anemone days
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花びらが、また一枚落ちる。
anemone days#42
少しの仮眠から目を覚ますと、野営が設営されていた。
天蓋で覆われた空間は、さながらキャンプのテントだ。
「名無しサン、おはようございます」
「起きるのがおせーんだよ。寝坊助が」
なんだ、この状況。
浦原とグリムジョーが和やか(?)に話をしている。…いや、グリムジョーの態度はいつも通りだけど。
「浦原さん、傷は」
「全快っスよ。井上サンに感謝っスねぇ」
ほっと胸をなでおろす。本当に、よかった。
「そうそう名無しサン。グリムジョーさん、暫く一緒に行動して頂くんで」
「…はい?」
「契約だよ、期間限定のな。」
何を条件にしたのだろう。
どうせろくなものではない。聞かないことにしよう。
「さて。ちょっとグリムジョーさん外に出て貰いましょうか」
「何でだよ」
「彼女と話があるんっスよ」
浦原と、視線が絡む。
これはマズい。
「…ちっ。仕方ねーな」
そう言って天蓋を出ていくグリムジョー。今ほど浦原と二人になるのが嫌なことは無かった。
「名無しサン。体調最悪でしょ」
「………超元気です」
「頭痛っスか?」
完全にバレてる。
これは隠しても無駄だろう。
「…少し、寒気が。」
「でしょうね。顔色最悪っスよ」
「そんなにですか…。いや、なんかこう、頭痛いのもあるんですけど」
『現世と尸魂界の空間のバランスが揺れているようだ。あちらでかなりの死神が死んだな』
「一ツ目、」
名無しの右足の影から這い出るように、黒い異形の右足がボコリと音を立てて現れる。
それには名無しも驚いたようで、大きな黒い瞳をさらに丸くさせた。
「みたいっスね。しかし一ツ目サン、具現化って名無しサンの霊力をかなり食うんじゃ?」
『霊子を使えば何て事はない。余を誰だと心得ておる』
ギョロリとした眼球が浦原を見やる。
…本当に、彼は浦原の事が気に食わないらしい。
『話を戻すぞ。滅却師に手を焼いているようだからな。余が手を貸してやろう』
「…足なのに?」
『名無し、話の腰を折るでない』
思わず出た言葉に、呆れたように突っ込まれた。「ごめんごめん」と謝れば、一ツ目は呆れたようにため息をひとつついた。
『まず、滅却師の瀞霊廷への侵入経路だが。そもそも侵入ではない』
「どういう事っスか?」
『ヤツらの本拠地は、瀞霊廷の影の中だ。滅却師の戦う術は霊子の隷属。尸魂界ならばいとも簡単に力を蓄えることが出来る』
「虚数空間みたいなモンっスか」
『そうだ』
「それじゃあ、いくら警備を固めても、」
『無駄だ。光あるところには必ず影が出来る』
内側から崩すのは、さぞや容易かっただろう。
瀞霊廷での死者の数にも納得できる。
『そして、二つ目。卍解の略奪の件だ』
「それなんっスよね。グリムジョーさんの帰刃は奪われていなかった。むしろ彼によると、戦ってきた滅却師が、メダリオンを使ったところ自体見たことがなかったと言っていましたし」
『滅却師は虚に対して耐性がない。人間ならばただの怪我で済む攻撃すら、彼らにとって一撃すら致命傷だ』
その件に関しては、浦原には覚えがあった。
虚の攻撃を受けた滅却師の末路。
そして虚化した死神の特効薬の材料。
それは最悪の自体にはならなかったものの、魂魄の性質を変えてしまった。
「つまり破面の卍解たる帰刃は滅却師にとって毒。だから虚化している黒崎サンの卍解は奪われなかった」
「ってことは、平子さん達の卍解も奪えないってことですか?」
「恐らく。奪われた隊長達は全て『普通の死神』っスから」
それならば辻褄が合う。
しかし、名無しは小さく首を傾げた。
「…一ツ目、やけに詳しいですね」
『余は、元々滅却師だからな』
「へ、」
『浦原喜助は薄々勘づいていたな。気に食わぬ男だ』
浦原を見遣れば、困ったように笑うだけ。
「名無しサンの『空間の隷属』は、言い換えれば滅却師の霊子の隷属の更に上位に位置する能力っスから」
「死神が嫌いなのは、」
『余を霊王として封じ込み、力を削ぐために四肢を千切り、再び霊王の本体と交わらすことのないよう、四散させたのが死神だ。嫌わぬ道理はない』
そう言われれば、確かにそうだ。
酷い仕打ちが死神によって行われたのであれば、一ツ目が死神を恨むのも無理はない。
だからきっと、死神がいない世界へ逃げてきた。安息の地を求め、たった独りで。
「…でも、一ツ目。こんなこと言うのもなんだけど…死神側である浦原さんに手を貸して、よかったの?」
『事態は急を要する。空間が歪めばお前が苦しむ。余もそうだ』
「でも、」
『今の滅却師には何の思い入れもない。死神が行った蛮行は、結果的にお前と会う切っ掛けになった。それで、十分だ』
