anemone days
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「藍染は?」
「封印しました。崩玉と融合した彼は、恐らく殺すことはできないでしょうから」
「…そう」
空を仰ぎ、小さく呟いた。
「――かわいそうな人」
anemone days#37
「とにかく。名無しサンは暫く謹慎っス」
布団に寝かされ、完全に隔離された。
いや、手足を動かしただけで痛いから、動こうにも動けないし、脱走なんて以ての外だ。
「トイレどうするんですか」
そう問えば、上を向いたり、下を向いたり、右を向いたり。
わざとらしい、考えるフリ。
「ボクが」
「雨ちゃんか夜一さんに連れて行って貰いますね」
「つれないっスよぉ。あ、尿瓶もありますけど?」
「人の話聞いてました!?」
声をあげれば、拷問のように痛む傷。
ぐぅ、と小さく唸って背中を丸めた。
「内臓とかぐっちゃぐちゃだったんですから、叫ばない叫ばない」
「…想像したら結構グロいですね。よく生きていたもんだ」
「本当に。」
浦原が被っていた帽子を名無しの頭にぽすっと被せる。
一瞬暗くなる視界。
頭を緩く振れば、ぱさりと軽い音を立てて布団の上に落ちた。
「暫くは絶対安静っス。動いたら卯ノ花サンに言いつけるっスからね」
「う…。わかりました…」
少しだけキツめに言われた言葉に、思わずたじろぐ。
返事をする名無しを見て満足そうに微笑み、浦原は静かに襖を閉めた。
***
「…義骸が、限界っスかね」
浦原商店の奥。研究室の椅子に座り、レポートのように纏められた紙を一枚捲る。
名無しの外傷は黒棺によるものだった。
しかし内臓へのダメージは、殆どは自壊に近い状態だ。
つまり、自らの霊圧に身体が耐えきれなかった。そういうことだ。
これ以上義骸の強度を上げるのは、現状難しい。
マユリにも相談を持ち掛けたが『それは貴様の専門分野だろう』と取り付く島もなかった。
元々霊圧を消すための義骸なのに、その役を果たせていない。
義骸を脱いだ彼女の霊圧は、一体どうなってしまうのか。
ゾッとした。
最初、尸魂界で出会った頃は山本と同等くらいの霊圧だったはず。
それが今はどうだ。
崩玉を取り込んだ藍染に、爪を立てることが出来る。
霊圧遮断義骸であるにもら関わらず、自壊を誘う高濃度の霊圧。
「…一ツ目サン、あなたの力。思っていた以上に野蛮っスね」
そう呟いた浦原の声は、『彼』に届かない。
**
何週間後。
「名無しサン、これつけてみてください」
渡されたのは、小さな箱。
夜一と夕食の粥を食べていると浦原が持ってきた。
「…何です?これ」
「名無し、あけるぞ」
あまり身体を動かせない名無しの代わりに、夜一が箱を開ける。
入っていたのは、
「プロポーズ、というヤツか?喜助」
「な、なんですか、この指輪」
ニヤニヤと笑う夜一と、引いている名無し。
困ったような彼女の顔を見て、予想はしていたが…少しだけ、ショックだ。
「ちょっと、そんなに引かなくていいじゃないっスか」
「いや、なんか箱といい…。え、本当にこれ、何です?」
心底戸惑っている名無し。
小さく息を吐いて、夜一が座っている反対側に腰を下ろす浦原。
「新しい霊力制御っス。手首の鎖より改善したものっス」
「ほう、随分小型化したものじゃな」
「でしょう。はい、名無しサン。左手出してくださいっス」
首を傾げながら左手を差し出す名無し。
嵌めようとした指は、
「ちょっと。何で薬指に嵌めようとしてるんですか」
「え。だってこの指がサイズぴったりっぽいですし」
「ダメですよ。絶対ダメです。それ結婚指輪つける指ですよ」
「……」
名無しの左手を持つ手の力が、さらに強くなる。
「いやいやいや、ダメですってば」
「大人しくして下さい名無しサン」
「喜助ェ、むーどが足りぬぞ。2点じゃ」
「採点しないでください、夜一さん!
