anemone days
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「わわっ、おそらっス!おそらに出たっス!」
「浦原さんのは大体いつもこうだよ」
「流石、よくご存知で」
けたたましい音を立て、一行は虚圏へ降り立った。
anemone days#39
たどり着いた場所は、最早廃墟だった。
夥しい破面達の死体。
戦闘後にも見えるが、背中から斬られている遺体も多く、どちらかというと一方的な虐殺に近い様子だった。
「大丈夫っスか、名無しサン」
「…耳鳴りが、止んだ…」
さっきまでキンキンと鳴り続けていた異音が消えた。
頭痛も少しずつ引いてきている。
まだ痛みの余韻はあるが、さっきのように立てなくなる程ではなかった。
「考えられるのは、魂魄の均衡の崩壊っス」
「均衡の崩壊?」
「現世に行った魂魄が尸魂界に戻らないと、バランスが保てなくなる。そうすると世界が崩壊する、と以前お話したことありましたよね」
「はい」
「考えられるのは、魂魄の完全消滅。それは虚も例外ではない」
そこまで話をされ、辻褄が合う。
「まさか、」
「そうです。恐らく今回の敵は、滅却師っス。そして名無しサンの体調不良は、名無しサンが見つけた空間の歪みが原因でしょう。名無しサンの霊力は空間に干渉する。何かしら影響が出てもおかしくない」
「…どうして虚圏だと治ったの?」
「今はまだ空間が安定してる、という話っス。
尸魂界と現世は表裏一体っスけど、一度バランスを崩せば周りに点在する虚圏も崩壊します」
なるほど。
「さ、黒崎サン達が敵の目を引いている内にドンドチャッカさんを救出するらしいっスから、急ぎましょう」
「はい」
***
ドンドチャッカを砂から掘り出したあと、一護達と合流するために浦原達は走っていた。
「名無しサン、大丈夫っスか?」
「浦原さん。それ何度目ですか…」
「だって心配なんスもん。それに名無しサンそういうのすぐ隠しますし」
少しの嫌味を込めて言われれば、グウの音も出なかった。
「そういう浦原さんだって秘密主義なところが、」
―――、
白い砂漠のような大地を蹴っていた足を止める。
それは名無しと浦原、同時だった。
「これ、」
「…尸魂界っスね」
巨大な霊圧。
それは別空間である虚圏にいても分かるほどに。
死神でも、虚でもない。
人間の―正確には、滅却師の霊圧。
「急ぎましょう」
浦原の僅かに硬い声に、口を固く噤む名無し。
小さく、ひとつだけ頷いた。
***
岩陰に身を潜めて一護の戦闘を見守る浦原。
懐に持っていた伝令神機が、この場に不釣り合いなくらいの軽快な音を立てて呼出音を鳴らす。
「ハイ。あ、どうもっスー。阿近サン、お久しぶりっスねぇ。どうっスか?調子は。」
これまた浦原が呑気な声で答える。
岩一枚向こうから聞こえてくる戦闘音がなければただの世間話に聞こえるだろうが、まぁ現実はそうではない。
スピーカーにしていなくても阿近の怒鳴り声が聞こえてくる。彼のペースを呆気なく崩すのは、この男かマユリくらいだろう。
「阿近って誰でゴワス?」
「尸魂界の、技術開発の人です。えっと、昔、浦原さんの部下だった人ですね」
ドンドチャッカが首を傾げながら聞いてくるので、丁寧に答える名無し。
阿近が火急でもないのに浦原へ連絡を寄越すはずがない。
先程感じた霊圧といい、嫌な予感しかしなかった。
「黒崎一護が押しているのか?」
「あ、ペッシェさん。危ないから顔を出さない方が…」
ゴンッ
岩陰から顔を出したペッシェに、吹き飛んできた岩が顔面に直撃する。
あぁ、今のは絶対に痛い。
「名無しサン!今から穿界門を開いてください」
「穿界門ですか。行き先は?」
「尸魂界です。お願いできますか?」
緊迫した浦原の声。
黙って名無しは一度だけ首を縦に振る。
現世にいた時グラグラとしていた霊圧は、今は安定してきた。
…大丈夫だ。門を開くくらいなら。
岩が積み重なった高台へ登り、門を開くための詠唱を始めた。
***
異形の滅却師の霊子が崩れ、鬼道で心臓を射抜く浦原。
持っていた伝令神機を一護へ投げ、穿界門から尸魂界に送り出した。
携帯していた端末で一護と通信を行う浦原。
その隣で名無しは辺りを見回した。
(静かすぎる)
先程、僅かだが滅却師から解放できた破面達は、どこかに逃げたのだろうか。
それにしても不自然な静寂だった。
その時だった。
霊子が、僅かにざわめく。
「ぐっ…!」
「きゃ、あ!!」
茶渡と織姫の悲鳴。
それと同時にすぐ側の穿界門の中へ、奔る閃光。
「茶渡くん!織姫ちゃ、」
ドッ、
隣から不意に聞こえたきた、何かを貫く音。
滅却師の矢が浦原の背に深く深く突き刺さる。
「浦原さん!!」
先程倒したはずの滅却師が目に見える程の霊子を集め、自分の身体を操る。
それはまるで、傀儡のような姿だった。
「みすみす尸魂界には行かせはしませんよ…私が陛下に与えられた命は……命を賭してでも、黒崎一護を足止めすること!!」
追い討ちをかけるように閃光が穿界門を撃ち抜けば、穿界門が形状を維持できなくなったのだろう。音を立てて、閉じた。
門を形作る支柱が無残にも砂上へ堕ちる。
