。素直で、純粋で、ハッキリしているだけで言葉にきっと悪気はないんだろう。
「何でじゃ、一人より二人の方が楽しいじゃろ!」
「お前の常識を押し付けるな。」
肩を組もうとしたら避けられた。さっき撫でたので警戒されたらしい。
「たまぁに人肌恋しくなったりせんのか?」
「ないな」
また即答。どうやらこの男は一人で生きていくのが気楽なタイプのようだ。
「まずは人の温もりを知ってから判断しんしゃい!知るまではオレが傍に居てやるきに」
「要らん、邪魔だ。」
めちゃくちゃハッキリしすぎてオレの心が壊れそうだ…。悪いやつでは無さそうなんだが、人を寄せ付けたり人と絡むのは苦手なのだろうか。しゅん、としていたら頭に何かが乗った気がする。顔を上げると、ベルザがオレの頭を撫でていた。
「……え」
「何だ?」
「え!!??おんし人を撫でたりしゆうがか!?」
「するが」
驚きで開いた口が塞がらない、目を丸めていたらベルザがふ、と笑った。……笑った!?
「間抜けな顔だな。」
「は!?いや、訳がわからん何で撫でてくれたんじゃ!?もしかしてオレがしゅんとしちょったからか!?慰めてくれたのか!?」
「喧しいな…もふもふしてそうな髪の毛だったから撫でただけだ」
「なんじゃその理由!?」
ワーキャー騒いでいると召集がかかる、何事もなかったように向かうベルザの手を掴んで口を開けた。
「また後で話さんか、おんしに興味が湧いた!」
「そうか、俺はわかなかったから断る」
「ええ!!??」
手を振り払われて召集に向かわれる、オレも急いで後を追った。
「そこは承諾してくれるところじゃろ~!!?」
情けなく上げた声が響く、これがオレとベルザの始まりであり、一方的に絡むようになった最初の一日である。
ーーーーEND
初めて、師匠以外の剣に対してここまで心動かされた。
村に残してきた弟達を養う為、オレが騎士団に入ったその日にその男は現れた。無愛想で誰をも見ていないような冷たい赤の瞳、さらりと襟足が靡くグレーの髪の毛、凛とした立ち振舞いに柔らかさはなく、どこか厳しそうな印象を持たせる男。騎士団の試験を難なく突破していく姿に目を惹かれた。
オレも、先日の頭を使う筆記はギリギリであったものの、本日の実技試験は余裕をもって突破でき、その男と共に入団が許可された。どの騎士団に所属になるかは実力や戦い方、団長からの推薦などで決められるようで、入ったばかりのオレ達は一度中央都市で纏めて面倒を見られる。たまに、色んな騎士団の団長達がオレ達を見に来て、適正などを判断していた。
まだ配属先が決まっていない新人のオレは、入団試験で目立っていた男に真っ先に駆け寄った。
「そこのおんし!」
「……」
声を掛けたら無視された。聞こえなかったんだろうかと目の前に立ち、少しばかりオレより身長の低い男を見下ろした。
「おんしじゃ、おんし」
「……何の用だ」
鋭い目付きで見上げられる、声も僅かに威圧的で驚いた。でも、不機嫌と言うよりは元から鋭い目付きで、低い声な気がする。
「オレはゼツ!さっきの試験一緒におったじゃろ」
「知らんな」
笑顔で話し掛けると冷たくあしらわれた。あれ、オレ実技試験は成績二位だったのに…。一位はいちいち下を見ないという事か、"いち"だけに、ハハハ。
「用が無いなら話し掛けるな。」
くだらない事を考えていたらハッキリと告げられる、無気力なのか人と話すのは面倒らしい。
「いや、さっきの試験でおんしの剣に見惚れてしまってのう、今までどんな訓練をしてきたんじゃ?」
質問を投げ掛ければ、男の眉が微かに動いて腕を組みはじめた。
「特別な事はしていない。日々鍛練、毎日時間が許す限り。…それだけだ」
「ほぉん…?我流か?」
「あぁ」
冷たそうに見えて会話はしてくれるようだ。まだ、多少面倒そうではあるが案外冷たい奴じゃないのかもしれない。
