anemone days
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織姫が、いなくなった。
彼女の足で破面側についた証拠だけを残して。
anemone days#33
窓と壁しかない殺風景な部屋。
そこで石田は疲労で座り込んでいた。
修行をつけてくれていた父親の姿は、今はない。
「名無しサンいけます?ボクはちょっと相性悪くて無理だったんっスよねぇ」
「なんか、癖のある霊圧の部屋ですね…、あっ、重ッ!」
壁から突然指が生えてきて、石田は思わず肩を跳ねあげた。
しかしよく聞けば、声の主はよく知っている二人だった。
ギチギチと音を当てて、穴の空いた空間から出てきたのは
「よ、っと…!」
「流石名無しサン!
さてさて、夜分遅く恐れ入ります〜…ってまだ夕方っスけど」
「う…浦原さん?それに名無しさんまで…何の用ですか?」
驚く石田に、事の顛末を話す浦原。
その間、名無しは興味深そうに壁をペタペタと触っていた。
(死神の使う鬼道系の結界とは違うけど、触った感じこっちの方が介入しやすいかも。いつもの抜け方で行くからキツかったのかな)
霊化銀を混ぜた壁は、どことなく手触りがしっくりきた。何故だろう。
「名無しサン、説得完了っス。帰りましょ」
「あ、はい」
「浦原さん、名無しさん。少し待ってください。少し、忘れ物を」
浦原と名無しが顔を見合わせ、手伝ってやれと言わんばかりに浦原が小さく頷いた。
「どの辺?」
「このまま真っ直ぐ、そうだな…10mくらいだ。それで右方向へ7mくらい先の」
「この部屋と同じ感じのところ?」
「あぁ」
ほんの僅かに霊圧を込めると、今度はいつもよりすんなり空間を通り抜けることが出来た。
「う、わっ!」
「名無しさん!?」
「おぉ、今度は気持ちいいくらい抜けれた…」
感慨深そうに手のひらをグーパーしていると、何やら武器庫のような部屋だった。
理路整然と置かれている武器を無造作に取っていく石田。それを見て名無しが小さく笑った。
「石田くん、なんか泥棒みたいだよ」
「違うよ。拝借しているだけさ」
「似たようなモンっスけどね」
浦原が扇子で口元を隠しながらそっと突っ込む。
「何。家の敷地内に不法侵入してきた、あなた達程じゃないですよ」
そう言って石田は、ほんの少し楽しそうに笑った。
***
「や。一護。意外と遅かったね」
「名無し」
浦原に連れられてきた一護に対し、岩に刺さった鉄柱の上に座った名無しが軽く手を挙げる。
茶渡と石田は、もう揃っていた。
「準備はいいっスか?」
「あぁ。…今回名無しはついて来ないのか?」
「行きたいのは山々だけど、ちょっと用事あるからね。…織姫ちゃんのこと、よろしくね」
「おう」
「…来ないのか」
「どうした、茶渡くん。何だか珍しいね」
「いや、安心したような、残念なような。少し複雑だ」
「?」
小さく首を傾げる石田は、その意味を知らない。
***
「さ、名無しサン。詠唱行きますよ」
「はい」
「「『我が右手に界境を繋ぐ石、我が左手に実存を縛る刃。黒髪の羊飼い、縛り首の椅子、叢雲来たりて、我・鴇を打つ』」」
詠唱が終わると大きく口を開ける黒腔。
その中へ、一護と石田、茶渡が入って行った。
酷いことを言ってしまった友人には、後で謝る。そう言い残して。
「…だ、そうですよ。そろそろ出てきたらどっスか?」
ごそっと岩陰から出てきたのは、浅野と水色、たつきの三人だった。
「あの、いつから気づいていたんですか…?」
「ここへ来る前からっス。
…やれやれ、黒崎サンも相変わらず甘いっスねぇ。ちょっと冷たくあたったくらいで絆を断ち切ったつもりでいるんだから」
そう言って、一護達が消えた虚空を見つめる浦原。
同じように、もう痕跡すら残らない空間の跡地を三人共見つめた。
「大丈夫だよ。すぐに織姫ちゃん連れ戻して来てくれるよ。今日は少し疲れたでしょ?家に帰って、ゆっくり休んで」
鉄柱から飛び降り、名無しがそっとたつきに手を伸ばす。
「…そう、だね。ありがとう、名無し」
手を取り、ゆっくりと立ち上がるとたつき。
何か聞きたげな空気を出しながらも、彼らは家路についた。
「さて、ボク達はボク達の、やるべき仕事をしますかね」
「…はい。」
着ていたパーカーの袖を捲り上げ、名無しは大きくひとつ頷いた。
彼女の足で破面側についた証拠だけを残して。
anemone days#33
窓と壁しかない殺風景な部屋。
そこで石田は疲労で座り込んでいた。
修行をつけてくれていた父親の姿は、今はない。
「名無しサンいけます?ボクはちょっと相性悪くて無理だったんっスよねぇ」
「なんか、癖のある霊圧の部屋ですね…、あっ、重ッ!」
壁から突然指が生えてきて、石田は思わず肩を跳ねあげた。
しかしよく聞けば、声の主はよく知っている二人だった。
ギチギチと音を当てて、穴の空いた空間から出てきたのは
「よ、っと…!」
「流石名無しサン!
