anemone days
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涙を殺してでも、この身が焼かれようとも
この心は、鋼のように。
anemone days#35
それは、突然だった。
鳥肌が立つような霊圧。
知っている。
以前感じたものとは多少変わっているが、この感じは
「…藍染…」
同じ場所に、市丸もいる。
昏く淀んだ霊圧は、崩玉によるものなのか。
指先の神経がピリピリするのが分かった。
一瞬、息が止まる。
藍染の霊圧で気づかなかったが、『彼女達』がいた。
ゾッと背筋が凍る感覚。
間違いなく 殺されるだろう。特に、一護の関係者であれば、尚更。
私は、楔だ。
決して藍染から見つかってはいけない。そんなことは分かっているはずなのに。
考えるより動く方が早かった。
***
市丸が追ってきた乱菊を連れ去った後。
藍染の霊圧を辿れば、ビルの合間で爆発が起きる。
ズッ、と胃が重くなる感覚。まさか、
「うわぁあ!やっぱり無理だった!」
そう声を上げてビルの合間から出てきたのは、たつき達だった。
どうやら彼女達が危害を加えられたわけではなさそうで、ほんの少しだけほっとした。
爆煙の中から出てくる藍染。
その姿は、双極で見た時とはまるで別人だった。
悠々と逃げ惑うたつき達を追いかけようとした時。
「破道の八十八『飛竜撃賊震天雷砲』!」
雷を纏った一撃を、放つ。
避けすらしない。
それなのに傷一つ付かなかった。
藍染はゆっくりとこちらを振り返り、緩やかに口角を上げた。
「待っていたよ、名無し」
白く濁った瞳は、嬉しそうに弧を描く。
「名無し!?なんでアンタ此処に、」
「ここから逃げて。出来るだけ、遠く」
空間術は使えない。
鬼道と瞬歩だけで相手をしなければいけないのかと思うと、少しだけ気が滅入った。
たつき達が逃げた後、藍染が肩を震わせて笑いだす。
「友だったのだろう?見捨てられたな、名無し」
「何言ってんの。私が逃がしたのよ」
「強がるな。お前も私と同じ、特別な存在なのだから…まぁ嘆くことはないさ」
「…特別?」
「そうだ。私は崩玉、お前は霊王に選ばれた。これを特別と言わず、なんとする」
雄弁に語る藍染。訝しげるように名無しの視線がスっと細くなる。
「選ばれた?違うよ。アンタも私も『選んだ』んだ。特別なんかじゃない」
名無しの言葉に、ピクリと反応する藍染。
ゆらりと一瞬揺れた後、彼は名無しの背後に現れた。
(瞬歩、)
胸倉を掴まれ、地面に叩きつけられる。
骨の軋む音。
ひゅっと呼吸が喉を裂く音が聞こえた。
「特別だ!誰も私を理解しない!お前もそうだろう、同じ目に遭ってきたお前なら、」
――気味が悪い子供だ。
――何を言ってるの、この子。
親の言葉が、脳内でリフレインする。
…違う。
「ち、がう…!破道の七十三『双蓮蒼火墜』!」
藍染の手を掴んで破道を放つ。
一瞬白い手が燃えるが、何事もなかったかのように元通りになる。
火傷すら残らない身体に、思わず小さく舌打ちした。
「私に鬼道など無駄だ。死神も、虚も超越した私に、今の君の刃は届かない」
軽々と持ち上げられると、コンクリート塀へ投げつけられる。
息が できない。
身体中が痛い。悲鳴をあげる関節。
しかしここで倒れるわけには行かなかった。
足を叱咤して、漸く立ち上がる。
「アンタと、私は、違う!
誰一人すら理解しようとしなかったヤツが、自分が理解されなかっただなんて、甘ったれたこと言ってんじゃないわよ!」
左手を突き出し、詠唱する。
「千手の涯、届かざる闇の御手。映らざる天の射手、光を落とす道。火種を煽る風、集いて惑うな!我が指を見よ!光弾・八身・九条・天経・疾宝・大輪・灰色の砲塔、弓引く彼方、皎皎として消ゆ!破道の九十一『千手皎天汰炮』!」
無数の光の矢が藍染に降り注ぐ。
が、斬魄刀ひと振りで掻き消されてしまった。
鬼道だけでは、手の打ちようがないのか。
「お前を理解しようとした、憐れな男が使っていた術だな」
ククッ、と一頻り笑い、顔に掛かった髪を後ろへ撫でつける。
「どういう意味、」
「浦原喜助は現世で野垂れ死んでいるところだ。
私がここにいる時点で、察しがついているのだろう」
藍染の言葉に、視線を落とす名無し。
分かっている。ここに藍染の霊圧が現れた時点で腹は括っている。
…いや。
『約束をします』
そう言って笑った彼が、脳裏に過ぎる。
――ダメだ、折れるな。まだ諦める時じゃない。
パァンッ!
