この瞬間がすき
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「銭湯に行きたいっスねぇ」
そうポツリと漏らしたら、彼女は二つ返事でついてきてくれた。
いや家の風呂も落ち着くのだが、如何せん足が伸ばせない。
鉄裁のように体が大きければ尚更そうだろう。
ということでいつもの五人で銭湯に来たわけだ。
風呂から上がって休憩所で休んでいたら、風呂上がりの名無しとウルルが辺りを見回しながらやって来た。
「名無しサン、ウルル、ここっス」
こっちに気がつくと、少しだけ眉を顰める名無し。
少しだけ早歩きでこちらに向かって来ると、持っていた牛乳瓶を置いてボクの浴衣を掴んだ。
「もう、浦原さん。外なんですからもう少しキチンと着てください」
そう言って寝間着用の浴衣の襟を、これまた丁寧に直された。
「えぇー、暑いじゃないっスか」
「皆さん見てますから。ここ公共の場ですよ?ほらちゃんと着てください」
「ボクは気にしないっスけどね」
「…私が気にします」
恥ずかしそうに、ごにょごにょと言い淀む名無し。何この可愛い生き物。
そう言われたら大人しく言うことを聞くしかないじゃないっスか。
「牛乳買ったんス?」
「そーっす」
ウルルはコーヒー牛乳、名無しは牛乳を買っている。
ジン太にもコーヒー牛乳を渡すと、キレのいい音を立てて紙キャップを彼女は外した。
「ボクの分はないっスか?」
「身長、もう伸びないでしょう。浦原さんや鉄裁さんは」
そういう問題なのか。
(名無しサンも、もう伸びないと思いますけどね)
その言葉はぐっと飲み込む。
死神になる前から、毎朝牛乳を飲んでいるのは知っていた。
空座第一高校に通っていた時は、身体測定の前日は早く寝たり、身長に変化がなかった測定日の夕方は少しだけ落ち込んで帰ってきていた。
そんな昔の出来事でもないのに、妙に懐かしく感じる。…歳だろうか。
一気に牛乳の飲み干す様は、可愛らしいのに妙に男らしい。
白く細い喉が上下しているのが、何だか艶めかしく見えた。重症だろうか。
少しだけ、その白く柔らかい首筋に噛みつきたいと思ってしまった。
ここは外。我慢我慢…と、己の自制心に言い聞かせた。
この瞬間がすき#銭湯
「浦原さん、髪乾いてないじゃないですか」
「だってぇ。ドライヤー熱いんですもん」
もん、じゃない。
牛乳瓶を回収ボックスに戻し、余分に持って来ていたタオルを荷物から取り出した。
「失礼します」
一言断り、休憩所の椅子に座っている浦原の頭をタオルで包めば「わっ」と小さく声を上げられた。
さっきの浴衣の肌蹴た襟元といい、何だか今日はいつもより多く世話を焼いている気がする。
「店長、子供みてー」
「ジン太殿だって先程、ドライヤーで乾かして差し上げなければそのまま出るおつもりだったでしょう」
ぷぷっと笑いながらからかうジン太と、そっと咎める鉄裁。
雨はコーヒー牛乳をのんびり飲んでいた。
ふわふわと柔らかい、金色のくせっ毛。
いつもと違うシャンプーの匂いが鼻をくすぐった。
「名無しサン、拭くの上手いっスねぇ」
「そうです?子供の頃は祖母に拭いてもらう側だったので、よく分からないです」
耳の後ろも丁寧に拭けば、差し出されていた頭が私のお腹に柔らかく埋まる。
「浦原さん、近いですってば」
「へへ」
何笑ってるんだ、この大きな子供は。
人前ですよ、と注意しなければいけないのは分かっているが、少しだけ可愛いと思ってしまった自分もいて。
何だか惚れた弱みのようで悔しくて、ぐっと言葉を呑み込んだ。
「今度ボクが拭いてあげますね」
「…楽しみにしてます」
そう言ってタオルドライを終えれば、満足そうに照れ笑いしている浦原がいた。
