anemone days
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臆せば、その刃は己を穿つ。
anemone days#07
「名無しサン、ほらボクからまだ一本も取れてないっスよ」
「剣圧で地面割るのがおかしいんですよ!」
瞬歩と空間移動で斬撃はかわしている。
獲物を追う狩人のように、ジワジワと追い詰めてくる剣はいやらしいことこの上なかった。
「何言ってるんスか。こんなの死神だと常識っスよ」
「それを避けるのは当たり前、反撃してみろ、ってことですか…破道の三十三『蒼火墜』!」
鬼道で蒼い炎を放つも、呆気なく浦原の薙いだ刃で打ち消される。
中級鬼道と聞いていたのにまるで蜘蛛の巣を取り払うように簡単に崩された事実に、頭が痛くなりそうだった。
っていうか元隊長なんだから強いのは当たり前なんだ。これじゃあ威嚇にもならない。
「詠唱破棄までできるようになったんスか、いやぁ、感心感心」
一気に間合いを詰めて、刀が振り下ろされた。
全速力の瞬歩で躱すも着地に失敗してしまい、体勢が崩れる。
「ダメっスよ、ほらすぐ次の一手」
「っう、わ!」
身体を半身躱せば、刀の切っ先が頬を掠める。
髪の毛先がはらりと宙を舞った。
「喜助のヤツ、本気じゃのう」
「手を抜くつもりはないそうですぞ。店長なりの愛情ですな」
猫用ミルクを舐めながら、黒猫になった夜一が呟く。
隣にいる鉄裁は、ちゃぶ台をわざわざ持ってきて呑気に緑茶を啜っていた。
「おぬしも入れ込んでいるのによく言う。
そもそも死神でもない人間の名無しに、鬼道を教えるなど聞いておらんぞ」
「名無し殿がどうしてもとおっしゃるので、皆が寝静まった後に、少しだけ」
「…あれで少し、なのか?」
「雷鳴の馬車、糸車の間隙!光もて此を六に別つ…『六杖光牢』!」
六つの帯状の光が浦原の胴を穿つ。
痛みもないければ出血もない縛道。
一瞬、動きを止めるだけでいい。
「霊圧を込めてない、こんな鬼道じゃボクを捕まえることなんて、」
音もなく、彼女はいつの間にか頭上にいた。空間に対する『命令』もなく。
高まる霊圧。
世界がスローモーションのように映った。
そう。これが、本命。
「『切り裂、」
名無しの言葉を遮るように、手首の鎖が甲高い音を立てて千切れた。
鎖の節々が粉砕されたように、銀色の粉になって宙を舞う。
霊力制御装置が、壊れた。
「あ、」
途端に霊圧が跳ね上がるのが、この場にいた全員が嫌でも分かった。
瞬時に確信する。――失敗した、と。
(ダメ、その人を、)
浦原の帽子を落とすはずだった、黒く細い空間の歪み。
それは大きく広がり、名無し自身を飲み込んだ。
浦原を捕らえていた鬼道が、途端に消える。
答えは簡単。術者が、消えたからだ。
「名無しサン!」
小さくなっていく黒い穴に手を伸ばせば、彼女の手を掴んだ感覚。
けれどこちらへ引き戻すどころか、逆に勢いよく呑み込まれる。
マズい、と思った時は全てがもう遅かった。
「店長!」
「名無し!!」
地面に乾いた音を立てて落ちる、彼の斬魄刀。
僅かに残った鎖の欠片。
二人の霊圧が、この場から完全に消失した。
anemone days#07
「名無しサン、ほらボクからまだ一本も取れてないっスよ」
「剣圧で地面割るのがおかしいんですよ!」
瞬歩と空間移動で斬撃はかわしている。
獲物を追う狩人のように、ジワジワと追い詰めてくる剣はいやらしいことこの上なかった。
「何言ってるんスか。こんなの死神だと常識っスよ」
「それを避けるのは当たり前、反撃してみろ、ってことですか…破道の三十三『蒼火墜』!」
鬼道で蒼い炎を放つも、呆気なく浦原の薙いだ刃で打ち消される。
中級鬼道と聞いていたのにまるで蜘蛛の巣を取り払うように簡単に崩された事実に、頭が痛くなりそうだった。
っていうか元隊長なんだから強いのは当たり前なんだ。これじゃあ威嚇にもならない。
「詠唱破棄までできるようになったんスか、いやぁ、感心感心」
一気に間合いを詰めて、刀が振り下ろされた。
全速力の瞬歩で躱すも着地に失敗してしまい、体勢が崩れる。
「ダメっスよ、ほらすぐ次の一手」
「っう、わ!」
身体を半身躱せば、刀の切っ先が頬を掠める。
髪の毛先がはらりと宙を舞った。
「喜助のヤツ、本気じゃのう」
「手を抜くつもりはないそうですぞ。店長なりの愛情ですな」
猫用ミルクを舐めながら、黒猫になった夜一が呟く。
隣にいる鉄裁は、ちゃぶ台をわざわざ持ってきて呑気に緑茶を啜っていた。
「おぬしも入れ込んでいるのによく言う。
そもそも死神でもない人間の名無しに、鬼道を教えるなど聞いておらんぞ」
「名無し殿がどうしてもとおっしゃるので、皆が寝静まった後に、少しだけ」
「…あれで少し、なのか?」
「雷鳴の馬車、糸車の間隙!光もて此を六に別つ…『六杖光牢』!」
六つの帯状の光が浦原の胴を穿つ。
痛みもないければ出血もない縛道。
一瞬、動きを止めるだけでいい。
「霊圧を込めてない、こんな鬼道じゃボクを捕まえることなんて、」
音もなく、彼女はいつの間にか頭上にいた。空間に対する『命令』もなく。
高まる霊圧。
世界がスローモーションのように映った。
そう。これが、本命。
「『切り裂、」
名無しの言葉を遮るように、手首の鎖が甲高い音を立てて千切れた。
鎖の節々が粉砕されたように、銀色の粉になって宙を舞う。
霊力制御装置が、壊れた。
「あ、」
途端に霊圧が跳ね上がるのが、この場にいた全員が嫌でも分かった。
瞬時に確信する。――失敗した、と。
(ダメ、その人を、)
浦原の帽子を落とすはずだった、黒く細い空間の歪み。
それは大きく広がり、名無し自身を飲み込んだ。
浦原を捕らえていた鬼道が、途端に消える。
答えは簡単。術者が、消えたからだ。
「名無しサン!」
小さくなっていく黒い穴に手を伸ばせば、彼女の手を掴んだ感覚。
けれどこちらへ引き戻すどころか、逆に勢いよく呑み込まれる。
マズい、と思った時は全てがもう遅かった。
「店長!」
「名無し!!」
地面に乾いた音を立てて落ちる、彼の斬魄刀。
僅かに残った鎖の欠片。
二人の霊圧が、この場から完全に消失した。