短編
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〓勝りたい勇者
「トワ。アオイと1日デート権を賭けて勝負しよう」と、唐突にトワことリンク(光の勇者)に喧嘩を売るブレことリンク(息吹の勇者)。
トワも「負けても文句無しだからな」と、言ってその勝負に乗る。
その会話があったのが数時間前のこと─。
何故か私まで巻き込まれてしまい、現在居る場所はヘブラ山。
盾サーフィンで先にゴールした方が勝ちという単純な勝負だったが、2時間ほど経過した頃でも一向に勝敗が決まらなかった。
100年前、ブレを息抜きさせる為に拉致した際、丘の上から盾サーフィンで滑って遊んだ事もあったので、ブレの体には昔の経験が今も染み付いているのだろう。
トワはスノーピークで雪すべりをしていた経験が盾サーフィンにも活かされているのだろう。人妻からハート(のかけら)を貰うまで粘り続けていた。諦めの悪さにミドナに怒られてたっけ。懐かしいなぁ……。
そんな実力者2人。
どちらが勝つか予想出来ないと思っていたが、まさかずっと引き分けが続くだなんて。
このまま2人の様子を見ているのは退屈なので、私は1人ミンフラーの秘湯に癒しを求めに来ていた。湯浴み着に着替えてから湯に浸かる。
それにしても、何度やっても勝ち負けが決まらないなんてトワとブレは仲が良いんだな。
そう、しみじみ思っていると雪を踏む足音が2つ聞こえてくる。
「もう、こんな所にいた。探したよ、アオイ」
「相変わらず温泉好きだよな。アオイは」
プンプンと、頬を膨らませるブレ。その後ろで苦笑いを浮かべているトワがやってきた。
「2人も入るだろう?疲れ取れるよー」
魔法で2人の手元にタオルを用意すれば、返事をしてから服を脱ぎ始めるトワとブレ。
2人共、見た目は整っている所謂イケメンってやつだ。普通の女性なら黄色い声でもあげそうなものだが、私は気にしない。以前なら目のやり場に困っていたが、ブレが日常的に半裸になるから慣れてしまった。風邪引いたり、お腹壊すから服を着るよう注意しても直してくれないし。
私は2人が服を脱ぐところを見ないように目を瞑る。紳士だからね!
「結局、どっちが勝ったの?」
「引き分けのまま決まらなかった」
「気付いたらアオイの姿が見えなくなってたから、勝負は切り上げてアオイを探そうってなったんだ」
「まぁ、ブレに近くに温泉があるって聞いたからアオイがいるならそこだろうって。……温泉好きなのは今も変わらないんだな」
腰にタオル1つの状態で、私の両隣から入ってくるトワとブレ。肉眼では確認出来ないが、魔法で壁を作っているとはいえ外で裸になることに抵抗ないんだろうか?この青年達は……。
「まぁねー。……あっ、トワ。今回は事故起きないと思うから安心してね」
「えっ」「?事故って?」「ブレ!何でもない!何でもないから…!」
「はだっ……!」
ブレに説明しようとしたら、伸びてきた手に口を塞がれる。トワの大きなゴツゴツした手だ。
視線をトワに向ければ、真っ赤になった顔。それからブレの方を見れば、ジト目でトワの方を見ている。
トワ、嘘つけないタイプだもんなぁ。
事故というのは、トワの世界に居た頃にカカリコ村にある温泉に誰もいないであろう夜更けに入っていた時に起きた事。
周りには誰もいないし、そんな遅い時間に入る人はいない。だから裸で入ってた。
そこに現れたのが何も知らない純粋な青年リンク。
声を掛けたら驚かれ、そして謝られた。「気にしてないから大丈夫だよ。私、先に入ってたから出るね。リンクはごゆっくりー」と、言おうとリンクの方を向いた時、視界の端に驚いた時の弾みで落ちてしまったのであろうお湯に浮かぶタオルが見えたがもう手遅れだった。
視界に入ったのはリンクの真っ裸。そう、見てしまったのだ。リンクのアレを……!
「トワ。言って。俺怒らないから」
「むー(喋れない…)」
「アオイ絡みだと怒るだろ、お前……!」
「へぇ、アオイ絡みなんだ…?」
「ぐっ……!絶対に言わないからな」
トワの手を外そうとしても、力の差があり過ぎて微動だにしない。……最終手段、舐めるか?