「ちなみにおんし、名は?オレはゼツ・トゥワルフ・レンカっちゅうんじゃ、まあ、ゼツって呼んでくれ、よろしくな!」
「……ベルザ・ディ・アーロだ。」
「…アーロ……アーロ家か?」
相手の名に流石に驚きを隠せなかった。アーロ家と言えば貴族の名前、しかも名の知れた貴族の名前だ。だと言うのに、ベルザと名乗った男は自慢げでもなく、まるで名に興味がないように頷いた。
「アーロ家だが次男だ、後を継ぐ必要も無ければ両親も誰も、俺の事は気にしていない。アーロ家と言えど、俺は好き勝手にやっている。」
「……なんか大変そうじゃの」
「そうでもない。」
「ほうか」
聞いている言葉だけで受け取ると、家族から気にされていないようで何と返せば良いかわからなくなったが、ベルザはあまり気にしてはいないようだった。
しかしながら家族と支えあって生きてきたオレからしたら、誰にも気にされず好き勝手出来すぎると言うのは…、好き勝手しても怒ってくれる人がいないというのは、悲しいことのように思える。思わずベルザの頭を撫でると、目を丸めて此方を見上げられた。
あ、初めて感情がよく見てとれたな。
「よしよし」
「……」
「良い子じゃ♪」
「……」
撫でていたら腕を掴まれて離された。
「何のつもりだ?」
直ぐに腕を離されて無表情に戻る。困惑すらも表情にあまり出ないのか、さっきの表情が嘘のようだ。
「なんとなぁく、話を聞いて撫でたくなっただけじゃ」
「撫でるなら俺以外の頭にしろ。」
「いや、おんしを撫でたくなったっちゅう話ぜよ」
「?」
理解出来ないのか小さく首を傾げられた。
え、今の話の流れで理解できんか…!?ここでオレが別の奴の頭を撫でに行ったら不審者が過ぎるじゃろ…!
「オレが家族の代わりに構い倒してやろうっちゅう事じゃ!」
「断る。」
即答で断られた。何だこの男、近寄りがたい雰囲気を出しておきながらめちゃくちゃ面白いじゃないか。素直で、純粋で、ハッキリしているだけで言葉にきっと悪気はないんだろう。
「何でじゃ、一人より二人の方が楽しいじゃろ!」
「お前の常識を押し付けるな。」
肩を組もうとしたら避けられた。さっき撫でたので警戒されたらしい。
「たまぁに人肌恋しくなったりせんのか?」
「ないな」
また即答。どうやらこの男は一人で生きていくのが気楽なタイプのようだ。
「まずは人の温もりを知ってから判断しんしゃい!知るまではオレが傍に居てやるきに」
「要らん、邪魔だ。」
めちゃくちゃハッキリしすぎてオレの心が壊れそうだ…。悪いやつでは無さそうなんだが、人を寄せ付けたり人と絡むのは苦手なのだろうか。しゅん、としていたら頭に何かが乗った気がする。顔を上げると、ベルザがオレの頭を撫でていた。
「……え」
「何だ?」
「え!!??おんし人を撫でたりしゆうがか!?」
「するが」
驚きで開いた口が塞がらない、目を丸めていたらベルザがふ、と笑った。……笑った!?
「間抜けな顔だな。」
「は!?いや、訳がわからん何で撫でてくれたんじゃ!?もしかしてオレがしゅんとしちょったからか!?慰めてくれたのか!?」
「喧しいな…もふもふしてそうな髪の毛だったから撫でただけだ」
「なんじゃその理由!?」
ワーキャー騒いでいると召集がかかる、何事もなかったように向かうベルザの手を掴んで口を開けた。
「また後で話さんか、おんしに興味が湧いた!」
「そうか、俺はわかなかったから断る」
「ええ!!??」
手を振り払われて召集に向かわれる、オレも急いで後を追った。
「そこは承諾してくれるところじゃろ~!!?」
情けなく上げた声が響く、これがオレとベルザの始まりであり、一方的に絡むようになった最初の一日である。
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