自らの頬を叩き、息を大きく吸う。
…大丈夫だ。まだ、大丈夫。
「だから何。…あの人は約束を破らない。絶対に」
「それが強がりだと言うんだ!」
藍染が斬魄刀を薙げば、反応が一歩遅れて脇腹を抉る。
傷を手で抑えるが、出血が止まらない。
「何がお前を突き動かす、名無し!
お前は私と同じじゃないのか!?お前は、私と同じ世界を見ているんじゃないのか!」
「言ってる意味が…さっぱり分からないよ」
左手で出血が止まらない脇腹を抑え、歯を食いしばる。
「破道の三十一『赤火砲』」
肉を焼く、臭い。
悲鳴を咬み殺す口内。
あまりの痛みに意識が飛びそうになるが、止血の応急処置にはなるだろう。
脇腹を抉る傷を炎で焼けば、あまりの痛みに汗が滲む。
爪が食い込むほどに拳を握り、再び立ち上がった。
「アンタは、ただの藍染惣右介で、私はただの浦原名無しよ!
生きてるヤツはみんな孤独で当たり前だ!特別なんて言葉に縋って、勝手に自分を飾り立てて、悲劇ぶってんじゃないわよ!!」
孤独が嫌で、藍染は崩玉に。名無しは霊王の右足に縋った。
二人とも、『特別』な何かに縋ったんだ。
弱いあなた。弱い自分。
皆と、『普通』と同じが良かった。
人より少しだけ違っただけなのに、どうしてこうなったんだろう。
瞬歩で藍染へ体当たりをする。
彼の纏う昏い霊圧が、チリチリと空気を焦がすようだった。
「『六杖光牢』!」
六対の光が胴を縛る。
それは名無しの身体ごと突き刺さる。
「『 鎖条鎖縛』、『九曜縛』!」
「名無し、何を…」
「こうするんだよ!」
右手で藍染の胸倉を掴み、左手で霊圧制御の鎖を引きちぎる。
途端に吐き気を催す程の、霊圧の負荷。
背筋を走る悪寒にも似た感覚。
…大丈夫だ、まだ行ける。
「孤独に耐えきれないから、弱いから、アンタも私も『特別』な何かに縋ったんだ!
それに、アンタと私は同じじゃない!!
世界を壊すことしか考えていない、ただの死神のお前なんかに、
大事な人が命をかけて守ろうとする世界を、簡単に壊されてたまるか!」
滲み出す混濁の紋章、不遜なる狂気の器!
湧きあがり・否定し 痺れ・瞬き 眠りを妨げる 爬行する鉄の王女!絶えず自壊する泥の人形、結合せよ、反発せよ、地に満ち己の無力を知れ!
「破道の九十『黒棺』!」
この心は、鋼のように。
anemone days#35
それは、突然だった。
鳥肌が立つような霊圧。
知っている。
以前感じたものとは多少変わっているが、この感じは
「…藍染…」
同じ場所に、市丸もいる。
昏く淀んだ霊圧は、崩玉によるものなのか。
指先の神経がピリピリするのが分かった。
一瞬、息が止まる。
藍染の霊圧で気づかなかったが、『彼女達』がいた。
ゾッと背筋が凍る感覚。
間違いなく 殺されるだろう。特に、一護の関係者であれば、尚更。
私は、楔だ。
決して藍染から見つかってはいけない。そんなことは分かっているはずなのに。
考えるより動く方が早かった。
***
市丸が追ってきた乱菊を連れ去った後。
藍染の霊圧を辿れば、ビルの合間で爆発が起きる。
ズッ、と胃が重くなる感覚。まさか、
「うわぁあ!やっぱり無理だった!」
そう声を上げてビルの合間から出てきたのは、たつき達だった。
どうやら彼女達が危害を加えられたわけではなさそうで、ほんの少しだけほっとした。
爆煙の中から出てくる藍染。
その姿は、双極で見た時とはまるで別人だった。
悠々と逃げ惑うたつき達を追いかけようとした時。
「破道の八十八『飛竜撃賊震天雷砲』!」
雷を纏った一撃を、放つ。
避けすらしない。
それなのに傷一つ付かなかった。
藍染はゆっくりとこちらを振り返り、緩やかに口角を上げた。
「待っていたよ、名無し」
白く濁った瞳は、嬉しそうに弧を描く。
「名無し!?なんでアンタ此処に、」
「ここから逃げて。出来るだけ、遠く」
空間術は使えない。
鬼道と瞬歩だけで相手をしなければいけないのかと思うと、少しだけ気が滅入った。
たつき達が逃げた後、藍染が肩を震わせて笑いだす。
「友だったのだろう?見捨てられたな、名無し」
「何言ってんの。私が逃がしたのよ」
「強がるな。お前も私と同じ、特別な存在なのだから…まぁ嘆くことはないさ」
「…特別?」
「そうだ。私は崩玉、お前は霊王に選ばれた。これを特別と言わず、なんとする」
雄弁に語る藍染。訝しげるように名無しの視線がスっと細くなる。
「選ばれた?違うよ。アンタも私も『選んだ』んだ。特別なんかじゃない」
名無しの言葉に、ピクリと反応する藍染。
ゆらりと一瞬揺れた後、彼は名無しの背後に現れた。
(瞬歩、)
胸倉を掴まれ、地面に叩きつけられる。
骨の軋む音。
ひゅっと呼吸が喉を裂く音が聞こえた。
「特別だ!誰も私を理解しない!お前もそうだろう、同じ目に遭ってきたお前なら、」
――気味が悪い子供だ。
――何を言ってるの、この子。
親の言葉が、脳内でリフレインする。
…違う。
「ち、がう…!破道の七十三『双蓮蒼火墜』!」
藍染の手を掴んで破道を放つ。
一瞬白い手が燃えるが、何事もなかったかのように元通りになる。
火傷すら残らない身体に、思わず小さく舌打ちした。
「私に鬼道など無駄だ。死神も、虚も超越した私に、今の君の刃は届かない」
軽々と持ち上げられると、コンクリート塀へ投げつけられる。
息が できない。
身体中が痛い。悲鳴をあげる関節。
しかしここで倒れるわけには行かなかった。
足を叱咤して、漸く立ち上がる。
「アンタと、私は、違う!
