【ブレス オブ ザ ワイルド/短編】
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「えーっと、耳元でヒソヒソ声で話せば良いってこと?」
「そう。頼むよ、リンク」
そう言い、リンクに頭を下げる。
ここはハテノ村にある私の家の中。
中々寝付けないのを改善出来ないかと調べた結果、自然などの環境音の他に人の出す音も効果的だと出てきたため、こうしてリンクに頼んでいる。
リンクとの出会いはそれなりに前。
良い天気だったから夜の散歩に出たところ、道端に転がっていたリンクに声を掛けたのが始まり。
100年眠っていただの、記憶が無いだの、ルピーも持ち合わせていなかったから家を買うどころか宿にも泊まれず…だったらしい。
リンクは考えた結果、そこら辺で寝ればいっか…ってなったらしい。いや、自由すぎじゃない?
放置して朝冷たくなっていたら…と、思うと気分が良くないのでその日は目の前の人間を拾うことにした。
それから何やかんやで、リンクはハテノ村に来る度に私の家を訪ねる。
最近、取り壊し予定だった家を買い取ったと聞いたが、何故か家に帰らずに私の家に来る。酷い時は買い出しから帰ってきたら人のベッドに入り込んでいた時もあった。休みたいなら自分の家で休んだ方が良いと思うけど……。
「最近寝不足でさ。とある情報網によると心地良い音を聞くと眠くなるって聞いて。私、リンクの声好きだし」
「俺のこと好き!?アオイ。俺も…」
「声ね。声。あと添い寝もして欲しいかも」
「……俺だって男だよ。アオイは俺のことどう思ってるの?」
「ん?んー、一緒にいると落ち着く存在(飼い犬的な)…?」
私の言葉に不服そうなリンク。
その頭をよしよしと撫でると、気持ち良さそうに目を細めた。
やっぱり犬っぽいんだよなぁ。
「もう。……ほら、アオイが先にベッドに入って」
「わーい。楽しみ〜」
先にベッドに入ると、リンクが寝やすいように端っこに寄る。私に続いてベッドに入ってきたリンクは、私をそっと抱き寄せた。
「リンク…?」
「どう?心臓の音も心地良いと思うんだけど」
ドクンッドクンッドクンッ。一定の間隔で響く音。
少し早くも感じるが、不思議と気持ちが落ち着く。
「緊張してる?」
「当たり前だよ。好きな子とこんな近くにいるんだから」
「……ちょっと照れる」
「そこは惚れてほしかったな」
見上げた顔があまりにも優しかったから。
リンクの表情は変化が乏しい。ただ、観察していくと心の底から出した感情は表に出せているようだった。
例えば、ご飯を食べている時のガッつき具合を見るに、食べることが好きなのだろう。
盾サーフィンとやらをやっている時は心底楽しそうにしている。
そこら辺のボコブリンを倒した後はスッキリしたような表情だったけど……ストレスでも溜まってるのかな?
「アオイ。眠たくなったらそのまま眠って良いからね」
「うん。あとはよろしくね、リンク」
既に瞼が重い。
人の温もりなのか、それともリンクから癒し効果でも出ているんだろうか。
もう少しくっ付いていたくて、その背中に腕を回す。
「…アオイ。ずっと側にいるからね」「俺は大丈夫」「君の側は居心地が良いからさ。もう、離れたくないな」「……好きだよ」
頭がボーっとしてきた。
リンクの口から発せられる言葉の数々。それが段々と遠のいていくような感覚。それと同時に、その言葉の中に何処か苦しみが滲んでいるようにも思えた。
「……リンク。一つだけ言ってもいい?」
「ん。何?」
「何かあったとしても、いつでもここに帰ってきて良いんだからね。リンクとの何気ない日常に慣れちゃってさ。それに私、枕が変わったら寝れないタイプだから」
「……そっか。なら、アオイの為にベッド温めておかないとね」
「それはいいかな…」
控えめに笑うリンク。
少し前に、過去の記憶を少しづつ取り戻していると聞いた。それ故に、"するべきこと"と"したいこと"は別物になってしまっているのだろう。
私に出来ることは少ない。縛るつもりもない。けど、気軽に行ける居場所くらいにはなってあげたい。
「…言いたいこと言ったから寝る」
「寝れるの?」
「今日は丁度いい抱き枕があるからね。しかも安眠効果付き」
「抱き枕扱いかぁ…」
さっきよりも表情が柔らかいリンク。
そんなリンクの胸に顔を埋めてみる。……む。これは、中々……。
「おやすみ、リンク」
「おやすみ、アオイ」