【もしもこの感情に名前をつけるならば】
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06
「こ、これは……!」
「お土産にと思って。ヴァーイミーツヴォーイ」
鮮やかな色にフルーツがトッピングされたドリンク。ゲルドの街でしか飲めないという代物だ。
そんな貴重な物をリンク様は……。
「あ、ありがとうございます……っ」
「えっ!? そんな泣かなくても……!」
溢れる涙を袖でゴシゴシと拭う。
もう一度お礼を言ってから少し口に含むと、フルーツの甘味が口に広がる。
「そういえば、アオイ。それお酒なんだけど平気?」
「お酒? …………特に変化はないから平気だと思う」
「そっか。なら、良かった」
美味しいという感覚が脳を刺激しているくらいで、他に体調に変化は感じられない。
……風の噂程度でしか聞いたことなかったけど、ヴァーイミーツヴォーイってお酒だったんだ。
「ルージュ……ゲルド族の族長なんだけど。彼女に君のことを話したら会いたがってたよ」
「私のことを? ……リンク。もしかして、私出て行った方が…………」
「ち、違うから! ほら、俺は男だし。アオイが居てくれてから家の中は常に綺麗だし美味しいご飯も食べられて嬉しいけど、異性と二人きりの空間より同性と一緒の方がアオイは過ごしやすいかなって……」
「……リンク。私は貴方にとても感謝してる。それに……楽しいよ。家事をしている瞬間も、貴方の話を聞いている時も……」
「アオイ……」
「……ルージュさん、で合ってる? 聞かせてほしいな」
「……じゃあ、ウルボザと数年前のことと合わせて話すね」
100年前。ゼルダ姫様のお母様の友人であったウルボザさん。特にゼルダ姫様を気にかけており、数年前に解放した神獣の内部での会話では世界よりゼルダ姫様の救出を優先するくらいに大事に想われていたそうだ。
そして、ルージュさん。
数年前にまだ幼いながらも族長を受け継ぎ、今は立派にゲルド族の族長をされているらしい。
ルージュさんはウルボザさんの子孫なんだとか。
「二人とは距離感に注意しないといけなかった」
「女性だから? いや、でも、それだとミファーさんもか……」
「ウルボザとルージュは雷使いだからね。うっかり雷に撃たれたなら……俺でも無傷では済まないな」
「普通だと重傷負うと思うんだけど……」
シレッと言うリンク様。
リンク様が凄い人ということはわかるのだけど、時折人間離れしたことをされるので少し心配になる。
「ルージュさんはリンクから見てどんな子?」
「そうだね……普段は接点がないんだけど、真面目で責任感が強い子だね。ウルボザと母親を尊敬していて、積極的に行動する彼女の姿には俺も見習わないとって思うよ」
「立派な方なんだね」
……少しの沈黙。
リンク様は真面目な表情で私の方を向く。
「……俺が前に言ったこと覚えてる?」
「"必要とされているかわからない"……だよね? 答えは見つかった?」
「大体、ね。俺のことはもう大丈夫。次はアオイの番だね」
「私の……?」
「監視砦に向かってみない? 勿論、無理にとは言わない」
「……少し時間が欲しい」
窓に向かい、空を眺める。
水平線の向こうから赤い月が姿を見せようとしていた。
あそこから嫌悪の視線を感じて、少し気分が悪くなった。