treasure
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ー強く強く願う事がある。
大切な人の傍に居たい。
傷つかせたくない。
叶うならば命尽きるまで共に在りたいと。夢みたいな事を思って止まない。
何度も何回も。
それこそ一万回を超える程に。
...強く焦がれて。
ーズガンッ!!
大地を穿つ音が高く響き空気が振動する。それは霊圧の類ではなく拳から放たれたもの。
堅く岩で覆われた地面に鉄拳を見舞ったのは名無しである。
彼女は普通の人間より運動神経が良くオマケに並外れた体力と筋力を持つゆえにコントロールするために時たまこうして鍛錬に励んでいるのだった。
(...よし。次は)
す、と懐から取り出したのは華奢な造りの扇子。
白に一羽の紅い蝶を舞わせたデザインで持ち手には鈴の付いた根付けがくっついていて、チリンと涼やかな音色を奏でる。
それを舞うように振り上げて、意識を集中させていく。
深呼吸を繰り返した後に静かに瞳を開く。
「......っ!」
小さく何かを呟いて名無しは扇子で何かを斬り裂くかのようにピシッ!と目の前に向けて振り下ろした。
ービシッ!!
目の前、少し離れた辺りにそびえ立つ巨大な岩にヒビが生じ、卵の殻が割れるようにヒビが広がっていき、最後には粉々に砕け散った。
「ふぅ...」
扇子を右手に握ったまま名無しは膝を崩し地面に座り込んだ。
細い肩は上下に揺れ、呼吸は荒い。
これだけで息が乱れていてはまだまだだなと苦笑する。
(こんなんじゃダメだ。もっと、鍛えないと...)
ーあの人の傍に立てない。
ギュ、と膝の上で拳を握り締めた時、背後に気配がした。
それはよく知った人物のものだった。
「相変わらず精が出ますねぇ」
「浦原...」
作務衣に帽子に下駄。
お前こそ相変わらず胡散臭いわ、と呟いて立ち上がる、が...。
「...あっ!」
グラリと重心がずれて体が倒れそうになったが、堅いゴツゴツした地面に触れる事なく名無しの体は浦原によって受け止められた。
「ほら。あんな大技をぶちかました後で立とうとするからっスよ」
ふわりと抱きしめられてそう囁かれる。耳朶に優しくどこか甘い声音が響いて別な意味で崩れそうになるけれどもなんとか耐えた。
「...悪い。一人で歩けるから離...」
離せと言う前に名無しの体は宙に浮いた。驚く間もなく名無しは浦原の両腕にすっぽりと収まっていた。
お姫様抱っこ状態である、と気づいたのはしばらくしてからだ。
案の定、名無しは耳までぼひゅ!と音が出るぐらいに真っ赤に茹で上がる。
「無理しちゃいけませんよ。僕が責任もってお部屋まで運んで差し上げますから」
「ちょ、ちょっと待て!どこに運ぶって言ったコラッ!!」
「いやぁ。だって、今の名無しさんの姿を見ていたら男として我慢が出来ないといいますか...」
そう。
今の彼女の服装は全身のラインがはっきりと誇張されたスタイルなのだ。
ライダースーツのようなピッタリ合うデザインである。
「こ、これは!れっきとしたトレーニングスーツで...!!」
「わかってますよ。でも、名無しさん無意識過ぎるっスよ。
無防備に胸元から扇子を取り出した時は目のやり場に困りましたよー」
「...て。しっかり見てんじゃねぇか!!」
この助平野郎が!と一発食らわせてやりたいが体力がないのは事実。
冗談にしても言っていいのと悪いのがあるだろうに、と一人しかめっ面である。
「...僕だって貴女の事を想っているんですからね」
それこそ一万回を超えるくらいに何度も心中で祈っている。
無茶をしないように。
怪我をしないように...。
「あ?なんか言ったか」
「いいえ。さ、戻りましょ。鉄裁さんがお茶の用意をしてくれていますから。それまでは僕の腕の中でゆっくり...ぶへっ」
「やかましい。さっさと歩く!」
「...はぁーい」
グウの形の拳で頬をグイッと押されふてくされつつ歩きながら。
浦原はしっかりと名無しを抱えていく。落とさないようにしっかりと。
『...僕だって貴女の事を想っているんですからね』
(..あたしだって。お前を誰より想っているんだからな)
先ほど浦原がポツリと呟いた言葉はちゃんと聞こえていた。
自分を誰より気づかい、想ってくれている事は知っている。
(だから。願ってしまうんだ)
傍に居たい。
力になりたい、守りたいと。
何度も何百回も。
一万回を超える程に。
あなたを想う度に...。
大切な人の傍に居たい。
傷つかせたくない。
叶うならば命尽きるまで共に在りたいと。夢みたいな事を思って止まない。
何度も何回も。
それこそ一万回を超える程に。
...強く焦がれて。
ーズガンッ!!