「むー、むー」
「…あっ、悪いな。アオイ」
視線で訴えれば、外されるトワの手。
プハッと、息を吐き出す。鼻もちょっと塞がれていて少し息苦しかったぞ。
「ブレ」
「ん?アオイ…?」
「裸だよ裸」
「アオイ!!!???」
「えっ、裸って……?」
「それ以上のヒントは出せないなぁ」
特大級のヒントをブレに伝える。
トワはブレに知られたくなかっただろうけど、こんな事で怖気付いてるなんて先代である時の勇者が知ったならば、「その緑の衣が泣くわ」とか言いつつ説教コースは回避出来ないだろう。
「トワ。大丈夫だよ。減るものじゃないんだし」
「そういう問題じゃないだろ!?恥ずかしいってのもあるけど……、ブレが知ったらヤバいって」
「……トワ。確かにショックだったよ。でも、よく考えたら簡単な事だよね」
「何がだよ?」
「アオイの裸を見れないのは残念だけど、俺の裸を見てもらうことは出来るって事。そう……このタオル1枚を取っ払うことでね」
「やめろよ!!??」
私は2人が話している間に温泉から上がり、魔法で体を乾かすのと服に着替えることを同時に行う。
2人が騒いでいるが、気にせずにポーチからフレッシュミルクを取り出す。
温めてホットミルクにでもしようかな?
少し間を置いてから温泉から出てきた2人。
ちゃんと服に着替えているが、2人共髪が濡れている。少し屈んでもらい、2人の頭に手を乗せると魔法で水分を飛ばす。
丁度良い感じに出来上がったホットミルクをトワとブレに渡した。
「ありがとう。……でも、アオイ。何で先に出ちゃったの?師匠は愛弟子の体知っておかないと駄目でしょ…?」
「え?怪我や傷痕の確認は定期的にしてるよね?」
「アオイ、気にしなくていいから。ブレの言いたい事はそういうのじゃないし……」
礼を言いながらホットミルクを受け取るトワ。
一口飲んでから「美味しい」と、言葉を漏らす。
ブレの言っていた『知っておかないと駄目な事』……実はお尻が青い、とか?
「……さて、それを飲み終えたら旅の続きをしようじゃないか」
「アオイ。まだ勝負の決着がついてないよ」
「俺も。先輩としてもブレには負けられないからな」
「もしや、負けず嫌いかな?……良いよ。急ぐ旅でもないし、たまには息抜きも必要だろう。でも、1戦だけだからね。引き分けでもそれ以上は無しだ」
制限しないとまた、勝ち負けの決まらない勝負を永遠と繰り返す事になりそうだ。
頭の片隅でゼルダが「急いではほしいのですが……」と、言っているような気がしたので謝っておく。
ごめんね。2人共まだまだやんちゃ盛りのヴォーイだからね。
「トワ。後輩には優しくした方が良いんじゃない?」
「逆だろ。先輩として?優秀さを生意気な後輩に教えるのが出来る先輩ってもんだ」
「……大人気ない」
「……勝手に言ってろよ」
「ほらほら、君たち。喧嘩はしないっ!……頑張ったで賞くらいは準備しておいてあげるからさ」
口を挟めば、2人揃って私の方を向く。
えっ?何?私変な事言ってないよ?
「アオイ。俺の滑り見てて」
「俺の方も見ててくれよ」
「……うん。ちゃんと2人の事見てるから。行ってらっしゃい」
私の言葉に満足そうにすると、トワとブレは助走をつけて走り出した。
そんな2人の背中を見守り続けた─。
あとがき・小話
雪すべりをする光の勇者と盾サーフィンをする息吹の勇者……気が合わないわけがなく。
この話は「そういえばどっちの勇者も斜面滑ってるな…」から出来た話です。
最初は盾サーフィン勝負するだけのSSSでしたが、何か色々書いてたら文字数が短編基準値に達したので短編枠で設置しました。
(小説自体書けないor長文が書けない人間なので1話の平均2000字(改行など含む)なので…。それ以下はSSSにしています)
(前サイト時代は1ページ1000文字も書けてない事が多かったです。その代わり毎日やら複数話更新やらしてた…と思います)(これでもマシになった方)
勝ち負けは、勇者経験値としてはトワの方が上としていますが、実力勝負ならブレといい勝負していてほしいというか…。
サラッと本編ネタバレですが、時の勇者も"そういう体質"だったので、光の勇者も"そういう事故"を本編でやります。血は争えないね。
因みに、温泉入る為+裸になっても大丈夫なように夢主の魔法で周りの景色に溶け込むような感じにしているので脱いでも大丈夫なようにしています。
(大きな岩だったり、山の一部に見えるようにしていたり)