【ブレス オブ ザ ワイルド/短編】
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俺は100年間眠っていたらしい。
聞き覚えのない女性の声。謎の老人。目に映るのは見覚えのない景色。
老人に言われた通りに祠を巡る。
そして知らされる事実。
与えられた目標は神獣を全て解放して、厄災を倒し、ゼルダ姫を救うこと。
それから数日が経ち、現在─。
俺の耳には声が聞こえていた。ゼルダ姫とは違う女性の声。話しかけても返事がないところ、俺の声は届いていないらしい。
初めは不快感こそ無いものの不思議だった。
記憶のない以上、過去に俺と関わりのあった人の声なのかすらわからない。
「いてて……」
『だ、大丈夫!?リンク!』
「大丈夫。このくらいの傷、君が教えてくれた料理を食べれば治るよ」
俺を気にかける声。
君が一体何者で、何処にいるのかもわからない。でも、その優しさが心に染みる。
俺の失われた記憶の手掛かりでゼルダ姫との思い出の場所を回っているけど、どの記憶を思い出しても心中穏やかではなかった。
きっと、100年前の俺は"嫌"だったんだろう。
本当にウツシエの記憶を巡るのは必要だったのだろうか?神獣の脅威に晒されている場所へ訪れた際、思い出した各地の英傑たちとの記憶。これは紛れもなく俺自身の記憶だ。スッと、入ってきた記憶は居心地が良かった。まるで、収まるべき場所に収まったかのように。
もう、ゼルダ姫の記憶は辿りたくない。
思い出す度に脳裏に浮かぶ不快感。
そんな中、彼女の声だけが救いだった。
名前も姿もわからぬ彼女。いつだってその声は俺に向けられていた。姫を救える唯一の英傑としてではなく、"リンク"に向けられた声。
『リンク。大丈夫…じゃ、ないよね。リンクだって人間だもん』
「……うん、辛い。でも、君の声を聞くと安心するよ」
『神獣も残り1体。ちゃっちゃと倒して世界平和にしようね!』
「そうだね。あともう一踏ん張りだ」
この旅を終えた先で、彼女に会えるのだろうか?
名前も姿もわからぬ彼女。他の人には聞こえず、俺にだけ届く声。
─会いたい。会って、「君の声に救われてたんだ」って、伝えたい。
神獣を全て解放し、ハイラル城へ。
仲間たちの手助けがあり、1人で戦うよりも優位な戦況だった。それでも、厄災を倒すのに苦戦した。
「私のことを覚えていますか?」
目の前の女性、ゼルダ姫が言う。
その瞳には期待と不安が入り混じっている。
「……ゼルダ姫様ですよね?」
「…リンクっ」
「申し訳ありません。全ての記憶は思い出していません」
「……ぁ。いえ、いいのです。貴方は役目を果たしてくれました。記憶はこれから思い出していけば、それで」
「俺…私は記憶よりも大事な……探したい人がいます。これからはその人を探しに旅をしようかと」
俺の言葉に驚いたような表情をするゼルダ様。その顔には少し悲しみも混じっているように見える。
「人…ですか?それなら私も協力します」
「いえ。ゼルダ様の手を煩わせるわけにはいきません。私1人で大丈夫です」
「ですが……わかりました。では、私はカカリコ村へインパに会いに行こうかと」
「そこまでは同伴させていただきます」
「…ありがとう。リンク」
ゼルダ様をカカリコ村までお連れした後、俺は先を急ぐように足早に立ち去った。
1秒でも長く居座ったら、周りから何やかんやと言われそうな気がしたから。
向かう場所は忘れ去られた神殿の女神像の元へ向かう。何となく、ここは特別な雰囲気があったから。
厄災を倒したんだ。女神様ほど偉大な方であれば、功労者に褒美の1つや2つ与えてくれるはずだ。
膝をつき、祈るように言葉を溢す。
「女神様、お願いです。どうか、彼女に会わせてください」
いつもと変わらず女神像は静かに佇んでいた。
……俺の問いかけに言葉は返ってこない。
無慈悲だと思った。命懸けでハイラルに平和を齎した勇者に、希望の1つも与えてはくれないのか。
ただ、彼女に会いたい。
俺は君の言葉に励まされたんだって伝えたい。
叶うことならば、この手で君に触れたかった。
「……君がいないなら、この世界で生きる価値なんてない」
胸に剣を当てる。
どうか、来世があるならば。彼女と同じ世界を生きられますように。
「……た、な」
真っ暗な意識の中に光が現れる。
そこから聞こえてくる声。聞き馴染んだ、彼女の声。
「あーあ、クリアしちゃったなぁ。"ブレスオブザワイルド"」
あとがき
ご拝読ありがとうございます。
短編のあとがきです。
解説というか、こういう感じで書いてました。って話になるかと思います。
当然の如く、ネガティブな表現が含まれているので閲覧の際はご注意下さい。
【壊れてしまった勇者の話】
この話の勇者は管理人の自己解釈リンク設定です。
→仕事や使命優先で自分の感情を腹の底に押し込めてます。相手に嫌な感情を抱いても嫌な顔一つせずに使命に真っ当に生きているというか。
我が家設定では、ゼルダに好意的ではないのは彼女の我儘に振り回された被害者って位置付けです。相手は王族であり、護るべき対象。姫付きの騎士としては命に代えても守らないといけない。
命が助かったとはいえ(100年後)、記憶は無いし、危険なこと頼まれるし、拒否権が無いような気がしてちょっと嫌な感じだなぁ…って思いました。
ウツシエに関してはゼルダの記憶。各英傑との記憶はリンク自身の記憶と固定しています。
声の主である『彼女』は夢主=プレイヤーです。
一応心の中の声もリンクに届いているって感じです。
一方通行なのでリンクの声は届きません。
(夢小説なので『彼女』にしていますが、もしかすると『彼』の可能性もあったり……?)
このリンクについてはゼルダ姫や周りの人よりもプレイヤー(夢主)の方が俺のこと大事にしてくれてない?ってなったので、プレイヤー大好き人間になってます。軽々と命捨てられるくらいに。
閲覧注意なのは、ゲーム(ブレワイという作品)としてのリンクのイメージとは遠くかけ離れた設定なのと、ゼルダ姫の扱いが悪いからです。あと、全体的に後味が悪い。
自分がリンクのようなメンタルじゃないのが大きいですが、リンク=自分(プレイヤー)として見ていて姫様関係に良い印象抱けなかったがこの話を元となった部分です。
あんなあからさまに嫌悪感出されたら心挫けてしまいます。
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