それを見た浦原は、小さく笑う。
本当に、この霊王の右足は彼女至上主義だ。
anemone days#42
少しの仮眠から目を覚ますと、野営が設営されていた。
天蓋で覆われた空間は、さながらキャンプのテントだ。
「名無しサン、おはようございます」
「起きるのがおせーんだよ。寝坊助が」
なんだ、この状況。
浦原とグリムジョーが和やか(?)に話をしている。…いや、グリムジョーの態度はいつも通りだけど。
「浦原さん、傷は」
「全快っスよ。井上サンに感謝っスねぇ」
ほっと胸をなでおろす。本当に、よかった。
「そうそう名無しサン。グリムジョーさん、暫く一緒に行動して頂くんで」
「…はい?」
「契約だよ、期間限定のな。」
何を条件にしたのだろう。
どうせろくなものではない。聞かないことにしよう。
「さて。ちょっとグリムジョーさん外に出て貰いましょうか」
「何でだよ」
「彼女と話があるんっスよ」
浦原と、視線が絡む。
これはマズい。
「…ちっ。仕方ねーな」
そう言って天蓋を出ていくグリムジョー。今ほど浦原と二人になるのが嫌なことは無かった。
「名無しサン。体調最悪でしょ」
「………超元気です」
「頭痛っスか?」
完全にバレてる。
これは隠しても無駄だろう。
「…少し、寒気が。」
「でしょうね。顔色最悪っスよ」
「そんなにですか…。いや、なんかこう、頭痛いのもあるんですけど」
『現世と尸魂界の空間のバランスが揺れているようだ。あちらでかなりの死神が死んだな』
「一ツ目、」
名無しの右足の影から這い出るように、黒い異形の右足がボコリと音を立てて現れる。
それには名無しも驚いたようで、大きな黒い瞳をさらに丸くさせた。
「みたいっスね。しかし一ツ目サン、具現化って名無しサンの霊力をかなり食うんじゃ?」
『霊子を使えば何て事はない。余を誰だと心得ておる』
ギョロリとした眼球が浦原を見やる。
…本当に、彼は浦原の事が気に食わないらしい。
『話を戻すぞ。滅却師に手を焼いているようだからな。余が手を貸してやろう』
「…足なのに?」
『名無し、話の腰を折るでない』
思わず出た言葉に、呆れたように突っ込まれた。「ごめんごめん」と謝れば、一ツ目は呆れたようにため息をひとつついた。
『まず、滅却師の瀞霊廷への侵入経路だが。そもそも侵入ではない』
「どういう事っスか?」
『ヤツらの本拠地は、瀞霊廷の影の中だ。滅却師の戦う術は霊子の隷属。尸魂界ならばいとも簡単に力を蓄えることが出来る』
「虚数空間みたいなモンっスか」
『そうだ』
「それじゃあ、いくら警備を固めても、」
『無駄だ。光あるところには必ず影が出来る』
内側から崩すのは、さぞや容易かっただろう。
瀞霊廷での死者の数にも納得できる。
『そして、二つ目。卍解の略奪の件だ』
「それなんっスよね。グリムジョーさんの帰刃は奪われていなかった。むしろ彼によると、戦ってきた滅却師が、メダリオンを使ったところ自体見たことがなかったと言っていましたし」
『滅却師は虚に対して耐性がない。人間ならばただの怪我で済む攻撃すら、彼らにとって一撃すら致命傷だ』
その件に関しては、浦原には覚えがあった。
虚の攻撃を受けた滅却師の末路。
そして虚化した死神の特効薬の材料。
それは最悪の自体にはならなかったものの、魂魄の性質を変えてしまった。
「つまり破面の卍解たる帰刃は滅却師にとって毒。だから虚化している黒崎サンの卍解は奪われなかった」
「ってことは、平子さん達の卍解も奪えないってことですか?」
「恐らく。奪われた隊長達は全て『普通の死神』っスから」
それならば辻褄が合う。
しかし、名無しは小さく首を傾げた。
「…一ツ目、やけに詳しいですね」
『余は、元々滅却師だからな』
「へ、」
『浦原喜助は薄々勘づいていたな。気に食わぬ男だ』
浦原を見遣れば、困ったように笑うだけ。
「名無しサンの『空間の隷属』は、言い換えれば滅却師の霊子の隷属の更に上位に位置する能力っスから」
「死神が嫌いなのは、」
『余を霊王として封じ込み、力を削ぐために四肢を千切り、再び霊王の本体と交わらすことのないよう、四散させたのが死神だ。嫌わぬ道理はない』
そう言われれば、確かにそうだ。
酷い仕打ちが死神によって行われたのであれば、一ツ目が死神を恨むのも無理はない。
だからきっと、死神がいない世界へ逃げてきた。安息の地を求め、たった独りで。
「…でも、一ツ目。こんなこと言うのもなんだけど…死神側である浦原さんに手を貸して、よかったの?」
『事態は急を要する。空間が歪めばお前が苦しむ。余もそうだ』
「でも、」
『今の滅却師には何の思い入れもない。死神が行った蛮行は、結果的にお前と会う切っ掛けになった。それで、十分だ』
それを見た浦原は、小さく笑う。
本当に、この霊王の右足は彼女至上主義だ。