【Where there is love there is life.】
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目の前には他所から来た少し年上の少年二人組みが立っている。トアル村の近くにある泉に向かった帰り道、まるで待ち伏せをしていたように少年達が立っていた。ニヤニヤと笑いながら近付いてきた少年達に警戒していたものの、大事に抱えていたノートを強引に奪われてしまった。
そのノートは私にとって大事なもの。人との会話はそれがなければ出来ない。それに──リンクとイリアから貰った大切なものだった。
「このノートが大事なのか?」
「返してほしかったら喋ってみろよ。なあ‼︎」
一方的に突きつけられる言葉。言い返したくても言葉を話せない私の口からは「ぁ……ぅ……」と、空気に混じった言葉にすらならない音だけだった。その様子を見ていた少年達は人を小馬鹿にするように笑う。どうしようもなくて、悔しくて涙が溢れ落ちた。ただ、堪えるように拳を強く握る。そんな時──。
「お前ら、いい加減にしろよ‼︎」
村の方から走ってきた見知った少年の姿。
飛び出してきた勢いのまま少年達に木刀を振り下ろす。そのまま軽々と少年達を痛めつけていった。少年達はノートを投げ捨てると半泣きで走り去った。
木刀を振っていた少年──リンクに近寄り、その服の裾を優しく掴む。少年達のことを怖い顔で睨んでいたリンクだったが、私を視界に入れると、その表情をいつもの優しい顔へ変える。怒ったリンクは別人のように怖かったからいつものリンクに戻って安心した。
「大丈夫か? アオイ」
声変わりのする前の少年の声。リンクの声は聞き心地が良い。大丈夫と言うように何度も頷くと、リンクは「そんなに頭振らなくても大丈夫だって」と呆れたように笑った。
「もう大丈夫だからな」
そう言って私の頭を撫でるリンク。その温かさに胸の奥がポカポカとした感情が広がる。
「ノートは…………うん。無事みたいだ」
投げ捨てられたノートを拾うと、その状態を確認してから渡してくれるリンク。私はそれを受け取ると、目的の言葉が書いてあるページまで紙を捲る。そのページを開いて見せるとリンクは目を細めながら笑った。
『ありがとう』
「ん。気にするなって! また同じことがあったとしても俺がやり返してやるから……!」
心臓の鼓動が煩いくらいだった。いつもリンクに助けられてばかりの私。でも、いつかリンクの助けになってあげられる日が来たならば──その時は自分の言葉でこの気持ちを伝えたいな。
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―――――
――…
齢16になるというのに、私は変わらず言葉を話せないままだった。もしかすると、生まれつきのものなのかもしれない。赤ん坊の頃に私を拾って養子として育ててくれたこの村の村長ボウさん。もう子どもじゃないのだから恩を返したいと思っても、普通のことすら出来ない私にはきっと出来ない。自分に嫌気が差すこともあった。そんな私に姉妹として一緒に育ったイリアは優しく時に厳しく接してくれた。
「アオイは大事な家族よ。わたしもお父さんもそんなこと気にしていないわ」
イリアは優しく抱きしめてくれた。
『イリア。ありがとう、大好き』
私の言葉を見てイリアは微笑んだ。
村の中にいるコッコを撫でていると、視界の端に馬を連れた青年の姿が見えた。それはリンクとエポナだ。リンクと目が合うと満面の笑みを浮かべながら手を振ってくれる。その姿に見て熱が集まる顔をノートで隠しながら手を振り返した。リンクはこちらへと駆け寄ってくる。
『これから牧場に行くの?』
「ああ。ファドに山羊追いしてくれって頼まれてさ。また後でな、アオイ」
去り際に私の頭を撫でていくリンク。あの頃とは違う、大きくて少し傷だらけの手だった。
今日もトアル村は穏やかな時間が流れている。
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