【ゼルダ無双/短編】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
──今日も今日とて見せつけられている。
俺の幼馴染みで恋人のアオイは一言で説明するならば『いい子』だ。そんな人の良さに支えられてきた。みんなから好かれるのもわかる。だが──。
「ありがとう! アオイさん。大好きだよ!」
「ありがとう。私も子どもリンク君のこと好きだよ」
「それじゃあ、僕と結婚してくれる?」
「ごめんね。それはできないんだ」
仮面の勇者ははっきりとアオイに振られているのに、アオイに抱きついて「えー」と、不満気な声を漏らしている。
アオイ、そいつは子どもの皮を被った狼だ。ゼルダ様に少しは歴史を勉強するようにと渡された本には彼は七年の時を越えて世界を救った時の勇者。少年の姿をしているが中身は大人と変わらない。
「いい加減にしろよ。アオイは俺の恋人! お前にはやらない」
アオイの体を引き寄せて仮面の勇者から離す。
俺の腕の中では頬を赤く染めたアオイが不安気に見つめてくる。俺の恋人が可愛い。でも、今はそれどころではない。
「もしかして、その関係に安心してるの? 別に本気を出せば、愛人になるとか寝取るとか方法はいくらでもあると思うけど」
「ね……!? や、やめろよ! アオイは絶対渡さないからな!」
恋人──その関係になるまで俺がどれだけ苦労したと思ってるんだ。鈍感なアオイは『好き』なんて言葉だけでは気持ちが伝わらない。『異性として見てる』『男女の仲になりたい』『結婚を前提に付き合ってください』なんて気恥ずかしい言葉を並べてやっと実った想いだ。ポッと出の人間に渡してたまるか。
「この世界の勇者って独占欲強すぎじゃない? ……アオイさん。そっちのリンクに飽きたらいつでも
本気なのか今一つよくわからない子どものリンク。
子どものリンクが去っていくのを見届けていると、体にもぞもぞとした感覚が走る。俺の背中に腕を回したアオイが肩に顔を埋めていた。
「私の一番はいつだってリンクだけだからね」
顔は見えないものの、視界に入る赤く染まった耳。
嬉しくなって抱きしめる腕に力を込めると「苦しいよ、リンク」とくぐもった声が聞こえてくる。
ダメだ。今は絶対に離さない。
***
「アオイさん! これ、よかったらどうぞ!」
「ラヴィオ君。これ……貴重な物だよね? いいの?」
「いいんです! ボクには必要のないものですから……」
──次の日。
アオイの側には恥ずかし気にもじもじとした兎頭巾の姿が見えた。アオイとお茶会が出来ず、機嫌が悪そうなゼルダ様の話し相手から解放され、急いでアオイの所に来たというのに既に先客の姿があった。
ゼルダ様がシークの姿でアオイを口説きに来ることを阻止したかと思えば、まだまだ敵は少なくないようだ。
「でも、悪いよ……あっ、そうだ! 私に何かお礼させてくれないかな? 私に出来ることなら何でもするよ!」
「な、何でも⁉︎ そ、それなら……今度の休日に──」
「休日に……何だって?」
怯えたように振り返るラヴィオ。
アオイは暢気に「あっ、リンク。おかえりー」なんて笑顔を向ける。アオイに「ただいま」と笑顔を返しながらラヴィオの肩に手を置いた。
「それで? なんて言おうとしてたんだ?」
「いや、あの……ボクはこれで……!」
俺の手から逃げたラヴィオは途中で転びながらも姿を消した。
──とんっ、と、背中に小さな衝撃。アオイがふにゃっとした笑顔を浮かべながら抱きついていた。
「リンク、あまり怒らないであげて。ラヴィオ君はいい子だよ」
「悪い奴とは思ってないけど……あいつもアオイに好意寄せてるだろ」
「好意って言っても友達とかそういうのでしょ? そんなに気にしなくても大丈夫だって」
俺の気も知らないでアオイは笑う。
確かにアオイに向けられた好意は恋愛感情だけじゃないかもしれない。それでも、老若男女問わず人気者のアオイ。そんな恋人を独り占めにしたいって思う気持ちは悪いことなのだろうか。
「リンクは悪い子じゃないよ」
「ひとの心の中読まないでくれよ……」
「何年の付き合いだと思ってるの? リンクは気持ちが顔に出やすいんだからわかるよ」
「……そんなに出てた?」
「うん。芽がしなしなに萎れてる感じだった」
体に巻き付いたアオイの腕を一旦剥がし、振り返って抱きしめ返す。ふわりと香る甘すぎない匂いも心地良い。
「……アオイの一番を俺にくれ」
「んー、例えば……?」
「……その日最初に会う人とか」
「それは今のままでは難しいなあ……。じゃあ、一緒に寝よっか!」
「……それ、意味わかってて言ってるのか?」
体を少し離してアオイの顔を見ると、きょとんとした顔を向けていた。言葉を理解したようにその目を細めてアオイは微笑む。
「一番が欲しいって言ったのはリンクじゃん。あげるよ、リンクに──私の全部」
アオイが顔を近付けると、頬に感じる柔らかな感触。
アオイを愛おしく想う気持ちとは裏腹に、格好悪い自分に呆れていた。
「せめてプロポーズはバシッと決めさせてくれ」
「格好良いやつ期待して待ってるね!」
アオイの言葉に曇った心はすぐに晴れ渡る。
人気者の彼女には一生敵いそうにないと思った。
2/2ページ
