この瞬間がすき
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彼は、コンパスが長い。
時々、冗談めかして『脚が長いっスからぁ』と自称するが、確かにその通りだと思う。
カラン・コロン、と下駄の音は、私の歩調より数拍遅く鳴り響く。
そもそも身長にかなり差があるのだ、足の長さが違って当然だ。
それでも、私に気をつかってゆっくり歩いてくれる彼の優しさに気づいた時は、なんとも言い表せない気持ちになった。
少し、ゆっくり歩いてみる。
そうすれば彼は半歩から一歩、二歩と少し前へ出る。
「浦原さん、」
名前を呼べば羽織を揺らして振り返る彼。
見返り美人・という言葉が男性にも適用できるのか分からないけれど、私は彼の振り返る姿が好きだった。
「ん、お手をどーぞ。」
ふわりと笑って差し出される手。
少しカサカサした、大きな手も大好きだ。
小走りに近づいて、横に並び、指を絡めてぎゅっと握る。
彼がこうして手を差し伸べてくれることを分かっていて、時々わざとゆっくり歩いてみる。
確信犯だと我ながら思う。
でもどうしてもやめられない。悪いくせだ。
「浦原さん、歩くの早いですよー」
「名無しサンがのんびりなんっスよぉ」
お互いそう言って、顔を見合わせて笑う。
もしかしたら、時々ゆっくり歩いていることに、彼は気がついているのかもしれない。
けれど、
(もう少しだけ、気づかないフリをしていて欲しいなぁ)
この小さな楽しみは、きっと私だけのもの。
この瞬間がすき#歩幅
彼女は歩幅が小さい。
『どうせ浦原さんに比べたらチビですよー』と拗ねたように口先を尖らせるが、逆にボク程身長があったらすっぽり抱きしめられない。
トン・トンとスニーカーがアスファルトを叩く音が、ボクの歩調より数拍早く鳴り響く。
そもそも身長にかなり差があるのだ、足の長さが違って当然だ。
それでも、ボクの歩調に一生懸命合わせようとする姿が、なんとも愛らしく、見る度に抱きしめたくなる衝動に駆られた。
少し、歩調を早めてみる。
そうすれば彼女は半歩から一歩、二歩と少し後ろへ離れていく。
「浦原さん、」
名前を呼ばれ振り返れば、なぜか少し悪戯っぽく笑っている名無し。
彼女の笑顔はたまらなく好きだ。拗ねてる顔も、怒ってる顔も、泣き顔だって全部全部好きだけど、目元を蕩けさせたような柔らかい笑顔は格別だ。
「ん、お手をどーぞ。」
手を差し出せば、花が咲くような表情で駆け寄ってくる。
昔に比べて豆が出来てしまったけれど、ボクはこの頑張り屋さんな小さな手が好きだ。
小走りに近づいて、横に並び、指を絡めてぎゅっと握ってくる。
こうして手を差し伸べれば、彼女が子犬のように駆けてくることを分かっていて、時々わざと少し歩いてみる。
確信犯だと我ながら思う。
でもどうしてもやめられない。悪いくせだ。
「浦原さん、歩くの早いですよー」
「名無しサンがのんびりなんっスよぉ」
お互いそう言って、顔を見合わせて笑う。
もしかしたら、時々早歩きしていることに、彼女は気がついているのかもしれない。
けれど、
(もう少しだけ、気づかないフリをしていて欲しいっス)
この小さな楽しみは、きっとボクだけのもの。
時々、冗談めかして『脚が長いっスからぁ』と自称するが、確かにその通りだと思う。
カラン・コロン、と下駄の音は、私の歩調より数拍遅く鳴り響く。
そもそも身長にかなり差があるのだ、足の長さが違って当然だ。
それでも、私に気をつかってゆっくり歩いてくれる彼の優しさに気づいた時は、なんとも言い表せない気持ちになった。
少し、ゆっくり歩いてみる。
そうすれば彼は半歩から一歩、二歩と少し前へ出る。
「浦原さん、」
名前を呼べば羽織を揺らして振り返る彼。
見返り美人・という言葉が男性にも適用できるのか分からないけれど、私は彼の振り返る姿が好きだった。
「ん、お手をどーぞ。」
ふわりと笑って差し出される手。
少しカサカサした、大きな手も大好きだ。
小走りに近づいて、横に並び、指を絡めてぎゅっと握る。
彼がこうして手を差し伸べてくれることを分かっていて、時々わざとゆっくり歩いてみる。
確信犯だと我ながら思う。
でもどうしてもやめられない。悪いくせだ。
「浦原さん、歩くの早いですよー」
「名無しサンがのんびりなんっスよぉ」
お互いそう言って、顔を見合わせて笑う。
もしかしたら、時々ゆっくり歩いていることに、彼は気がついているのかもしれない。
けれど、
(もう少しだけ、気づかないフリをしていて欲しいなぁ)
この小さな楽しみは、きっと私だけのもの。
この瞬間がすき#歩幅
彼女は歩幅が小さい。
『どうせ浦原さんに比べたらチビですよー』と拗ねたように口先を尖らせるが、逆にボク程身長があったらすっぽり抱きしめられない。
トン・トンとスニーカーがアスファルトを叩く音が、ボクの歩調より数拍早く鳴り響く。
そもそも身長にかなり差があるのだ、足の長さが違って当然だ。
それでも、ボクの歩調に一生懸命合わせようとする姿が、なんとも愛らしく、見る度に抱きしめたくなる衝動に駆られた。
少し、歩調を早めてみる。
そうすれば彼女は半歩から一歩、二歩と少し後ろへ離れていく。
「浦原さん、」
名前を呼ばれ振り返れば、なぜか少し悪戯っぽく笑っている名無し。
彼女の笑顔はたまらなく好きだ。拗ねてる顔も、怒ってる顔も、泣き顔だって全部全部好きだけど、目元を蕩けさせたような柔らかい笑顔は格別だ。
「ん、お手をどーぞ。」
手を差し出せば、花が咲くような表情で駆け寄ってくる。
昔に比べて豆が出来てしまったけれど、ボクはこの頑張り屋さんな小さな手が好きだ。
小走りに近づいて、横に並び、指を絡めてぎゅっと握ってくる。
こうして手を差し伸べれば、彼女が子犬のように駆けてくることを分かっていて、時々わざと少し歩いてみる。
確信犯だと我ながら思う。
でもどうしてもやめられない。悪いくせだ。
「浦原さん、歩くの早いですよー」
「名無しサンがのんびりなんっスよぉ」
お互いそう言って、顔を見合わせて笑う。
もしかしたら、時々早歩きしていることに、彼女は気がついているのかもしれない。
けれど、
(もう少しだけ、気づかないフリをしていて欲しいっス)
この小さな楽しみは、きっとボクだけのもの。
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