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ー生クリームやチョコレートの甘さも良いけれど。
たまには素朴で優しい甘味も欲しい時がある。
出来たら君と一緒に。
温かいお茶と。
•••*和風でてぃーたいむ*•••
12月。
そろそろ年の瀬を迎える時期。
浦原商店でも大掃除をしたりそれなりに忙しい日々を過ごしていた。
今日はなにやら台所で作業中な様子である。
「...案外、時間がかかるもんだなぁ」
「そうですなぁ。さて、午後のおやつに間に合いますか...」
「つうか、あいつが『お汁粉が食べたいっス~』なぁんてぬかすから...」
こんな面倒な事になるのだ、と。
呆れたため息をこぼす名無しと傍らに立つ鉄裁が見つめる先には大きな鍋が火にかけられている。
くつくつと煮込まれているのは艶やかな色をした粒ぞろいの小豆だ。
しかもかなり上等な一品。
どうしてこうなったかと言えば。
先ほど出てきた『あいつ』が原因...というか自分が言い出した事なのだが。
先週、気持ち良く新年を迎えるために行った浦原商店大掃除大会において。
案の定やる気ゼロなぐだぐだ店主のあいつこと浦原をたたきつけるために名無しがとった策であった。
「一番頑張った奴にご褒美として好きなものを作ってやるぞー」
そう言ったのが悪かった。
いや、結果として浦原が頑張ってくれたのは良い。
名無しもまぁ働いてくれたのだしリクエストを受け付けてやろうと思っていた。
...が。
「名無しさんが作ってくれるお汁粉が食べたいっス~」
「お汁粉?」
なんでまた...。
甘いものは嫌いではないけれど、そう好きでもないのに。
「ほら、最近また寒くなってますし。なんだか和風の甘味が恋しいなぁ、と」
あったかい甘味が、と考えていたらお汁粉にいきついたらしい。
へらっと笑う浦原に名無しはふーん、と頷く。
「まぁ、確かに最近寒いよな。じゃぁ近々、小豆を...」
「あ。ご心配なく。もうご用意してまぁーす☆」
じゃん☆
そんな効果音付き(自分で言っていた)で差し出したのは大きな紙袋。
中にはギッシリと小豆が詰まっている様子。銘柄は名無しが見ても上等だとわかる品だった。
「...お前。最初から企んでたんじゃねーだろうな?」
「いやいや!これは頂き物ですよ。どうしようかなぁーと思っていた次第で...」
「...あ、そう」
まぁ、いいや。
餅や白玉粉の類は在庫があるからと今日のおやつに作るとリクエストを受けたのだが。
(...結構な手間暇だよな)
くつくつと煮込まれる小豆を見つめているとまぶたが重くなってくる。
程良い温度が保たれた空間に知らずにあくびがこぼれる。
「...名無し殿。後は私が見ておきますから、座って休まれては如何です?」
「え?いや、大丈夫だから...」
「最近は大掃除大会を開いたりして忙しくしてましたし疲れが出たのですよ。無理はいけません」
「...う。じゃぁ、お言葉に甘えて...」
まるで母親に注意を受けたかのような複雑な気持ちになりながら、名無しは居間へと移動した。
(...ふぅ。確かに疲れてたかもなー)
もぞもぞと炬燵に入りながら小さく息を吐き出す。
師走とはよくいったものだ。
(むむ...。小豆が余ったら奴の誕生日ケーキは小豆まみれにしてやる...)
抹茶を混ぜても良いかもしれない、などと思考を巡らせているうちに。
彼女の意識はゆるりと溶けていった。
...*...*...*...
「あれ?名無しさん」
所用で出ていた浦原が帰宅すると居間の炬燵で眠りこけている名無しを発見した。
突っ伏してすやすや眠る彼女の顔はあどけなく幼い。
普段の強気な様子はどこへやら。
思わずにやけてしまうが、このままでは風邪をひいてしまう。
(...えと、毛布はどこでしたかねぇ)
とりあえず自分の着ていた羽織を、と彼女の細い肩へ掛けようと近づいていくと...。
「...ん。...うらはら?」
「あ。すみません、起こしちゃいましたね」
ぼんやりした瞳で自分を見つめる名無しは羽織を掛けるために伸びてきた手をガシッと掴む。
「...手、冷たい」
「まぁ、外に出てましたからね」
なんだ?
寝ぼけてるのだろうか。
意外な行動に少し戸惑うところに名無しは続いてポツリとこぼす。
「おかえり、浦原...」
こぼれた言葉とやわらかな微笑みと声に。
掴まれた手から伝わる体温がじんわりと心に染みてくるようで。
何気ない言葉なのに。
これほど嬉しいとは。
「...はい。ただいまです、名無しさん」
「お汁粉...、出来てると...思う」
「えぇ。甘い匂いがしてますね」
きっと台所には用意されているはず。
外出するさいに彼女と鉄裁が準備していた。
今、鉄裁の姿なないが。
(気を遣ってくれましたかね...)
そっと心の中で感謝しつつ。
彼女の肩に羽織を掛けてやった。
次いで頭を優しく撫でる。
「起きたら一緒にお茶しましょうね」
呟いた言葉に彼女は返事はしなかったけれど。
閉じかけた瞳は優しく細められていた。
ほんわりとした幸せを感じながら浦原は愛しい人の寝顔を見つめたのだった。
...END...
