厄災の黙示録
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あれから数日後。
ゼルダ姫や英傑達と共に遺物の調査へ出ていた。今まで他人との関わりを避けてきたので遺物について私が知る事は無い。
調査とやらは特に収穫も得られないまま、ハイラル城へと帰還する事となった。
「このまま私が、力に目覚めなければ……」
歩みを止めるゼルダ姫。
私はそれを隊列の後方から見ていた。
ゼルダ姫の力は厄災封印の要。それがいつまで経っても目覚める気配すらしない上、リンクが退魔の騎士となった今、残された不安要素は自分だけ。焦燥に駆られているんだろうな……。
そんなゼルダ姫を想ってか、ゼルダ姫達が連れていたガーディアンは音楽を奏でる。あれは…ゼルダの子守唄か。
……まるで道を塞ぐように魔物の気配がするな。
「敵襲だ!!」
私が気付いた直後、前方から声が響いた。
各々、臨戦態勢をとる。
「……通りやすくしておけばいいんだろう」
「アオイ!?いけません!この数を1人で行くのは無茶です!!」
叫ぶゼルダ姫を一瞥し、私は先に進む。
共闘なんてやった事ないし、私の魔法に他の奴らを巻き込むわけにはいかない。それに、私強いし。
―*―*―*―*―*―
「全く、無茶するね」
「俺達もアオイに続くか?」
「大丈夫かな?アオイさん」
「まぁ、彼女実力はあるみたいだし、任せておいてもいいんじゃないのかい」
「アオイ……」
英傑達と姫様が各々反応している中、俺はインパに近付いた。
「インパ」
「リンク。どうしたんですか?」
「姫様の事頼んでもいい?」
「……仕方ありませんね。此方は私達に任せて行ってきてください!」
「ありがとう。助かるよ」
インパにお礼を言った後、アオイの後を追いかける。アオイの事だ。無茶はしていないだろうけど、矢張り心配だ。
殆どの魔物は倒されたようで、地面に転がっているその体は消え掛かっている。
「アオイ……!」
「リンク…!?おまっ、ゼルダ姫はどうした!?姫付きの騎士が姫から離れてどうする!」
「それはアオイの所為」
「は…わ、私の所為にするな!お前がついて来なければ良かった話だろう!?」
「単独行動禁止」
「そんな規則あったとしても私には関係ない。……いいからお前は持ち場に戻れ。怪我しても知らないからな…っ!」
そう言って、そっぽを向くアオイ。
……俺のあげた髪留め、まだ使ってくれてるんだ。
「怪我なんてしない」
「私の魔法に巻き込まれないって?私は配慮なんてしないからな」
「しなくていいよ。わかってるから」
「……わかってるって、何?」
魔物達を倒しながら先へと進んでいく。
アオイは気付いていなさそうだ。
「俺なら……俺"だけ"はアオイに合わせられるから」
「……何処から出てるんだよ。その自信」
進んで行った先、立ちはだかる様に大きな岩が2つそびえ立っていた。
「イワロックか」
「1体ずつ相手していこう」
「まとめてやった方が早いだろ」
「…1体ずつ」
「まと「1体ずつ」……っ〜!もう、わかったよ!1体ずつ相手すればいいんだろう!?」
「うん。いい子」
久しぶりに少し口元が緩む。
そんな俺を見て、アオイは少し驚きを見せた。
「えっ……あ、…………リンク。1体ずつ相手にするなら、もう1体に気付かれないように相手した方がいい」
「アオイ。俺にイワロックの弱点を削らせて」
「……わかった」
俺の見て、一瞬目を閉じるアオイ。
昔からアオイは思考を整理する時や気持ちを落ち着かせようとする時は目を閉じる癖がある。
過ごした時間は短くとも、俺はアオイの事理解しているから……。
俺は走り出し、1体目のイワロックに近付く。
アオイは魔法でイワロックの動きを止めつつ、俺の体を浮かせる。
弱点である鉱石の真横に降りると、隙を与えないくらいに剣を振るう。
「まずは1体……!」
―*―*―*―*―*―
リンクが追ってくるとは思ってもみなかった。
リンクをサポートするように魔法を使い、イワロック2体を倒す。
「あとはゼルダ姫達を待てばいいか……」
辺り一帯の気配を探ったが魔物の気配はしない。量は多かったが、強敵と呼べるような魔物は居なかったな。
「アオイ」
「それ以上……2メートル以内には近付くなよ」
「この前は言えなかったけど、ずっと会いたかった」
「……だから、何だっていうんだ。私はお前にしてやれる事はない」
「それでも、俺にはアオイが必要だよ」
「…………リンク。お前は優しい奴だ。だからこそ私みたいなつまらない人間に構うんじゃない。その優しさを貰っていいのは善い人だけだ」
「アオイだって善い人だ。だから……自分を卑下する事ないんだよ」
リンクが1歩また1歩と、近付いてくる。
それに合わせて私も1歩ずつ後退する。
「事実しか言ってない。私は……自分が嫌い」
「俺は好きだよ」
驚いてリンクの顔を見上げれば、リンクは穏やかな表情を浮かべていた。
「アオイの事が好きだ。昔も今も」
私は他人から好意を持たれるほど出来た人間じゃない。……やっぱり近寄るべきじゃなかった。
「……悪いけど、私先に帰るから」
「アオイ…?待っ……!」
魔力を使い、別の場所に瞬間移動する。
景色が変わり、ハイラル平原が目の前に広がる。
リンクの事が嫌いなわけではない。……好きってわけでもないけど。リンクの事は良くて弟みたいなものだ。
唯一の身内であった母が亡くなったのは遠い昔の事だ。わけもわからず老いる事も死ぬ事もない体。最初の頃はまだ他人と関わって生きていた。性格もこんなではなかったし、友人だっていた。
でも、みんな居なくなった─。
だから人と関わるのをやめた。私を見つけた優しい人が私へと手を差し伸べてくれた事もあったけど、その優しさに甘える度に辛くなった。
だから全てを拒絶した。何時しかこの口は突き放す言葉しか出なくなった。
だから駄目なんだ。
私が側にいるだけで君は傷付くことになるから。
―*―*―*―*―*―
俺は他の仲間達と合流した後、詳細は伏せてアオイが先に帰った事を伝えた。
姫様は浮かない表情をしつつも、アオイを心配していた。
─アオイに近付いたのは只の好奇心からだった。
でも、彼女という存在を知っていくにつれ、表面上では厳しく辺りながらも心の底では相手を思い遣る心があるように見えた。
きっと、どうしようもない孤独が彼女を変えてしまったんだろう。
もっと知りたいと思った。どうしたら本来の彼女の姿を見ることが出来るんだろう。……どうしたら、この"好き"を手に取ってもらえるんだろうか。
傷付いてなんかいないから。ただ、側に居させて。