anemone days
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「名無し、どうしたのだその怪我は!?」
「階段から転んだ。」
「嘘つけ。お前、あの下駄帽子に虐待されてんじゃ…」
朝の登校時間。
一護とルキアに会った途端、食いつくようにルキアから問い詰められた。
『下駄帽子に虐待』
まぁ間違いじゃない。近いものはあるかもしれない。
「いや、筋トレしていたら、階段から落ちたの」
適当な言い訳をしながら、この週末の地獄を思い出す。
…この怪我は、主に自分の不器用っぷりが原因だが。
anemone days#05
「夜一サン、進捗どうです?」
「瞬歩は目覚しい成長じゃの。…しっかしまぁ、霊圧のコントロールが下手くそじゃのぉ」
「まぁ身体の、器としての成長と霊力が伴ってないせいでしょうね。仕方ないっスよ」
「あっ、やばっ、い、あぁぁぁあ!!!」
ドォン!!
「瞬歩の速度で岩に激突したら普通の人間は死にますけどね」
「おぬしの義骸の丈夫さと、反射的に霊圧を高めておるから軽傷で済んでおるのぅ。ある意味才能じゃな」
見事な土煙が上がるのを呑気に眺めながら、夜一が呟く。
「大丈夫っスか?名無しサン」
「…い」
「い?」
「もう一回!」
土埃を払い、スタート地点へ戻る名無し。
擦り傷と打撲だらけなのに、黒い双眸は諦めの色は一切見えなかった。
浦原が思っていた以上に、彼女はタフなのかもしれない。
***
7日目。
瞬歩で自損事故をすることはなくなり、やっとコントロールができるようになってきた。
ようやく、最終試験だ。
「儂の髪紐を取ったら合格じゃ。手段は問わんぞ」
「はい!」
準備運動の屈伸をしている名無しが元気のいい返事を返す。
夜一はあぁいっているけど、それは少し無理難題があるのでは、と浦原は思った。
彼女の異名は『瞬神』。とある貴族の少年をからかっていたのを、遠い昔のように思い出す。
「ゆくぞ」
瞬歩を使った夜一は、目にも止まらぬ速さでその場から消えた。
恐らく、一般の死神では姿を捉えることすら困難だろう。
さて、名無しはどう出る。
「空間の把握、空間の把握…」
ブツブツと自分に言い聞かせるように呟いている。
しかし、言葉にしているだけではなかった。彼女の目は確実に夜一の姿を追えている。
見えているというのか。あの速さで。
「そこだ!」
最大速度の瞬歩で、夜一に掴みかかる名無し。
しかしその指先は夜一の髪を掠めるだけに終わった。
「惜しいのぅ、名無し!」
「追いつかないのは分かってましたよ!…っこの、『開け!』」
一瞬大きく口を開く、空間の狭間。
その中へ飛び込むように、瞬歩の速さを落とさず身体を滑り込ませた名無し。
霊圧が、一瞬完全に消えた。
「よるっ、」
浦原が気がついて、夜一の名前を呼ぶより速かった。
夜一の頭上から現れたのは、名無しの手。
そこから瞬歩の速度を乗せたまま、
地面へ 落下した。
(空間を開いて、夜一サンの頭上から現れるなんて)
無茶苦茶だ。
だからコントロールできる瞬歩の速度ではなく、最初からコントロールできない最高速度で突っ込んで行ったのか。
チャンスは一度きり。だからこそ、慎重にタイミングを見計らった上で。
「…ぐ、ぅぅぅ、頭が割れるかと思った…」
顔面から地面に突っ込んだのだろう。
彼女の額から鮮血がトロリと滲み出る。
髪がハラリと解けた夜一が、あまりの無謀さに苦笑いを零す。
夜一の白い髪紐は、しっかりと名無しの手に握りしめられていた。
「合格じゃ。…しっかし…その速度での瞬歩は実践では使えんぞ、名無し。
上から降ってくるなどと、隕石かおぬしは」
「分かってますよ、だから一発勝負なんじゃないですか…」
「捨て身っスか。そんなんじゃ命いくつあっても足りませんよ」
そうだ。浦原は重要なことをすっかり失念していた。
彼女は手を抜くことを知らず、常に全力で。少しだけ、危なっかしくて。
ほんの少し。…本当に少しだけ、修行をさせ始めたことが正しかったのか、後悔してしまった。
「何言っているんですか。
だから捨て身で頑張るんですよ。…今頑張らなくていつ頑張るんですか」
無造作に手の甲で額から滲む血を拭う。
見上げてきた双眸は、本気の目だった。
本当に、藍染に一矢報いるつもりなのだろう、彼女は。
「浦原さん達が悔しい思いをして、尸魂界へ手が出せないのなら。
…私なら出来るって言うんだったら、何だってしてやりますよ」
「階段から転んだ。」
「嘘つけ。お前、あの下駄帽子に虐待されてんじゃ…」
朝の登校時間。
一護とルキアに会った途端、食いつくようにルキアから問い詰められた。
『下駄帽子に虐待』
まぁ間違いじゃない。近いものはあるかもしれない。
「いや、筋トレしていたら、階段から落ちたの」
適当な言い訳をしながら、この週末の地獄を思い出す。
…この怪我は、主に自分の不器用っぷりが原因だが。
anemone days#05
「夜一サン、進捗どうです?」
「瞬歩は目覚しい成長じゃの。…しっかしまぁ、霊圧のコントロールが下手くそじゃのぉ」
「まぁ身体の、器としての成長と霊力が伴ってないせいでしょうね。仕方ないっスよ」
「あっ、やばっ、い、あぁぁぁあ!!!」
ドォン!!
