anemone days
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花が、散る。
それは次の世代へ繋ぐ種をばら撒いて。
明日へ続く、希望の種を。
anemone days#46
到着した先は一番隊隊舎。
山本がいた場所。守ったきた場所だ。
瀞霊廷の景色が一望出来、目の前の景色が廃墟でなければ絶景だっただろう。
「うん、ここなら瀞霊廷の中心だし、大丈夫かな。」
くたびれた靴を脱ぎ捨てる。
ヒヤリとした足の裏の感触。
目の前の景色は滅却師の街を剥がされ、元の瀞霊廷の姿だった。見るも無惨な廃墟ではあったが。
未だに小刻みに揺れる地震は続いている。
時々建物が崩れる音が、遠くから聞こえてきた。
しかし恐怖は、ない。
何も諦めるつもりはないからだ。
トントンと右足の踵で軽い音を打ち鳴らす。
「出ておいで、一ツ目」
影から這い出る、霊王の右足。
空間の調和を司る異形の神。
もしかしたら彼と話をするのは、これで最後かもしれない。
『名無し、どうするつもりだ』
「空間を固定する。霊力全開にしたら半日くらいは持つでしょ」
『そうではない。諦める気がないと、』
「出任せじゃないよ。
………うっそぉ、浦原さんも、一ツ目も気づいてないの?」
心底意外そうに驚く名無し。
その反応に一ツ目はただただ、驚いた。
「私は人間よ?まさか忘れてるわけじゃないでしょうね。
――人間が死んだらその魂魄は…さーて、どこに向かうでしょうか?」
にっこり、と。
それはとても綺麗な満面の笑顔で名無しが問う。
答えは、単純だった。
「死は、終わりじゃない。あの人と共に歩むことが出来る、長い長い時間に変わるんだ。」
これを希望と言わず、何というのか。
『…その考えは、なかったな』
「でしょ!いやぁ、私賢くない?
尸魂界で会ったら浦原さんビックリするだろうなぁ。楽しみだな」
そう言う名無しの手は、僅かに震えている。
元々この世界の住人ではない彼女の魂魄が、尸魂界に送られる保証はどこにもない。
いつもそうだ。
心を奮い立たせ、何度でも立ち上がる。
不屈の精神とはまさにこの事だ。
その折れない心は、何にも勝る ひと振りの刃だ。
唯一の不安をかき消すように、パンッと両頬を叩く名無し。
「さぁ、一ツ目。私達に出来ることをしましょう。あなたの故郷であり、私の大好きな世界を護ろう。」
『そうだな。初めての共同作業だな』
「何それ、結婚式みたい」
クスクスと笑って、名無しが大きく息を吸う。
大きく右脚を踏み鳴らし、凛とした声が一番隊隊舎跡地に響き渡った。
「「『止まれ』」」
二人の声が、重なる。
瀞霊廷の揺れを止めるように、空間の至る所へ傀儡の如く糸が張り巡らされる。
それは触れることは叶わない。透き通った、白く、細い糸。
陽の光を浴びて繊細に輝くそれは、まるで満天に輝く星のようだった。朝露に濡れる、蜘蛛の糸のように。
空間の揺れが、止まった。
それと同時に、二つの霊圧が音もなく消える。
黒い蝶が、ひらりと空を舞った。
それは次の世代へ繋ぐ種をばら撒いて。
明日へ続く、希望の種を。
anemone days#46
到着した先は一番隊隊舎。
山本がいた場所。守ったきた場所だ。
瀞霊廷の景色が一望出来、目の前の景色が廃墟でなければ絶景だっただろう。
「うん、ここなら瀞霊廷の中心だし、大丈夫かな。」
くたびれた靴を脱ぎ捨てる。
ヒヤリとした足の裏の感触。
目の前の景色は滅却師の街を剥がされ、元の瀞霊廷の姿だった。見るも無惨な廃墟ではあったが。
未だに小刻みに揺れる地震は続いている。
時々建物が崩れる音が、遠くから聞こえてきた。
しかし恐怖は、ない。
何も諦めるつもりはないからだ。
トントンと右足の踵で軽い音を打ち鳴らす。
「出ておいで、一ツ目」
影から這い出る、霊王の右足。
空間の調和を司る異形の神。
もしかしたら彼と話をするのは、これで最後かもしれない。
『名無し、どうするつもりだ』
「空間を固定する。霊力全開にしたら半日くらいは持つでしょ」
『そうではない。諦める気がないと、』
「出任せじゃないよ。
………うっそぉ、浦原さんも、一ツ目も気づいてないの?」
心底意外そうに驚く名無し。
その反応に一ツ目はただただ、驚いた。
「私は人間よ?まさか忘れてるわけじゃないでしょうね。
――人間が死んだらその魂魄は…さーて、どこに向かうでしょうか?」
にっこり、と。
それはとても綺麗な満面の笑顔で名無しが問う。
答えは、単純だった。
「死は、終わりじゃない。あの人と共に歩むことが出来る、長い長い時間に変わるんだ。」
これを希望と言わず、何というのか。
『…その考えは、なかったな』
「でしょ!いやぁ、私賢くない?
尸魂界で会ったら浦原さんビックリするだろうなぁ。楽しみだな」
そう言う名無しの手は、僅かに震えている。
元々この世界の住人ではない彼女の魂魄が、尸魂界に送られる保証はどこにもない。
いつもそうだ。
心を奮い立たせ、何度でも立ち上がる。
不屈の精神とはまさにこの事だ。
その折れない心は、何にも勝る ひと振りの刃だ。
唯一の不安をかき消すように、パンッと両頬を叩く名無し。
「さぁ、一ツ目。私達に出来ることをしましょう。あなたの故郷であり、私の大好きな世界を護ろう。」
『そうだな。初めての共同作業だな』
「何それ、結婚式みたい」
クスクスと笑って、名無しが大きく息を吸う。
大きく右脚を踏み鳴らし、凛とした声が一番隊隊舎跡地に響き渡った。
「「『止まれ』」」
二人の声が、重なる。
瀞霊廷の揺れを止めるように、空間の至る所へ傀儡の如く糸が張り巡らされる。
それは触れることは叶わない。透き通った、白く、細い糸。
陽の光を浴びて繊細に輝くそれは、まるで満天に輝く星のようだった。朝露に濡れる、蜘蛛の糸のように。
空間の揺れが、止まった。
それと同時に、二つの霊圧が音もなく消える。
黒い蝶が、ひらりと空を舞った。
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