ゼルダ40周年
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
〓始まりの選択
初めて出会ったあの日をキミは覚えていますか?
共に旅立ち、大きな一歩を踏み出したあの日を私は覚えています。
人と人の繋がりが広がっていき、初めて訪れた場所で苦悩し、勇気を出して前に進んだあの瞬間。あなたはもう覚えていないのでしょうか。
あなたと冒険したあの一瞬一瞬を今も鮮明に覚えています。
「……その言葉が本当なら会いに来て」
そう苦しげに溢した彼の姿を私は知っている。
あの子は……彼は……。私の大事な…………──。
―*―*―*―*―*―
高い音を鳴らし続けるアラームを止めて体を起こす。
朝御飯の準備をして支度を済ませ、仕事に向かわねばならない。
トーストを口に入れながら思い出すのは夢の内容。
夢とは不思議なものだ。起きた瞬間は鮮明に覚えていたものの、もう既に夢の記憶は朧げになっている。
視界の端には数年前に買ってそのまま放置されているゲーム機。テレビ台の下の収納には過去に発売されたハードとソフトも幾つか収納されている。
埃が被らないよう掃除はしているが、最後に起動したのはいつだったか……。
「そういえば忙しくなって遊んでる暇無くなったんだよね……」
独り言は虚しく部屋に響いて消える。
平日は仕事、帰っても家事、休日は仕事の疲れをとるためにしっかり休むようにしている。
昔は深夜までゲームをしていたことがあったものの、今はもうそんな体力はない。
「ごめん……」
置いたままであった緑の服を着た青年が描かれたパッケージを手に取る。当時、話題になった作品だからという理由で手に取ったソフト。
しつこく勧めてくる友人に会う度に「あとで遊ぶ」「そのうち遊ぶ」「いつか遊ぶ」と、言い続けたものの遊ぶことはなかった。
──今日の仕事が終わったら連休に入る。
久しぶりに遊んでみようかな。
――――――――
―――――
――…
「やっと終わった……」
ヘトヘトになりながら帰宅する。
重い足を引き摺るように進み、見えた部屋の中に少し違和感を覚えた。
「いつでも、どうぞ」とでも言うかのように準備万端な状態のゲーム機。……可笑しい。私は置きっぱなしにしたままだったはずだ。
風呂と着替えを済ませてからゲーム機の前に座る。
何処からどう見ても見た目は普通。
ただ、可笑しいのは放置したままだった状態のゲーム機が準備されていたことくらい。
私は訝しげにゲーム機を見つめた。
……見つめていても何かが起こるわけじゃない。
私は「取り敢えず、何か遊ぶか」と思い、ゲームソフトを手に取ろうとした──しかし、いつも置いてある場所にゲームソフトが1本も見当たらない。
その不可解な現象に空き巣でも入ったのかと思ったが、本体の方が価値があるはずなのに手付かずにしておくだろうか?
ソフトが無いなら遊べない。
ダウンロード版は購入していない。私はケースも好きなので、インターネット販売は追加ダウンロードコンテンツで利用するくらいだった。
疲弊した体では今から買いに行く余裕はない。
奇跡的に本体にソフトが入ったままになっていないだろうか?そう思い、私は本体のソフトを入れる場所を確認してみた。
……中には見覚えのないソフトが入っていた。
全体的に真っ白で、タイトルの表記も無い。ウイルスや改造データが入っていたら怖いと思いつつ、ブラウザで調べてみても情報が何一つ出てこない。
「自分の目で確かめてみるしかないか……」
私は意を決してゲーム機本体の電源ボタンを押す。
…………何も起こらない?
そう油断した瞬間、画面が激しく点滅する。
ポリゴンショックのような状態になり、私は机に突っ伏すると意識が段々と朦朧になっていった。
***
「……─。……──……。……アオイ。…………アオイ、起きてください」
透き通るような女性の優しい声が耳に入る。
聞いたことのない声の持ち主が私の名前を呼んでいる。「一体誰だろう」と思っても、体が重くて起き上がる気にならない。
何かが肩を揺さぶる。それに申し訳なさを覚えた私は、少しずつ瞼を開けた。
視界に入ったのは一面──白。
何もない真っ白な空間が見えた。私の傍らには声の主であろう綺麗な女性の姿があった。
「……っう。こ、此処は……?」
何とか体を起こす私に、その美しい女性が声を掛けてきた。
「おはようございます、アオイ。此処は世界の狭間。貴女はどうやら……巻き込まれてしまったようです」
睫毛を伏せる女性。
「あの……貴女は?」
私の言葉に困ったように眉を寄せる女性。
「すみません。まだ名乗っていませんでしたね。私は白き女神ハイリア。……この名だけで貴女には伝わるでしょう?」
思わず見惚れてしまいそうな微笑みを浮かべる女性──女神ハイリア。
私はその名前を知っている。
「っ……ゼ、ルダの……ハイ、ラルの、女神、様?」
絞り出すように言葉を口に出す。
私の言葉に女神ハイリアは微笑みながら頷いた。
創作物でしかなかった、生きる次元の違う人物が今目の前にいる。その状況に私の頭は混乱していた。
頭の片隅で「きっと夢だ……」という思考も「夢ではありません」と、頭の中のことも見れてしまうのか、女神ハイリアに否定されてしまう。
私の手を取りながら女神ハイリアは「あまり長居はできません」と、口にする。
「混乱してる中に……ごめんなさい。貴女にはこれからこの中の世界に行っていただきたいのです。但し、選べるのは一つだけ。そして、選んだ世界の勇者に会ってきてください。どうやら彼の想いが貴女をこの世界に呼んでしまったようなのです……」
悲しげに話す女神ハイリア。
私は一度、深く呼吸をしてから口を開いた。
「その、勇者に会ってくればいいのですか?」
私の言葉に、申し訳なさそうにする女神ハイリア。
「はい。彼が満足したら貴女も元の世界へと帰れるでしょう。ただ……」
「ただ……?」
引っ掛かった女神ハイリアの言葉を繰り返す私。
「……いえ。危険なことはないはずです。……お願いできますか?」
「まだ頭の整理が出来たわけじゃないけど……会って話すくらいなら、まぁ……」
煮え切らない私に、困った顔をする女神ハイリア。
彼女は私の背中側に回ると、目の前に見慣れた物体を並べた。
それは──ゲームのケース。
「どの世界にしますか? アオイ」
並べられたケースを一つ一つ眺める。
中にはまだ遊んだことのない世界もあったが、其々の作品に対しての思い出が蘇る。
思い入れのある作品というのはある。が、どれか一つだけなんて言われると、少し気持ちが揺らいでしまう。
暫く悩み続けた私は、並んである作品の一つに手を伸ばした。
「私はこの世界を選びます」
私の言葉に女神ハイリアは優しく微笑んだ。
1/1ページ