誰一人すら理解しようとしなかったヤツが、自分が理解されなかっただなんて、甘ったれたこと言ってんじゃないわよ!」
左手を突き出し、詠唱する。
「千手の涯、届かざる闇の御手。映らざる天の射手、光を落とす道。火種を煽る風、集いて惑うな!我が指を見よ!光弾・八身・九条・天経・疾宝・大輪・灰色の砲塔、弓引く彼方、皎皎として消ゆ!破道の九十一『千手皎天汰炮』!」
無数の光の矢が藍染に降り注ぐ。
が、斬魄刀ひと振りで掻き消されてしまった。
鬼道だけでは、手の打ちようがないのか。
「お前を理解しようとした、憐れな男が使っていた術だな」
ククッ、と一頻り笑い、顔に掛かった髪を後ろへ撫でつける。
「どういう意味、」
「浦原喜助は現世で野垂れ死んでいるところだ。
私がここにいる時点で、察しがついているのだろう」
藍染の言葉に、視線を落とす名無し。
分かっている。ここに藍染の霊圧が現れた時点で腹は括っている。
…いや。
『約束をします』
そう言って笑った彼が、脳裏に過ぎる。
――ダメだ、折れるな。まだ諦める時じゃない。
パァンッ!
自らの頬を叩き、息を大きく吸う。
…大丈夫だ。まだ、大丈夫。
「だから何。…あの人は約束を破らない。絶対に」
「それが強がりだと言うんだ!」
藍染が斬魄刀を薙げば、反応が一歩遅れて脇腹を抉る。
傷を手で抑えるが、出血が止まらない。
「何がお前を突き動かす、名無し!
お前は私と同じじゃないのか!?お前は、私と同じ世界を見ているんじゃないのか!」
「言ってる意味が…さっぱり分からないよ」
左手で出血が止まらない脇腹を抑え、歯を食いしばる。
「破道の三十一『赤火砲』」
肉を焼く、臭い。
悲鳴を咬み殺す口内。
あまりの痛みに意識が飛びそうになるが、止血の応急処置にはなるだろう。
脇腹を抉る傷を炎で焼けば、あまりの痛みに汗が滲む。
爪が食い込むほどに拳を握り、再び立ち上がった。
「アンタは、ただの藍染惣右介で、私はただの浦原名無しよ!
生きてるヤツはみんな孤独で当たり前だ!特別なんて言葉に縋って、勝手に自分を飾り立てて、悲劇ぶってんじゃないわよ!!」
孤独が嫌で、藍染は崩玉に。名無しは霊王の右足に縋った。
二人とも、『特別』な何かに縋ったんだ。
弱いあなた。弱い自分。
皆と、『普通』と同じが良かった。
人より少しだけ違っただけなのに、どうしてこうなったんだろう。
瞬歩で藍染へ体当たりをする。
彼の纏う昏い霊圧が、チリチリと空気を焦がすようだった。
「『六杖光牢』!」
六対の光が胴を縛る。
それは名無しの身体ごと突き刺さる。
「『 鎖条鎖縛』、『九曜縛』!」
「名無し、何を…」
「こうするんだよ!」
右手で藍染の胸倉を掴み、左手で霊圧制御の鎖を引きちぎる。
途端に吐き気を催す程の、霊圧の負荷。
背筋を走る悪寒にも似た感覚。
…大丈夫だ、まだ行ける。
「孤独に耐えきれないから、弱いから、アンタも私も『特別』な何かに縋ったんだ!
それに、アンタと私は同じじゃない!!
世界を壊すことしか考えていない、ただの死神のお前なんかに、
大事な人が命をかけて守ろうとする世界を、簡単に壊されてたまるか!」
滲み出す混濁の紋章、不遜なる狂気の器!
湧きあがり・否定し 痺れ・瞬き 眠りを妨げる 爬行する鉄の王女!絶えず自壊する泥の人形、結合せよ、反発せよ、地に満ち己の無力を知れ!
「破道の九十『黒棺』!」