【勇者のキミと情報屋のワタシ】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
今日も今日とて情報を求めて旅をしている最中。
今は立ち寄ったリバーサイド馬宿で一旦休息を取ることにした。椅子に座り、お茶を口に含みながら辺りから聞こえてくる音を耳に入れる。
何処へ行っても大抵耳にする「ゼルダ様は素晴らしいお方だ」なんて話。
それはもう、聞き飽きる程に耳に入る。
国の姫といっても、100年前の時代の人だ。それなのに世界はアッサリと彼女を受け入れた。そして、厄災による被害者への供養、世界の復興活動に励む彼女を人々は賞賛した。
……正直、ついていけなかった。
確かに凄い人なんだろうけど。彼女が厄災を抑えていてくれたおかげで世界は比較的平和だったのだろうけど。
私は知っている。
世界が平和になることを決定付けたのは、"彼"が居たからであることを。
不思議と、彼の話を聞くことは少ない。
1度試したことがある。ゼルダ様のことを話している人に「リンクという名前の人物を知っているか?」と。
答えは残念なことにNOと返答する人が多かった。─まるで興味が無いかのように。
「少し前に天変地異があっただろ?」
「嗚呼、あれからゼルダ様が行方不明だって聞いたな」
「一緒に居たお付きの者も行方不明だってな」
「はぁ…ったく。何やってんだよ、そいつ。俺だったら身を挺してお護りするのにな!ガハハ!」
「ハハッ!よく言うよ、お前。この前そこら辺にいる魔物にもビビってた癖によ!」
……もう少し足を休めたかったが、もう出発することにしよう。
あの天変地異以降、ゼルダ様とリンクは行方不明らしい。世界も以前にも増して物騒になっている。
変な大穴が空き、空には島が浮かんでいる有様だ。あの美しかったハイラルはもう……ない。
「……リンク」
また無茶をしていないだろうか。
数年前、会う度に何処かしら怪我をしていてボロボロだったリンク。
大きな怪我してないと良いけど……。
「呼んだ?」
「えっ……」
俯いていた顔を持ち上げた先には今思っていた人物。
下ろした長い金髪。空のように澄んだ瞳。少し目のやり場に困るいつもと違う過去から来た人のような服装。
「リンク……!!?」
「うん。久しぶりだね。アオイ」
「えっ……何で??いや、それより……っ。…ふぅ。……ごめん。落ち着いた。それで、聞きたいことは山程あるけど何か私に用があったんだよね?」
「流石。冷静になるのが早いね。……まず、俺と姫様がハイラル城の地下から溢れだしている瘴気の調査に行った事は知ってるよね?」
「勿論。"あの"お姫様の事だよ。『体調を崩す我々の為になんてお優しい方なんだ!』って話も聞いたし、ゼルダ様の行方がわからなくなった後は『我々の所為でゼルダ様が行方知れずとなった』って騒いでる人も見たよ。まぁ、一部地方ではそのゼルダ様の姿を見た人もいるみたいだけど」
私の話を聞き、悩むように考え込むリンク。
どうやら、『ゼルダ様を見た』という話が突っ掛かるみたいだ。
「姫様が目の前で消えたのを見た。それに……」
「……リンク。気になるなら考えるよりも足を動かした方が早いよ。情報っていうのは自分の目で確かめないと嘘か本当か、なんてわからないんだから」
「アオイ。……そうだね。それと、俺の身にあった事なんだけど」
リンクから一通り説明してもらう。
地下に行き、そこであった事。その後空の島まで連れられて、命を助けられた事。今右腕に付いているのは、そのリンクを救ってくれた人物のものらしい。
見せてもらった右腕は少し人とは違う形状をしていた。
「そこでアオイにお願いがあるんだけど」
「ん?私の情報が君の役に立つ時が来たって感じかな」
「うん。各地方の調査に行きたいんだけど、その前に家が欲しいんだ」
「家?…………嗚呼、前に買ったって言っていたハテノ村の家はゼルダ様に譲ったんだったっけ?あれ?でも……まさか、同居…とか?」
「違う。俺は宿屋に泊まったり、野宿も慣れていたから……。ちゃんと遣り繰りしてたよ」
「でも、ハテノ村は故郷だったんでしょ?譲って良かったの?」
少し前にリンクは吐露した事がある。
直接言葉にされることはないものの、自分に向けられた感情に困惑していること。
リンクは騎士として自分の責務を果たしているだけで、彼女の感情はリンクにとって荷が重かった。
そう、溢していたリンクは、神獣を解放する為に世界中を走り回っていた時と違い、怪我はなくなったものの少し窶れていたような気がした。
そしてリンクの言葉に甘えた結果か、将又、家を譲ってくれた事への御礼も含まれているのかゼルダ様はハテノ村に学校を設立した。
放置されたままのハイラル城やハイラル中央地区よりも十分平和に栄えていたハテノ村での復興活動を優先していたゼルダ様の優先順位に疑念を抱いたものだ。
故郷であるハテノ村もゼルダ様の色に染まっている。それでもリンクは大丈夫なのだろうか?
「……ハテノ村の家は拠点が欲しかったから。それに記憶は取り戻せても、あそこに想い出は残ってないよ」
そう口にはするものの、リンクの横顔は少し侘しさを含んでいたように見えた。
「……ならさ。もっともっと作ろうよ、想い出。空いた穴は埋まらなくても隠すことくらいは出来るだろうからさ」
「アオイ…………」
「おっと、新居をご所望だったよね!家と言ったらエノキダ工務店!アッカレにあるイチカラ村。……覚えてる?」
「大丈夫。ちゃんと覚えてるよ。……久しぶりだけど元気にしてるかな。エノキダさん」
「じゃあ、イチカラ村まで同行するよ。家買う資金が無いなら出してあげる」
「うっ、お金か……。でも、アオイがそこまでしてくれなくても自分で何とかするよ?」
「リンクが迷惑だと思ってもさせてよ。……また嫌な世の中になっちゃったけどさ。厄災の脅威を退けてくれた君の為に、私に出来る事はしてあげたいんだ」
「アオイ……。ありがとう」
少しだけ表情を柔らかくして笑うリンク。
そんなリンクの左手を両手で包む。
……うん。温かくて力強い手だ。
「"友人"として遠慮なく言ってね。リンク」
……暫しの沈黙。
リンクは先程と一変して、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
「それ……。やだ」
「え!?友達とすら思われてなかった……!?えっ、じゃあ、ただの仕事の関係……とか?」
「そうじゃなくて……っ!俺……アオイのこと、す……、す、好きっ!では、あ…るから……っ!」
「そ、そっか!あー、良かった。嫌われてなくて安心したよ」
ホッと、胸を撫で下ろす。
嫌われていたのならそれはそれで仕方のない事なのだけど、ある程度関係を築いた上で嫌われたら私でも傷付く。
そんな私の隣で、リンクが「何で気付かないかな。もう……」と呟いていたことに気付かなかった。
2/2ページ