anemone days
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綻ぶ世界。
歪みは、最初は小さく。
少しずつ ほどけるように、大きく。
anemone days#38
教室。
帰る支度をしていると、不意に頭痛が走った。
最近、時々起こるこの症状。
(…風邪、かな)
目を閉じて、こめかみを揉みほぐすように親指で抑える。効果があるのかは、分からないが。
「名無しちゃん、どうしたの?」
「織姫ちゃん」
心配して話しかけてきたのは、織姫だった。
「ううん。ちょっと、目眩がしただけ」
「大丈夫?怪我だったら、治せたんだけど…」
「ありがとう。多分、ちょっと疲れてるだけだから」
今日は早めに帰って寝ようかな。
そう言うと、あったかくして寝てね、と微笑まれた。本当に、彼女は優しい。
5月。
季節の変わり目というが、最近は暖かい日が続いている。
そろそろ衣替えの季節だ。
それなのに、何故だろう。さっきから寒気が止まらない。
本格的に風邪を引き始めたのだろうか。
帰り道。空耳が聞こえた。
それは電子音のノイズのような、耳障りな音。
辺りを見回せば、誰もいない。
しかし、ある一点を除けば。
縫い目がほつれたように、ほころんだ空間。
「…何、これ」
指先で触れれば、よく知った感覚。
この気配は
「尸魂界?」
どうして。穿界門を通していないのに。
ガンガンと酷くなる頭痛。
この綻びからなのか、ノイズ音も相まって不快指数がグングン上がる。
(帰って、浦原さんに聞こう)
覚束無い足取りで浦原商店へ向かう。
それが最初の綻びだと、この時誰も知らない。
***
商店に帰って、空間の綻びの話を浦原に告げる名無し。
話している間にも、体調は徐々に悪くなっていった。
「大丈夫っスか?名無しサン」
「……大丈夫じゃ、ないかもしれません」
ノイズ音が酷い。ヘッドホンでずっと雑音を聞かされている気分だ。
気休め程度だろうがくすりをのんでみてもあ、相変わらず頭が痛い。
偏頭痛では済まない、まるで頭の中を掻き回されているような痛みだった。
強がって大丈夫、と答えたいところだが、正直大丈夫じゃなかった。
「空間の綻びと関係ありそうっスね」
「だと、いいんですけど」
浦原の声も、心做しか遠い。
「…黒崎サンのところ、行ってくるっス。すぐに戻りますから、待っててください」
ひと撫でされ、急いで商店を出る浦原。
追いかけるほどの気力は、今の彼女にはない。
頭が、割れそうだった。
***
勉強部屋で虚圏への道を開く浦原。
一護の他に、茶渡と織姫、破面が二人ほどいた。
虚圏が謎の集団に襲撃され、以前藍染の部下だった破面達すら歯が立たない、という状況らしい。
「おい、大丈夫なのかよ、浦原さん。名無しを連れて行くって…」
「恐らく。アタシの見立てだと、今は現世にいるよりはいい。名無しサン、立てます?」
手を差し出され握り返すが、視界がグラグラと揺れて立ち上がるどころの話ではなかった。
鬼道の『白伏』を受けた瞬間によく似ている。
織姫が心配そうに背中をさすってくれているが、ありがたいけれど気休めにもならなかった。
「仕方ないっスね。よっ、と」
腕を引っ張られ、背中に背負われる。
頬にあたる浦原の癖毛が少しくすぐったかった。
「うら、はらさん、」
「大丈夫っス。多分、虚圏だと楽になるハズっスから」
多分、とは言うが、確信がなければ彼はそういうことを口にしない。恐らく原因は分かっているのだろう。
とりあえず、今は大人しく彼の背中を借りることにしよう。
「それじゃあ、行きますよ」
一護達は二度目の。名無しにとっては初めての虚圏へ。
歪みは、最初は小さく。
少しずつ ほどけるように、大きく。
anemone days#38
教室。
帰る支度をしていると、不意に頭痛が走った。
最近、時々起こるこの症状。
(…風邪、かな)
目を閉じて、こめかみを揉みほぐすように親指で抑える。効果があるのかは、分からないが。
「名無しちゃん、どうしたの?」
「織姫ちゃん」
心配して話しかけてきたのは、織姫だった。
「ううん。ちょっと、目眩がしただけ」
「大丈夫?怪我だったら、治せたんだけど…」
「ありがとう。多分、ちょっと疲れてるだけだから」
今日は早めに帰って寝ようかな。
そう言うと、あったかくして寝てね、と微笑まれた。本当に、彼女は優しい。
5月。
季節の変わり目というが、最近は暖かい日が続いている。
そろそろ衣替えの季節だ。
それなのに、何故だろう。さっきから寒気が止まらない。
本格的に風邪を引き始めたのだろうか。
帰り道。空耳が聞こえた。
それは電子音のノイズのような、耳障りな音。
辺りを見回せば、誰もいない。
しかし、ある一点を除けば。
縫い目がほつれたように、ほころんだ空間。
「…何、これ」
指先で触れれば、よく知った感覚。
この気配は
「尸魂界?」
どうして。穿界門を通していないのに。
ガンガンと酷くなる頭痛。
この綻びからなのか、ノイズ音も相まって不快指数がグングン上がる。
(帰って、浦原さんに聞こう)
覚束無い足取りで浦原商店へ向かう。
それが最初の綻びだと、この時誰も知らない。
***
商店に帰って、空間の綻びの話を浦原に告げる名無し。
話している間にも、体調は徐々に悪くなっていった。
「大丈夫っスか?名無しサン」
「……大丈夫じゃ、ないかもしれません」
ノイズ音が酷い。ヘッドホンでずっと雑音を聞かされている気分だ。
気休め程度だろうがくすりをのんでみてもあ、相変わらず頭が痛い。
偏頭痛では済まない、まるで頭の中を掻き回されているような痛みだった。
強がって大丈夫、と答えたいところだが、正直大丈夫じゃなかった。
「空間の綻びと関係ありそうっスね」
「だと、いいんですけど」
浦原の声も、心做しか遠い。
「…黒崎サンのところ、行ってくるっス。すぐに戻りますから、待っててください」
ひと撫でされ、急いで商店を出る浦原。
追いかけるほどの気力は、今の彼女にはない。
頭が、割れそうだった。
***
勉強部屋で虚圏への道を開く浦原。
一護の他に、茶渡と織姫、破面が二人ほどいた。
虚圏が謎の集団に襲撃され、以前藍染の部下だった破面達すら歯が立たない、という状況らしい。
「おい、大丈夫なのかよ、浦原さん。名無しを連れて行くって…」
「恐らく。アタシの見立てだと、今は現世にいるよりはいい。名無しサン、立てます?」
手を差し出され握り返すが、視界がグラグラと揺れて立ち上がるどころの話ではなかった。
鬼道の『白伏』を受けた瞬間によく似ている。
織姫が心配そうに背中をさすってくれているが、ありがたいけれど気休めにもならなかった。
「仕方ないっスね。よっ、と」
腕を引っ張られ、背中に背負われる。
頬にあたる浦原の癖毛が少しくすぐったかった。
「うら、はらさん、」
「大丈夫っス。多分、虚圏だと楽になるハズっスから」
多分、とは言うが、確信がなければ彼はそういうことを口にしない。恐らく原因は分かっているのだろう。
とりあえず、今は大人しく彼の背中を借りることにしよう。
「それじゃあ、行きますよ」
一護達は二度目の。名無しにとっては初めての虚圏へ。