さてさて、夜分遅く恐れ入ります〜…ってまだ夕方っスけど」
「う…浦原さん?それに名無しさんまで…何の用ですか?」
驚く石田に、事の顛末を話す浦原。
その間、名無しは興味深そうに壁をペタペタと触っていた。
(死神の使う鬼道系の結界とは違うけど、触った感じこっちの方が介入しやすいかも。いつもの抜け方で行くからキツかったのかな)
霊化銀を混ぜた壁は、どことなく手触りがしっくりきた。何故だろう。
「名無しサン、説得完了っス。帰りましょ」
「あ、はい」
「浦原さん、名無しさん。少し待ってください。少し、忘れ物を」
浦原と名無しが顔を見合わせ、手伝ってやれと言わんばかりに浦原が小さく頷いた。
「どの辺?」
「このまま真っ直ぐ、そうだな…10mくらいだ。それで右方向へ7mくらい先の」
「この部屋と同じ感じのところ?」
「あぁ」
ほんの僅かに霊圧を込めると、今度はいつもよりすんなり空間を通り抜けることが出来た。
「う、わっ!」
「名無しさん!?」
「おぉ、今度は気持ちいいくらい抜けれた…」
感慨深そうに手のひらをグーパーしていると、何やら武器庫のような部屋だった。
理路整然と置かれている武器を無造作に取っていく石田。それを見て名無しが小さく笑った。
「石田くん、なんか泥棒みたいだよ」
「違うよ。拝借しているだけさ」
「似たようなモンっスけどね」
浦原が扇子で口元を隠しながらそっと突っ込む。
「何。家の敷地内に不法侵入してきた、あなた達程じゃないですよ」
そう言って石田は、ほんの少し楽しそうに笑った。
***
「や。一護。意外と遅かったね」
「名無し」
浦原に連れられてきた一護に対し、岩に刺さった鉄柱の上に座った名無しが軽く手を挙げる。
茶渡と石田は、もう揃っていた。
「準備はいいっスか?」
「あぁ。…今回名無しはついて来ないのか?」
「行きたいのは山々だけど、ちょっと用事あるからね。…織姫ちゃんのこと、よろしくね」
「おう」
「…来ないのか」
「どうした、茶渡くん。何だか珍しいね」
「いや、安心したような、残念なような。少し複雑だ」
「?」
小さく首を傾げる石田は、その意味を知らない。
***
「さ、名無しサン。詠唱行きますよ」
「はい」
「「『我が右手に界境を繋ぐ石、我が左手に実存を縛る刃。黒髪の羊飼い、縛り首の椅子、叢雲来たりて、我・鴇を打つ』」」
詠唱が終わると大きく口を開ける黒腔。
その中へ、一護と石田、茶渡が入って行った。
酷いことを言ってしまった友人には、後で謝る。そう言い残して。
「…だ、そうですよ。そろそろ出てきたらどっスか?」
ごそっと岩陰から出てきたのは、浅野と水色、たつきの三人だった。
「あの、いつから気づいていたんですか…?」
「ここへ来る前からっス。
…やれやれ、黒崎サンも相変わらず甘いっスねぇ。ちょっと冷たくあたったくらいで絆を断ち切ったつもりでいるんだから」
そう言って、一護達が消えた虚空を見つめる浦原。
同じように、もう痕跡すら残らない空間の跡地を三人共見つめた。
「大丈夫だよ。すぐに織姫ちゃん連れ戻して来てくれるよ。今日は少し疲れたでしょ?家に帰って、ゆっくり休んで」
鉄柱から飛び降り、名無しがそっとたつきに手を伸ばす。
「…そう、だね。ありがとう、名無し」
手を取り、ゆっくりと立ち上がるとたつき。
何か聞きたげな空気を出しながらも、彼らは家路についた。
「さて、ボク達はボク達の、やるべき仕事をしますかね」
「…はい。」
着ていたパーカーの袖を捲り上げ、名無しは大きくひとつ頷いた。