「お前……よくも!!」
「尸魂界の滅亡を、為す術もなく待つがいい!」
「浦原さんのは大体いつもこうだよ」
「流石、よくご存知で」
けたたましい音を立て、一行は虚圏へ降り立った。
anemone days#39
たどり着いた場所は、最早廃墟だった。
夥しい破面達の死体。
戦闘後にも見えるが、背中から斬られている遺体も多く、どちらかというと一方的な虐殺に近い様子だった。
「大丈夫っスか、名無しサン」
「…耳鳴りが、止んだ…」
さっきまでキンキンと鳴り続けていた異音が消えた。
頭痛も少しずつ引いてきている。
まだ痛みの余韻はあるが、さっきのように立てなくなる程ではなかった。
「考えられるのは、魂魄の均衡の崩壊っス」
「均衡の崩壊?」
「現世に行った魂魄が尸魂界に戻らないと、バランスが保てなくなる。そうすると世界が崩壊する、と以前お話したことありましたよね」
「はい」
「考えられるのは、魂魄の完全消滅。それは虚も例外ではない」
そこまで話をされ、辻褄が合う。
「まさか、」
「そうです。恐らく今回の敵は、滅却師っス。そして名無しサンの体調不良は、名無しサンが見つけた空間の歪みが原因でしょう。名無しサンの霊力は空間に干渉する。何かしら影響が出てもおかしくない」
「…どうして虚圏だと治ったの?」
「今はまだ空間が安定してる、という話っス。
尸魂界と現世は表裏一体っスけど、一度バランスを崩せば周りに点在する虚圏も崩壊します」
なるほど。
「さ、黒崎サン達が敵の目を引いている内にドンドチャッカさんを救出するらしいっスから、急ぎましょう」
「はい」
***
ドンドチャッカを砂から掘り出したあと、一護達と合流するために浦原達は走っていた。
「名無しサン、大丈夫っスか?」
「浦原さん。それ何度目ですか…」
「だって心配なんスもん。それに名無しサンそういうのすぐ隠しますし」
少しの嫌味を込めて言われれば、グウの音も出なかった。
「そういう浦原さんだって秘密主義なところが、」
―――、
白い砂漠のような大地を蹴っていた足を止める。
それは名無しと浦原、同時だった。
「これ、」
「…尸魂界っスね」
巨大な霊圧。
それは別空間である虚圏にいても分かるほどに。
死神でも、虚でもない。
人間の―正確には、滅却師の霊圧。
「急ぎましょう」
浦原の僅かに硬い声に、口を固く噤む名無し。
小さく、ひとつだけ頷いた。
***
岩陰に身を潜めて一護の戦闘を見守る浦原。
懐に持っていた伝令神機が、この場に不釣り合いなくらいの軽快な音を立てて呼出音を鳴らす。
「ハイ。あ、どうもっスー。阿近サン、お久しぶりっスねぇ。どうっスか?調子は。」
これまた浦原が呑気な声で答える。
岩一枚向こうから聞こえてくる戦闘音がなければただの世間話に聞こえるだろうが、まぁ現実はそうではない。
スピーカーにしていなくても阿近の怒鳴り声が聞こえてくる。彼のペースを呆気なく崩すのは、この男かマユリくらいだろう。
「阿近って誰でゴワス?」
「尸魂界の、技術開発の人です。えっと、昔、浦原さんの部下だった人ですね」
ドンドチャッカが首を傾げながら聞いてくるので、丁寧に答える名無し。
阿近が火急でもないのに浦原へ連絡を寄越すはずがない。
先程感じた霊圧といい、嫌な予感しかしなかった。
「黒崎一護が押しているのか?」
「あ、ペッシェさん。危ないから顔を出さない方が…」
ゴンッ
岩陰から顔を出したペッシェに、吹き飛んできた岩が顔面に直撃する。
あぁ、今のは絶対に痛い。
「名無しサン!今から穿界門を開いてください」
「穿界門ですか。行き先は?」
「尸魂界です。お願いできますか?」
緊迫した浦原の声。
黙って名無しは一度だけ首を縦に振る。
現世にいた時グラグラとしていた霊圧は、今は安定してきた。
…大丈夫だ。門を開くくらいなら。
岩が積み重なった高台へ登り、門を開くための詠唱を始めた。
***
異形の滅却師の霊子が崩れ、鬼道で心臓を射抜く浦原。
持っていた伝令神機を一護へ投げ、穿界門から尸魂界に送り出した。
携帯していた端末で一護と通信を行う浦原。
その隣で名無しは辺りを見回した。
(静かすぎる)
先程、僅かだが滅却師から解放できた破面達は、どこかに逃げたのだろうか。
それにしても不自然な静寂だった。
その時だった。
霊子が、僅かにざわめく。
「ぐっ…!」
「きゃ、あ!!」
茶渡と織姫の悲鳴。
それと同時にすぐ側の穿界門の中へ、奔る閃光。
「茶渡くん!織姫ちゃ、」
ドッ、
隣から不意に聞こえたきた、何かを貫く音。
滅却師の矢が浦原の背に深く深く突き刺さる。
「浦原さん!!」
先程倒したはずの滅却師が目に見える程の霊子を集め、自分の身体を操る。
それはまるで、傀儡のような姿だった。
「みすみす尸魂界には行かせはしませんよ…私が陛下に与えられた命は……命を賭してでも、黒崎一護を足止めすること!!」
追い討ちをかけるように閃光が穿界門を撃ち抜けば、穿界門が形状を維持できなくなったのだろう。音を立てて、閉じた。
門を形作る支柱が無残にも砂上へ堕ちる。
「お前……よくも!!」
「尸魂界の滅亡を、為す術もなく待つがいい!」