【ブレス オブ ザ ワイルド/短編】
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「リンク姉さん、聞いてください!私、ついにヴォーイ・ハントをしに旅立とうと思っているんです!」
リンク姉さんとは姉さんが初めてこの街を訪れた際に、この街の族長であるルージュ様の所へ案内をしたのが出会いの始まり。
それから何やかんやでリンク姉さんと親しくなった。
リンク姉さんは凄い人だ。私の憧れの人。
お近付きになりたくて、姿を見かける度に必死になって声を掛けたものだ。
私は赤ん坊の頃にこの街の塀の外に置き去りにされていて、この街の人達に育てられたのも同然に生きてきた。
ゲルドの民は皆女性。100年に一度男児が産まれるらしいけど私は見たことがなかった。
そして、ゲルドの女性は適齢期になるまで街の外に出れず、適齢期になったらパートナーを探しにヴォーイ・ハントに行くらしい。
私はハイリア人だが育ちはゲルドなので、他の人達と同じように育ってきた。
……身長はゲルド人より低いし、筋肉も無いから雑用することしか出来ないんだけどね。
「……い、今、何て?」
「え?リンク姉さんと会えなくなるのは寂しいですが、私…ヴォーイ・ハントに行ってきます!」
此処は路地裏。
用意したジュースを片手に、壁に背を向けて二人で並んで座り込んでいた。
リンク姉さんは男性のような見た目や声を気にしているらしく、人前で顔を出すのは嫌だと言っていたので人の来ない秘密の場所を用意した。
「……やめた方が良いよ。世の中にはアオイのような良い子を騙す人が多いんだよ」
「リンク姉さん……。私を心配してくれているのは嬉しいです。でも、街の掟。これは絶対!ですから……」
「アオイ……」
危ないので大人になるまで街の外に出たことがなかった。私を育ててくれた母は、ハイリア人なのだから街の風習はしなくても良いと言ってくれていた。
しかし、私はゲルドの街で育ったのだ。
自分の子どもなら兎も角、私自身は街の人間として習わしに従って自分自身でパートナーを見つけたい。
「……わかった。アオイがその気ならお…私にも考えがある」
「リンク姉さん……?」
「俺…私は双子の兄妹なんだ。家庭の事情で名前は同じリンクなんだけどね。前々からアオイに会いたがってたんだけど、丁度良い機会だと思って…」
「双子!?私、初めてです!リンク兄さんとリンク姉さん。……ちょっと、ややこしいですね」
まさか、リンク姉さんが双子で同じ名前の兄妹だなんて。双子ということはきっと、リンク姉さんみたいにお顔の整っていて強い人なのかもしれない。
一体どんな人なんだろうと想像していると、リンク姉さんが私の顔を覗きこんだ。
持っていたグラスの中の氷がカランッと、耳当たりの良い音が響く。
「会ってみる?」
「そうですね……、ヴォーイ・ハントの話は抜きにお会いしたいです。リンク姉さんの事もっと知りたいですから!」
「……アオイ。何で俺…私の事知りたいの?」
「え?そ、それは……。リンク姉さんは憧れの人ですし、それに……、大好きですから…!」
言葉にするのって恥ずかしい。
上がっていく頬の温度を抑えながら、素直な言葉を口に出す。
暫くしてもリンク姉さんの反応がないことに気付き、姉さんの方を向けば、顔が真っ赤になっていた。
「リ、リンク姉さん!?ひんやり薬要りますか!?」
「だ、大丈夫。びっくりしただけだから……」
リンク姉さんは淑女の服を着ているので暑さ対策はしてあるはずなのだが、慣れていないとこの暑さも辛いのだろうか?
ポーチから取り出そうとしていた手を止めると、リンク姉さんはそのまま私の両肩に手を置いて向き合う形になる。
いつの間にかいつも通りの調子になったリンク姉さんは真面目な顔で私を見つめていた。
「俺が君を幸せにするから」
「リンク姉さん…?どうしたんですか?」
「子どもは2人は欲しい。家事もする。安定した職で家庭も支える。あと、家族の時間もしっかりと作るから」
「ね、姉さん!しっかりして下さい!女性同士じゃ結婚も子どももできませんから……!」
少なくとも同性婚の話を聞いたことはない。
ゲルドは適齢期まで男性とは関われないので、そういう雰囲気になることはあれど、結婚までに至った話は聞かない。
恋愛教室で習ったことだが、子どもは異性同士じゃないと授かれないものだと学んだ。
つまり、私とリンク姉さんが想い合って結婚できたところで、私達の間に子どもはできない。
「…………」
「……落ち着きましたか?リンク姉さん」
「アオイ。もし、私がアオイの事好きだって言ったら私と結婚してくれる?」
「そ、それは……!…………う、嬉しいですし、その気持ちに応えたいですけど………………女性同士だと子どもはできないんです」
子どもが出来ないということは未来へと命を繋げることが出来ないということ。
私は兎も角、リンク姉さんのような優秀な方の血を残せないのは罪なのではないだろうか。
「大丈夫。できるから」
「いや、でも……」
「大丈夫。できる」
「あの……」
「できる」
「……ど、どうしてかだけ教えてもらってもいいですか?」
「…………双子の兄妹がいるって言ったでしょ?以上」
「えぇ……」
瞳をキラキラとさせて迫るリンク姉さん。
双子の兄妹がいるからといっても、それとこれは別問題では……?
「ふふ。もっと飲もうか、アオイ」
「凄く上機嫌ですね。リンク姉さん……」