あぁ、その笑顔は反則だと思う。
そうポツリと漏らしたら、彼女は二つ返事でついてきてくれた。
いや家の風呂も落ち着くのだが、如何せん足が伸ばせない。
鉄裁のように体が大きければ尚更そうだろう。
ということでいつもの五人で銭湯に来たわけだ。
風呂から上がって休憩所で休んでいたら、風呂上がりの名無しとウルルが辺りを見回しながらやって来た。
「名無しサン、ウルル、ここっス」
こっちに気がつくと、少しだけ眉を顰める名無し。
少しだけ早歩きでこちらに向かって来ると、持っていた牛乳瓶を置いてボクの浴衣を掴んだ。
「もう、浦原さん。外なんですからもう少しキチンと着てください」
そう言って寝間着用の浴衣の襟を、これまた丁寧に直された。
「えぇー、暑いじゃないっスか」
「皆さん見てますから。ここ公共の場ですよ?ほらちゃんと着てください」
「ボクは気にしないっスけどね」
「…私が気にします」
恥ずかしそうに、ごにょごにょと言い淀む名無し。何この可愛い生き物。
そう言われたら大人しく言うことを聞くしかないじゃないっスか。
「牛乳買ったんス?」
「そーっす」
ウルルはコーヒー牛乳、名無しは牛乳を買っている。
ジン太にもコーヒー牛乳を渡すと、キレのいい音を立てて紙キャップを彼女は外した。
「ボクの分はないっスか?」
「身長、もう伸びないでしょう。浦原さんや鉄裁さんは」
そういう問題なのか。
(名無しサンも、もう伸びないと思いますけどね)
その言葉はぐっと飲み込む。
死神になる前から、毎朝牛乳を飲んでいるのは知っていた。
空座第一高校に通っていた時は、身体測定の前日は早く寝たり、身長に変化がなかった測定日の夕方は少しだけ落ち込んで帰ってきていた。
そんな昔の出来事でもないのに、妙に懐かしく感じる。…歳だろうか。
一気に牛乳の飲み干す様は、可愛らしいのに妙に男らしい。
白く細い喉が上下しているのが、何だか艶めかしく見えた。重症だろうか。
少しだけ、その白く柔らかい首筋に噛みつきたいと思ってしまった。
ここは外。我慢我慢…と、己の自制心に言い聞かせた。
この瞬間がすき#銭湯
「浦原さん、髪乾いてないじゃないですか」
「だってぇ。ドライヤー熱いんですもん」
もん、じゃない。
牛乳瓶を回収ボックスに戻し、余分に持って来ていたタオルを荷物から取り出した。
「失礼します」
一言断り、休憩所の椅子に座っている浦原の頭をタオルで包めば「わっ」と小さく声を上げられた。
さっきの浴衣の肌蹴た襟元といい、何だか今日はいつもより多く世話を焼いている気がする。
「店長、子供みてー」
「ジン太殿だって先程、ドライヤーで乾かして差し上げなければそのまま出るおつもりだったでしょう」
ぷぷっと笑いながらからかうジン太と、そっと咎める鉄裁。
雨はコーヒー牛乳をのんびり飲んでいた。
ふわふわと柔らかい、金色のくせっ毛。
いつもと違うシャンプーの匂いが鼻をくすぐった。
「名無しサン、拭くの上手いっスねぇ」
「そうです?子供の頃は祖母に拭いてもらう側だったので、よく分からないです」
耳の後ろも丁寧に拭けば、差し出されていた頭が私のお腹に柔らかく埋まる。
「浦原さん、近いですってば」
「へへ」
何笑ってるんだ、この大きな子供は。
人前ですよ、と注意しなければいけないのは分かっているが、少しだけ可愛いと思ってしまった自分もいて。
何だか惚れた弱みのようで悔しくて、ぐっと言葉を呑み込んだ。
「今度ボクが拭いてあげますね」
「…楽しみにしてます」
そう言ってタオルドライを終えれば、満足そうに照れ笑いしている浦原がいた。
あぁ、その笑顔は反則だと思う。
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