【時のオカリナ/短編】
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7年の月日が経っているとは思えないほど見慣れた景色と変わらない森の中を歩んでいく。
導かれるままにマスターソードを抜き、気が付いたら大人になっていた。
そして流されるままに迷いの森を進んでいるのだが─。
「リンク。もしかして迷子になっちゃった?」
「ナビィ。それは言わないで……」
森の景色に見慣れているといっても、迷いの森に入ることは殆どなかった。
いつもならば、間違った道を選ぶと入り口へと戻される。
「リンク! あれ何だろう?」
「……水溜り? ぼんやりと光ってるね」
隅の方に小さな水溜りがあった。
それは薄く光っており、その光に誘われるように近寄り覗きこんでみる。
「わっ!? 誰!?」
「えっ!? 君こそ誰!?」
水溜りに映し出されたのは自分自身の姿ではなく、自分とよく似た姿をした少女?だった。
剣と盾を背負う少女の傍らにはナビィによく似た妖精がフヨフヨと飛んでいる。
「私はアオイ!この子は相棒のナビィ!勇者って言われて、今は森の神殿に向かってたところなんだけど、不思議な水溜りを見つけて覗き込んでみたら君が居たんだ」
「オレはリンク。こっちは相棒のナビィ。オレも勇者で森の神殿に向かってたところなんだけど……」
「不思議!ナビィがもう1人いるみたい……!」
勇者って何人もいるものなんだろうか?
たった今、目の前で不可解な現象が起こっているというのに、不思議と落ち着いていられた。
「……ねえ、少し話さない? 本音を言うとちょっと不安なんだよね」
「……もしかして勇者になったこと?」
「うん。何とかしてゼルダに会って、それからドドンゴの洞窟、ジャブジャブ様のお腹の中の問題を解決して……。石を3つ集めたけど既にガノンドロフが反乱を起こしていた。まだ子どもだったから敵わなかったって言われたんだけどさ…………」
「彼奴に勝つにはもっと強くならなくちゃいけない。オレもまだまだだからさ。一緒に頑張ろうよ」
「……うん。ありがとう、リンク」
そっと水面に触れる。
アオイも同じように手を合わせると、何故だか気持ちが通い合うような居心地の良さを覚える。
水面に触れた指の感覚は水しかないのだが、彼女は本当にそこに存在しているかのような気持ちになる。
「リンク。私達が会えたことは奇跡かもしれない。けど……また、話そうよ」
「うん。オレもまた君に会いたい」
名残惜しいが先を急がなければならない。
こうしている間にもガノンドロフは刻一刻と、世界の全てを支配し、その所為で苦しんでいる人達がいる。
「またね!リンク」
「うん。アオイも気をつけて」
心配そうに擦り寄ってきたナビィに「大丈夫だよ」と一言掛け、オレは森の奥へと足を進めた。
――――――――
―――――
――…
あれから時間を見つけては森へと行き、毎回ではないがあの水溜りを通じてアオイと会っていた。
森の神殿の不思議な通路で少し気分が悪くなったこと。炎の神殿ではマグマに落ちないかヒヤヒヤしたこと。水の神殿では自分と瓜二つの影の魔物に会ったこと。闇の神殿では神殿内部の雰囲気が常に怖かったこと。魂の神殿では洗脳されていたとはいえナボールを傷付けてしまった事を後悔していること。
……そんな、旅の話をした。
「……リンク。これがきっと最後の戦いだよ」
「そうだね。……ねえ、アオイ。この戦いに勝ったらさ…………」
「……私は死ぬと思う」
「アオイ!? な、何でそんなこと言うんだよ!?」
あの頃より小さく、少し濁った水面には傷だらけのアオイの姿があった。
オレは不思議と大きな怪我はしなかったものの、アオイには過酷な旅路だったのだろう。
「オレがガノンドロフを倒してハイラルを救うからさ!! だから! ……だから、アオイはもう戦わなくていい。オレが救うから……っ!」
「……リンク。君は良い人だね。だからこそ幸せになるべきだよ。それに……もう、わかっているんでしょ? 2つの世界は交わらない別世界。私が救わなければこの世界のハイラルは救われない」
「アオイ……」
「リンク。私は君に会えて良かった。こうして話すことしか出来ないけど……この時間は確かに幸せだった」
あの時のように手を合わせる。
触れた手を強く握っても、水面が小さく揺れるだけ。
「君と同じ世界に生きたかった……っ!」
「リンク。ありがとう。……ーーーーだよ」
「オレも」と言葉にしようとした寸前に、いつの間にか水溜りは姿を消していた。
「リンク……」
「……行こう。ナビィ。オレは救わなきゃいけないから」
もう会えない彼女が果たせなかった宿命を、オレは果たそう。
いつの日か、この身が世界から解放された時彼女にまた逢えたら良いな─。
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