【もしもこの感情に名前をつけるならば】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
10
ゼルダ姫様と共に監視砦に戻ってからはとても大変だった。
ゾーラ族の王になられたシド王子様、ゴロンシティでユン組の社長らしいユン坊さん、まだ幼いけれど戦士としての勇ましさも見えるチューリさん、若くして族長になられたしっかり者のルージュさん……そんな立派な方々に囲まれていた。
リンクから事情を聞いていたらしい。
四人全員から其々の故郷の良さを猛アピールされてしまって「是非、いつか来てほしい」と歓迎してくれる熱意に負けて、「必ず。行きます」と伝えた。
ゴーレムなミネル様には謝罪された。
何でも、私の魂から微量の魔王の気配を感じてリンクに私のことを警戒するように言ったらしい。
それは当然のことなのだから謝らないでくださいと返した。
そして、ミネル様に感謝を伝えた。人が良過ぎるリンクに、悪い人に騙されないか心配になった。
ミネル様との別れ際には彼女に向かって感謝の意味を込めて頭を下げた。
――――――――
―――――
――…
あれから時間は流れ、数ヶ月の時が過ぎていた。
私は今もリンクに仕えている。
以前と変わったのは、リンクが出掛ける目的がゼルダ姫様の国の復興のお手伝いになったこと。
毎回付き添うわけではないらしく、リンクが自宅にいる時間も増えた。
「リンク。お茶の御代わりをどうぞ」
「ありがとう。アオイ」
カトラリーなど使用した物を洗っている最中、背後からの視線がチクチクと刺さる。
最近、リンクは落ち着きがない。
仕事はしっかり熟しているつもりだが、気付かぬうちに何かやらかしたのかもしれないとリンクに聞いてみるも、「何でもない。気にしないで」としか返ってこない。
片付けが終わるタイミングでリンクから声を掛けられる。
中々、用件を伝えてこないリンク。何かあったのではないかと心配になる。
「……アオイ。今度遊びに行かない?」
「良いけど何処に行くの?」
「それは、その……まだ決めてないけど」
少し落ち込み気味のリンク。
リンクの両手に自分の手で重ね、彼を真っ直ぐ見つめて口を開く。
「行き先は一緒に決めない? リンク。誘ってくれて嬉しいよ」
「……うん」
リンクは少し困ったように笑う。
彼がどんな気持ちかわからなかったけれど、とても居心地が良かった。
―*―*―*―*―*―
時は少し戻り、アオイを遊びに誘う数日前。
「リンク。貴方という人は……っ!」
まるであり得ないとでも言っているかのような姫様の表情。
その胸元には白龍の龍岩石が加工されたネックレスが付けられていた。
アオイが偶然落ちてきたのを拾った物で、ゲルドの街に遊びに行った際にアクセサリーに加工したらしい。
友情の証としてアオイは姫様に贈っていた。それを今も大事に身につけている姫様。
後日姫様からはブレスレットを贈ったらしいのだが、姫様は誇らしげに「宝石はリンク色にしておきました」と言っていた。
「リンク。今、貴方はアオイのことどう想っていると言いましたか?」
「彼女のことを護ってあげたい……と、思っています」
「もし、他に彼女を護りたいと言う人が出たならどう思いますか?」
「優劣をつけるのはよくないですが、アオイと出会ったのは俺が先です。彼女と過ごす時間も俺の方が多いはずです。譲る気はありません」
「……リンク。もう一度聞きます。アオイのことをどう想っていますか?」
「姫様。何故、さっきから同じ質問を繰り返しているんですか?」
ジト目で俺を見てくる姫様。
態とらしく大きな溜め息を吐くと、ビシッと人差し指を俺に向ける姫様。
「リンク! それは"愛"です!」
「……そうですね。庇護欲というか……動物を飼っている人の気持ちがわかった気がします」
「違います! 貴方、もしかして鈍感だったんですか!? ラブですよ! ラブ!! 一人の女性として好きなんです!!」
「…………そうですかね?」
「そうとしか思えませんよ! 全く……。空気が読めない人とは思ってましたが、ここまで鈍感とは……」
「暫くはプルアと活動しますから、リンクはアオイへの気持ちと向き合ってください」と告げられ、アッカレにある自宅へと帰宅する。
玄関の扉を開けると、すぐに奥から「おかえり、リンク」と言いながらアオイが姿を現す。
「ご飯も出来てるし、お湯も沸かしておいたよ。どっち先にする?」
「……お腹ぺこぺこだし、ご飯かな」
「じゃあ、座って待ってて……!」
急ぎ足でキッチンに向かうアオイ。
夫婦みたいなやり取りだ……なんて、思考が浮かんできたのは姫様があんなこと言った影響だろう。
でも、そんな関係も悪くないなんて思ってしまう。
「アオイ。あのさ……」
「どうしたの? リンク」
「……あー、ごめん。何でもない」
「そっか。何かあったなら遠慮なく言ってね」
喉の奥に詰まる言葉。
最初はただの同情だった。彼女が可哀想だと思ったから。
でも、彼女との時間を重ねていくうちにこの気持ちは違う形へと変わっていった。
いつか、アオイへ伝えたい。
この感情に名前をつけるならば、それはきっと─。