【スカイウォードソード/短編】
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荷物を片手にロフトバードで空を駆け回る。
次の仕事は──リンク宛の荷物の配達。騎士学校に降り立てば、二階にいたホーネル先生に軽く挨拶をして、目的の場所であるリンクの部屋を目指す。
──コンッコンッ、と、部屋の扉をノックする。しかし、部屋の住人の気配がしない。幼馴染みであるリンクの行動は何パターンかに限られている。一つは同じく幼馴染みのゼルダと一緒にいること。これは空を飛んでいる時に女神像の方へ行くゼルダに挨拶をした時にリンクの姿がなかったことから否定できる。次に一人で出掛けている可能性、そして最後に昼寝をしている可能性が考えられる。
「あれ? アオイ。リンクに何か用事でもあったの?」
「セバスン! リンクに荷物を届けに来たんだけど何処にいるか知らない?」
「ボク、食堂の手伝いで廊下にいたけどリンクが出てきた姿は見てないからまだ部屋にいるんじゃないかな?」
「そっか。教えてくれてありがとう。あっ、セバスンの荷物があった時はバド達には知られないようにするから安心してね」
「ありがとう! その時はよろしくね」
バド達はリンクやセバスンなど気の弱い子達に意地悪をする。配達物の中身は何だとか、人の物を取るかもしれない可能性がある以上、気を配って配達しなければならない。
セバスンと別れて、改めてリンクの部屋の扉と向き合う。
外に出た様子がないなら部屋の主はこの中にいるはずだ。もう一度、今度は強めにノックをしたものの、やはり反応はない。
私はそっと扉のノブを回した。
「リンク……? 入るよ」
あっさりと開いた扉。
その部屋の中に入り、静かに扉を閉める。リンク宛の荷物は綺麗に整頓された机の上に置いた。
ベッドの方に視線を向けると、案の定大の字で寝ているリンクの姿があった。起こさないように足音を殺しながら近付いた。
「疲れてるのかな……?」
そっと、その頭を撫でる。
リンクは柔らかな髪質をしている。だから触り心地も柔らかい。
ゼルダにはリンクが居眠りをしているようなら起こしてと言われていた。授業もぼんやりしていることも少なくない。それ故にリンクは授業態度が悪いと言われがちだけど──そういう体質な可能性もある。だから起こしてもいいのかと躊躇してしまう。
そんな事を考えていると、不意に体を引き寄せられた。
「寝込みを襲うだなんて……大胆だね。アオイ」
目の前にはパッチリと目を開けたリンクが不敵な笑みを浮かべていた。冷静に今の状態を観察すると、私がリンクに馬乗りになっている。これじゃあ、私がリンクに襲いかかっている風に見えるじゃないか。
「お荷物のお届けですよ。リンクさん」
リンクはきょとんとした顔をすると、私の視線に合わせて机の方を見る。そこに置かれた荷物に「あっ、あれか……。配達ご苦労様。アオイ」といつもの調子の笑顔を向けた。──が、抱きしめるように私の体に置かれたリンクの手が離れる気配がない。
「……リンク。離してもらってもいいかな?」
「うーん、やだって言ったら?」
「今日の配達はこれで終わりだけど……この体勢は辛いかな」
リンクが「そっかー」と答えると、視界が一転する。
背中には柔らかい感触。目の前には天井を背景にしたリンクの姿があった。焦った方がいい状況の筈だが、頭は「ああ、逆転したなあ」なんて事を暢気に考えていた。
「お荷物の配達。アオイから僕宛にアオイの配達です」
「生ものは承っておりません」
冗談のような会話をしているというのに、リンクは首元に顔を埋める。リンクの髪が当たって擽ったい。
「アオイ……好き……」
「うん。知ってる」
「えっ。……い、いつから?」
「小さい頃から好き好き言ってたのに忘れたの?」
「うーん……無意識かも……」
顔を隠すように強く抱きしめてくるリンクに、今度は胸がこそばゆくなった。幼い頃とは違い、性別の差を感じる体格に何も感じないほど鈍感ではない。
「アオイも僕のこと好き?」
「……好きだって言ったらどうするの?」
「今すぐ食べる」
やっと顔を見せたリンク。その目は獲物を目の前にしたようにギラついていた。
「やめときなよ。隣の部屋に音ダダ漏れなんだからさ」
「セバスンはいないんでしょ。僕知ってるんだから」
リンクの言う通り、セバスンは外へ出かけていった。だから隣室には誰もいない。しかし、その情報は私が部屋に入る前から起きていないと知り得ないものだった。
「狸寝入りしてたの?」
「どうだろうね」
リンクの指が頬を撫でる。
その顔が近付いてくるのを感じ、咄嗟に目を閉じた。髪を撫でられ、額に感じる柔らかい感触。
「アオイ。好きだよ。大好き……」
柔らかく微笑むリンク。
「……こ、壊れものなので優しく取り扱ってください……」
「それってアオイも僕のこと好きってことでいいんだよね?」
小さく頷く。逃げるように目を逸らしながら「もう、好きにしてください!」と言うと、リンクは小さく笑った。
「そんなこと言ったら本当に好きにしちゃうからね」
そう微笑みを溢す君に口を塞がれた──。
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