【もしもこの感情に名前をつけるならば】
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02
厄災が復活すると予言された100年前。
リンク様は退魔の騎士に。ゼルダ姫様は姫巫女だった。
そして、ゾーラ族・ゴロン族・リト族・ゲルド族の英傑四人。
「ミファーは俺がまだ幼い頃に出会って。俺が無茶するといつも心配してくれた。小さな傷でもいつも治してくれてたんだ……」
「ダルケルは俺のこと相棒って呼んでくれてたんだ。感情は出せなかったけど嬉しかったよ。空気がピリピリした時、周りの空気を和らげようと気を遣ってくれたりしたんだ」
「年が一番近かったリーバルだけど、仲良く……というのはなかったよ。俺のことが気に食わないみたいでよく突っかかってきてた。でも、俺としてはその位が丁度良かったんだ」
「ウルボザは年長者だったから彼女がいてくれたお陰でバランスが整っていた気がするよ。ウルボザが支えてくれていなかったらどうなってたことか……」
リンク様は表情には出さないものの、悲しげな雰囲気をされていた。
英傑達は100年前に復活した厄災ガノンに乗っ取られた神獣の中で命を落としたこと。
リンク様も致命傷を負い、回生の祠で100年間眠り続けて傷を治したいこと。
目を覚ました時に全ての記憶を無くしていたことを教えてもらった。
「記憶は戻っているの?」
「正直、全て戻っていると断言は出来ない。でも、一部だけでも思い出せて良かった」
少し表情を柔らかくするリンク様。
とても大切な思い出なのだろう。言葉の一つ一つに感情が乗っているように思える。
「……その、ゼルダ姫様のことは?」
「……護るべき人、かな。とても繊細なお方だと思う。誰かが側にいなければすぐ揺らいでしまう程に」
「ゼルダ姫様のこと好きなの?」
「え? …………良い思い出ばかりではないけど、今の彼女は好きだよ。主君としてね」
「そうなんだね。話し方から異性として好きなんだと思ったけど……」
「兵士になる前から決めていたことだよ。相手は一国のお姫様だ。主人を命を懸けて護ること。それ以上でもそれ以下の感情は抱かない。そう、厳しく言われてきたから……」
真っ直ぐな瞳。
その言葉に偽りはないだろう。純粋に仕えるべき相手として想っているのだと思う。
……でも、ゼルダ姫様は?
数少ない自分と同じ時代の人で、どんな時も支えてくれていた相手に想いを寄せないなんてあるのだろうか?
私の知らない世界。
こんな風に思うのは良くないのだろうけど、少し羨ましく思った。私は誰かと助け合うことも、誰かに大事に想われることも知らないから。
「アオイ。ありがとう」
「礼を言われるようなことはしていないよ?」
「いや、こうして言葉にしてみたら心の中が整理されていく感じがしてさ。また今度続きを聞いてくれるかな?」
「私に出来ることであればいつでも」
……本当に良いのだろうか。
私のような人間が聞いても。リンク様にとっては辛い話なのだろうけど、私には眩しいくらいにキラキラと輝いてみえた。
彼の世界を想うと少し哀しくなった。