「瞬歩の速度で岩に激突したら普通の人間は死にますけどね」
「おぬしの義骸の丈夫さと、反射的に霊圧を高めておるから軽傷で済んでおるのぅ。ある意味才能じゃな」
見事な土煙が上がるのを呑気に眺めながら、夜一が呟く。
「大丈夫っスか?名無しサン」
「…い」
「い?」
「もう一回!」
土埃を払い、スタート地点へ戻る名無し。
擦り傷と打撲だらけなのに、黒い双眸は諦めの色は一切見えなかった。
浦原が思っていた以上に、彼女はタフなのかもしれない。
***
7日目。
瞬歩で自損事故をすることはなくなり、やっとコントロールができるようになってきた。
ようやく、最終試験だ。
「儂の髪紐を取ったら合格じゃ。手段は問わんぞ」
「はい!」
準備運動の屈伸をしている名無しが元気のいい返事を返す。
夜一はあぁいっているけど、それは少し無理難題があるのでは、と浦原は思った。
彼女の異名は『瞬神』。とある貴族の少年をからかっていたのを、遠い昔のように思い出す。
「ゆくぞ」
瞬歩を使った夜一は、目にも止まらぬ速さでその場から消えた。
恐らく、一般の死神では姿を捉えることすら困難だろう。
さて、名無しはどう出る。
「空間の把握、空間の把握…」
ブツブツと自分に言い聞かせるように呟いている。
しかし、言葉にしているだけではなかった。彼女の目は確実に夜一の姿を追えている。
見えているというのか。あの速さで。
「そこだ!」
最大速度の瞬歩で、夜一に掴みかかる名無し。
しかしその指先は夜一の髪を掠めるだけに終わった。
「惜しいのぅ、名無し!」
「追いつかないのは分かってましたよ!…っこの、『開け!』」
一瞬大きく口を開く、空間の狭間。
その中へ飛び込むように、瞬歩の速さを落とさず身体を滑り込ませた名無し。
霊圧が、一瞬完全に消えた。
「よるっ、」
浦原が気がついて、夜一の名前を呼ぶより速かった。
夜一の頭上から現れたのは、名無しの手。
そこから瞬歩の速度を乗せたまま、
地面へ 落下した。
(空間を開いて、夜一サンの頭上から現れるなんて)
無茶苦茶だ。
だからコントロールできる瞬歩の速度ではなく、最初からコントロールできない最高速度で突っ込んで行ったのか。
チャンスは一度きり。だからこそ、慎重にタイミングを見計らった上で。
「…ぐ、ぅぅぅ、頭が割れるかと思った…」
顔面から地面に突っ込んだのだろう。
彼女の額から鮮血がトロリと滲み出る。
髪がハラリと解けた夜一が、あまりの無謀さに苦笑いを零す。
夜一の白い髪紐は、しっかりと名無しの手に握りしめられていた。
「合格じゃ。…しっかし…その速度での瞬歩は実践では使えんぞ、名無し。
上から降ってくるなどと、隕石かおぬしは」
「分かってますよ、だから一発勝負なんじゃないですか…」
「捨て身っスか。そんなんじゃ命いくつあっても足りませんよ」
そうだ。浦原は重要なことをすっかり失念していた。
彼女は手を抜くことを知らず、常に全力で。少しだけ、危なっかしくて。
ほんの少し。…本当に少しだけ、修行をさせ始めたことが正しかったのか、後悔してしまった。
「何言っているんですか。
だから捨て身で頑張るんですよ。…今頑張らなくていつ頑張るんですか」
無造作に手の甲で額から滲む血を拭う。
見上げてきた双眸は、本気の目だった。
本当に、藍染に一矢報いるつもりなのだろう、彼女は。
「浦原さん達が悔しい思いをして、尸魂界へ手が出せないのなら。
…私なら出来るって言うんだったら、何だってしてやりますよ」