たまには素朴で優しい甘味も欲しい時がある。
出来たら君と一緒に。
温かいお茶と。
•••*和風でてぃーたいむ*•••
12月。
そろそろ年の瀬を迎える時期。
浦原商店でも大掃除をしたりそれなりに忙しい日々を過ごしていた。
今日はなにやら台所で作業中な様子である。
「...案外、時間がかかるもんだなぁ」
「そうですなぁ。さて、午後のおやつに間に合いますか...」
「つうか、あいつが『お汁粉が食べたいっス~』なぁんてぬかすから...」
こんな面倒な事になるのだ、と。
呆れたため息をこぼす名無しと傍らに立つ鉄裁が見つめる先には大きな鍋が火にかけられている。
くつくつと煮込まれているのは艶やかな色をした粒ぞろいの小豆だ。
しかもかなり上等な一品。
どうしてこうなったかと言えば。
先ほど出てきた『あいつ』が原因...というか自分が言い出した事なのだが。
先週、気持ち良く新年を迎えるために行った浦原商店大掃除大会において。
案の定やる気ゼロなぐだぐだ店主のあいつこと浦原をたたきつけるために名無しがとった策であった。
「一番頑張った奴にご褒美として好きなものを作ってやるぞー」
そう言ったのが悪かった。
いや、結果として浦原が頑張ってくれたのは良い。
名無しもまぁ働いてくれたのだしリクエストを受け付けてやろうと思っていた。
...が。
「名無しさんが作ってくれるお汁粉が食べたいっス~」
「お汁粉?」
なんでまた...。
甘いものは嫌いではないけれど、そう好きでもないのに。
「ほら、最近また寒くなってますし。なんだか和風の甘味が恋しいなぁ、と」
あったかい甘味が、と考えていたらお汁粉にいきついたらしい。
へらっと笑う浦原に名無しはふーん、と頷く。
「まぁ、確かに最近寒いよな。じゃぁ近々、小豆を...」
「あ。ご心配なく。もうご用意してまぁーす☆」
じゃん☆
そんな効果音付き(自分で言っていた)で差し出したのは大きな紙袋。
中にはギッシリと小豆が詰まっている様子。銘柄は名無しが見ても上等だとわかる品だった。
「...お前。最初から企んでたんじゃねーだろうな?」
「いやいや!これは頂き物ですよ。どうしようかなぁーと思っていた次第で...」
「...あ、そう」
まぁ、いいや。
餅や白玉粉の類は在庫があるからと今日のおやつに作るとリクエストを受けたのだが。
(...結構な手間暇だよな)
くつくつと煮込まれる小豆を見つめているとまぶたが重くなってくる。
程良い温度が保たれた空間に知らずにあくびがこぼれる。
「...名無し殿。後は私が見ておきますから、座って休まれては如何です?」
「え?いや、大丈夫だから...」
「最近は大掃除大会を開いたりして忙しくしてましたし疲れが出たのですよ。無理はいけません」
「...う。じゃぁ、お言葉に甘えて...」
まるで母親に注意を受けたかのような複雑な気持ちになりながら、名無しは居間へと移動した。
(...ふぅ。確かに疲れてたかもなー)
もぞもぞと炬燵に入りながら小さく息を吐き出す。
師走とはよくいったものだ。
(むむ...。小豆が余ったら奴の誕生日ケーキは小豆まみれにしてやる...)
抹茶を混ぜても良いかもしれない、などと思考を巡らせているうちに。
彼女の意識はゆるりと溶けていった。
...*...*...*...
「あれ?名無しさん」
所用で出ていた浦原が帰宅すると居間の炬燵で眠りこけている名無しを発見した。
突っ伏してすやすや眠る彼女の顔はあどけなく幼い。
普段の強気な様子はどこへやら。
思わずにやけてしまうが、このままでは風邪をひいてしまう。
(...えと、毛布はどこでしたかねぇ)
とりあえず自分の着ていた羽織を、と彼女の細い肩へ掛けようと近づいていくと...。
「...ん。...うらはら?」
「あ。すみません、起こしちゃいましたね」
ぼんやりした瞳で自分を見つめる名無しは羽織を掛けるために伸びてきた手をガシッと掴む。
「...手、冷たい」
「まぁ、外に出てましたからね」
なんだ?
寝ぼけてるのだろうか。
意外な行動に少し戸惑うところに名無しは続いてポツリとこぼす。
「おかえり、浦原...」
こぼれた言葉とやわらかな微笑みと声に。
掴まれた手から伝わる体温がじんわりと心に染みてくるようで。
何気ない言葉なのに。
これほど嬉しいとは。
「...はい。ただいまです、名無しさん」
「お汁粉...、出来てると...思う」
「えぇ。甘い匂いがしてますね」
きっと台所には用意されているはず。
外出するさいに彼女と鉄裁が準備していた。
今、鉄裁の姿なないが。
(気を遣ってくれましたかね...)
そっと心の中で感謝しつつ。
彼女の肩に羽織を掛けてやった。
次いで頭を優しく撫でる。
「起きたら一緒にお茶しましょうね」
呟いた言葉に彼女は返事はしなかったけれど。
閉じかけた瞳は優しく細められていた。
ほんわりとした幸せを感じながら浦原は愛しい人の寝顔を見つめたのだった。
...END...