右手!右手ならいいですから!」
左手は断固拒否の姿勢で拳を握る。
代わりに右手を差し出せば、諦めたように右手の薬指に指輪を浦原がはめた。
「…ちょっとドン引きするレベルでぴったりですね」
「あ、ちなみにそれ。外れないっスから」
「はい!?」
浦原の衝撃発言に思わず聞き返した。
これは夜一も驚いているらしく、目を大きく見開いた。
「いつもいつも名無しサン、カッとなると制御の鎖、外しちゃうんですもん」
「だってあれ付けてると、身体に違和感あるんですもん」
それはそうだろう。
外付けで制御を重ねているのだ。
義骸だけじゃない、余計なオプションをつければ当然のことだった。
しかし、
「単刀直入に言います。次、恐らく霊圧解放したら、名無しサン。あなたは十中八九、死にます」
浦原の告げた事実に、言葉を失う夜一。
名無しは、
「十中八九どころか、死ぬらしいですね」
ケロッとしていた。
「…驚かないんっスか?」
「気絶してる間、一ツ目に会いましたから。
戻ってくる間際に彼がそう言っていたんですから間違いないでしょうね」
へらっと気の抜けた笑顔で笑う名無し。
驚くか、流石に恐怖するかと思えば、この反応だ。
予想の斜め上を行く反応に、浦原すら戸惑った。
「怖くないんっスか?」
「霊圧解放しなければいいんでしょう?」
「そうっスけど」
「じゃあ、大丈夫ですよ。流石にそんな無茶はしません」
視線を落とし、食べかけだった粥を再び食べ始める。
そう、この違和感が最初だった。
この時無理矢理にでも問い詰めれば良かったのだ。
後悔するのは、18ヶ月後の話。
花弁が、一枚落ちる。
「封印しました。崩玉と融合した彼は、恐らく殺すことはできないでしょうから」
「…そう」
空を仰ぎ、小さく呟いた。
「――かわいそうな人」
anemone days#37
「とにかく。名無しサンは暫く謹慎っス」
布団に寝かされ、完全に隔離された。
いや、手足を動かしただけで痛いから、動こうにも動けないし、脱走なんて以ての外だ。
「トイレどうするんですか」
そう問えば、上を向いたり、下を向いたり、右を向いたり。
わざとらしい、考えるフリ。
「ボクが」
「雨ちゃんか夜一さんに連れて行って貰いますね」
「つれないっスよぉ。あ、尿瓶もありますけど?」
「人の話聞いてました!?」
声をあげれば、拷問のように痛む傷。
ぐぅ、と小さく唸って背中を丸めた。
「内臓とかぐっちゃぐちゃだったんですから、叫ばない叫ばない」
「…想像したら結構グロいですね。よく生きていたもんだ」
「本当に。」
浦原が被っていた帽子を名無しの頭にぽすっと被せる。
一瞬暗くなる視界。
頭を緩く振れば、ぱさりと軽い音を立てて布団の上に落ちた。
「暫くは絶対安静っス。動いたら卯ノ花サンに言いつけるっスからね」
「う…。わかりました…」
少しだけキツめに言われた言葉に、思わずたじろぐ。
返事をする名無しを見て満足そうに微笑み、浦原は静かに襖を閉めた。
***
「…義骸が、限界っスかね」
浦原商店の奥。研究室の椅子に座り、レポートのように纏められた紙を一枚捲る。
名無しの外傷は黒棺によるものだった。
しかし内臓へのダメージは、殆どは自壊に近い状態だ。
つまり、自らの霊圧に身体が耐えきれなかった。そういうことだ。
これ以上義骸の強度を上げるのは、現状難しい。
マユリにも相談を持ち掛けたが『それは貴様の専門分野だろう』と取り付く島もなかった。
元々霊圧を消すための義骸なのに、その役を果たせていない。