大地を穿つ音が高く響き空気が振動する。それは霊圧の類ではなく拳から放たれたもの。
堅く岩で覆われた地面に鉄拳を見舞ったのは名無しである。
彼女は普通の人間より運動神経が良くオマケに並外れた体力と筋力を持つゆえにコントロールするために時たまこうして鍛錬に励んでいるのだった。
(...よし。次は)
す、と懐から取り出したのは華奢な造りの扇子。
白に一羽の紅い蝶を舞わせたデザインで持ち手には鈴の付いた根付けがくっついていて、チリンと涼やかな音色を奏でる。
それを舞うように振り上げて、意識を集中させていく。
深呼吸を繰り返した後に静かに瞳を開く。
「......っ!」
小さく何かを呟いて名無しは扇子で何かを斬り裂くかのようにピシッ!と目の前に向けて振り下ろした。
ービシッ!!
目の前、少し離れた辺りにそびえ立つ巨大な岩にヒビが生じ、卵の殻が割れるようにヒビが広がっていき、最後には粉々に砕け散った。
「ふぅ...」
扇子を右手に握ったまま名無しは膝を崩し地面に座り込んだ。
細い肩は上下に揺れ、呼吸は荒い。
これだけで息が乱れていてはまだまだだなと苦笑する。
(こんなんじゃダメだ。もっと、鍛えないと...)
ーあの人の傍に立てない。
ギュ、と膝の上で拳を握り締めた時、背後に気配がした。
それはよく知った人物のものだった。
「相変わらず精が出ますねぇ」
「浦原...」
作務衣に帽子に下駄。
お前こそ相変わらず胡散臭いわ、と呟いて立ち上がる、が...。
「...あっ!」
グラリと重心がずれて体が倒れそうになったが、堅いゴツゴツした地面に触れる事なく名無しの体は浦原によって受け止められた。
「ほら。あんな大技をぶちかました後で立とうとするからっスよ」
ふわりと抱きしめられてそう囁かれる。耳朶に優しくどこか甘い声音が響いて別な意味で崩れそうになるけれどもなんとか耐えた。
「...悪い。一人で歩けるから離...」
離せと言う前に名無しの体は宙に浮いた。驚く間もなく名無しは浦原の両腕にすっぽりと収まっていた。
お姫様抱っこ状態である、と気づいたのはしばらくしてからだ。
案の定、名無しは耳までぼひゅ!と音が出るぐらいに真っ赤に茹で上がる。
「無理しちゃいけませんよ。僕が責任もってお部屋まで運んで差し上げますから」
「ちょ、ちょっと待て!どこに運ぶって言ったコラッ!!」
「いやぁ。だって、今の名無しさんの姿を見ていたら男として我慢が出来ないといいますか...」
そう。
今の彼女の服装は全身のラインがはっきりと誇張されたスタイルなのだ。
ライダースーツのようなピッタリ合うデザインである。
「こ、これは!れっきとしたトレーニングスーツで...!!」
「わかってますよ。でも、名無しさん無意識過ぎるっスよ。
無防備に胸元から扇子を取り出した時は目のやり場に困りましたよー」
「...て。しっかり見てんじゃねぇか!!」
この助平野郎が!と一発食らわせてやりたいが体力がないのは事実。
冗談にしても言っていいのと悪いのがあるだろうに、と一人しかめっ面である。
「...僕だって貴女の事を想っているんですからね」
それこそ一万回を超えるくらいに何度も心中で祈っている。
無茶をしないように。
怪我をしないように...。
「あ?なんか言ったか」
「いいえ。さ、戻りましょ。鉄裁さんがお茶の用意をしてくれていますから。それまでは僕の腕の中でゆっくり...ぶへっ」
「やかましい。さっさと歩く!」
「...はぁーい」
グウの形の拳で頬をグイッと押されふてくされつつ歩きながら。
浦原はしっかりと名無しを抱えていく。落とさないようにしっかりと。
『...僕だって貴女の事を想っているんですからね』
(..あたしだって。お前を誰より想っているんだからな)
先ほど浦原がポツリと呟いた言葉はちゃんと聞こえていた。
自分を誰より気づかい、想ってくれている事は知っている。
(だから。願ってしまうんだ)
傍に居たい。
力になりたい、守りたいと。
何度も何百回も。
一万回を超える程に。
あなたを想う度に...。