【もしもこの感情に名前をつけるならば】
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01
リンク様……リンクに拾われて数日。
つい先日まで廃屋で暮らしていたとは思えないほど、快適な暮らしをしていた。
人を不幸にさせる存在であった私に衣食住と仕事を用意してくれたリンク様。
目上の人なのだから敬語と様呼びはするべきだと思っていたのだけど、リンク様は堅苦しいのは苦手らしい。
事情は分からないけど、普段と違って家ではリラックスしたいのだとか。
年齢も近いのだから肩の力を抜くように言われた。
リンク様と呼ぶと嫌がられるので様呼びは心の中だけに留めておこう。
リンク様はどうやら数年前に厄災ガノンを倒した勇者ご本人らしい。
今は行方不明のゼルダ様の情報を探しつつ、リト族・ゴロン族・ゾーラ族・ゲルド族の住む四地方の調査をしている最中なんだとか。
つい先日、リト族の問題を解決したらしい。
リト族の住むリトの村はリンク様の家から遠く離れているのにすぐにご帰宅出来たのはどうしてかと質問したら、ワープ機能がどうとか言われた。
そんな便利なものがあるとは……。世間知らず過ぎるのはリンク様に迷惑が掛かるだろう。世の中のことを勉強しなくては。
「ただいまー」
「おかえりなさい、リンク。……少し擦り傷が出来てるね。塗り薬取ってくるから待ってて。あと、お肉と魚どっちが良い?」
「ありがとう。そうだな……お腹ぺこぺこだしお肉が良い」
「わかった。少し待ってて」
急いで調理場に行き、肉料理を何品か用意する。
棚から塗り薬を取り、全て纏めて持ってリンクの待つテーブルへと運んでいく。
「左腕出して。少し滲みるかもしれないけど……」
「平気だよ。怪我することには慣れてる」
料理を口に運んでいくリンク様は本当に気にしていない風だった。
「ん……?」
「あっ……えっと、すみません」
無意識にその頭を撫でていた。
リンク様だって人の子だ。慣れていても怪我をすれば痛いだろうに。そんな感覚が無くなるほど怪我を負ってきたのだろうか。
世界を救う旅をしてきたお方だ。怪我で収まらずに致命傷になるような負傷だって負ってきたのかもしれない。
「その、私が言うべきじゃないと思うけど……。無理し過ぎないでね」
「……そうだね。死んだら俺の代わりなんていないからね」
自分の代わりなんていない。それは当たり前のことだ。
でも、リンク様は何処か疲れたような瞳で言葉を漏らした。
「リンク」
私は座っているリンクの前にしゃがむと、その両手を握る。不思議そうな顔をしているリンク。
「貴方の命が失われるなら私の命をあげる。私は貴方には生きていてほしいから」
「……アオイ。駄目だよ。自分の命は大切にしないと…」
「私は自分のこと無価値な人間だと思ってる。貴方は別として、今まで人に必要とされたことがないから。でも、何でリンクが私と同じ目をしているの?貴方は必要とされているでしょう?」
「……俺は、どうだろう。あの時……目を覚ました時から流されるままに生きてきた。過去も今も自分がやりたいってことをやっているだけだけどさ、たまに思うんだよね。
リンク様はあまり感情を表に出さない。
でも、感情がないわけじゃない。表情ではわからなくても、楽しいこともあれば辛いことだってあるだろう。
「……私、両親はハイリア人でこんな赤い髪してないんだ」
「アオイ?」
「だから気持ち悪いって言われ続けてきた。……一人でフラフラしている時に出会ったシーカー族に言われたんだ。遠い祖先にゲルド族がいるって。その人はとても力のある人だとも言われた」
口を閉ざして耳を傾けてくれるリンク様。
私は言葉を続ける。
「私はリンクのこと知らないし、リンクも私のこと知らない。リンクが聞いてくれるならもっと話すし……。あの、リンクが良いならで良いから、貴方のこと教えてほしい」
一歩踏み出すのはとても怖い。
その先は地面があるかもわからない暗闇だ。
でも、今はこうするべきだと心から思う。
「……君に話したら何かわかるのかな。…………ねえ、アオイ。俺の話し聞いてくれる?」
「……聞かせて。リンクのこと」