義骸を脱いだ彼女の霊圧は、一体どうなってしまうのか。
ゾッとした。
最初、尸魂界で出会った頃は山本と同等くらいの霊圧だったはず。
それが今はどうだ。
崩玉を取り込んだ藍染に、爪を立てることが出来る。
霊圧遮断義骸であるにもら関わらず、自壊を誘う高濃度の霊圧。
「…一ツ目サン、あなたの力。思っていた以上に野蛮っスね」
そう呟いた浦原の声は、『彼』に届かない。
**
何週間後。
「名無しサン、これつけてみてください」
渡されたのは、小さな箱。
夜一と夕食の粥を食べていると浦原が持ってきた。
「…何です?これ」
「名無し、あけるぞ」
あまり身体を動かせない名無しの代わりに、夜一が箱を開ける。
入っていたのは、
「プロポーズ、というヤツか?喜助」
「な、なんですか、この指輪」
ニヤニヤと笑う夜一と、引いている名無し。
困ったような彼女の顔を見て、予想はしていたが…少しだけ、ショックだ。
「ちょっと、そんなに引かなくていいじゃないっスか」
「いや、なんか箱といい…。え、本当にこれ、何です?」
心底戸惑っている名無し。
小さく息を吐いて、夜一が座っている反対側に腰を下ろす浦原。
「新しい霊力制御っス。手首の鎖より改善したものっス」
「ほう、随分小型化したものじゃな」
「でしょう。はい、名無しサン。左手出してくださいっス」
首を傾げながら左手を差し出す名無し。
嵌めようとした指は、
「ちょっと。何で薬指に嵌めようとしてるんですか」
「え。だってこの指がサイズぴったりっぽいですし」
「ダメですよ。絶対ダメです。それ結婚指輪つける指ですよ」
「……」
名無しの左手を持つ手の力が、さらに強くなる。
「いやいやいや、ダメですってば」
「大人しくして下さい名無しサン」
「喜助ェ、むーどが足りぬぞ。2点じゃ」
「採点しないでください、夜一さん!
右手!右手ならいいですから!」
左手は断固拒否の姿勢で拳を握る。
代わりに右手を差し出せば、諦めたように右手の薬指に指輪を浦原がはめた。
「…ちょっとドン引きするレベルでぴったりですね」
「あ、ちなみにそれ。外れないっスから」
「はい!?」
浦原の衝撃発言に思わず聞き返した。
これは夜一も驚いているらしく、目を大きく見開いた。
「いつもいつも名無しサン、カッとなると制御の鎖、外しちゃうんですもん」
「だってあれ付けてると、身体に違和感あるんですもん」
それはそうだろう。
外付けで制御を重ねているのだ。
義骸だけじゃない、余計なオプションをつければ当然のことだった。
しかし、
「単刀直入に言います。次、恐らく霊圧解放したら、名無しサン。あなたは十中八九、死にます」
浦原の告げた事実に、言葉を失う夜一。
名無しは、
「十中八九どころか、死ぬらしいですね」
ケロッとしていた。
「…驚かないんっスか?」
「気絶してる間、一ツ目に会いましたから。
戻ってくる間際に彼がそう言っていたんですから間違いないでしょうね」
へらっと気の抜けた笑顔で笑う名無し。
驚くか、流石に恐怖するかと思えば、この反応だ。
予想の斜め上を行く反応に、浦原すら戸惑った。
「怖くないんっスか?」
「霊圧解放しなければいいんでしょう?」
「そうっスけど」
「じゃあ、大丈夫ですよ。流石にそんな無茶はしません」
視線を落とし、食べかけだった粥を再び食べ始める。
そう、この違和感が最初だった。
この時無理矢理にでも問い詰めれば良かったのだ。
後悔するのは、18ヶ月後の話。
花弁が、一枚落ちる。