anemone days
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「何だよ、負けそうじゃねぇか」
こっそり抜け出し、屋根の上で恋次の戦っている様子を眺めるジン太。
彼の後には、いつの間にか雨が立っていた。
「雨?…ンだよ、オメー寝てろって言ったろ…」
ジン太がそう言うも、彼女には届かない。
虚空を見上げ、口元が僅かに開いている。まるで何かを見つめるように。
意識がとんでしまっている彼女は、屋根から空へ飛び上がった。
「待て!雨…っくそ!!」
anemone days#27
防戦一方だった恋次と破面の間に、割って入る雨。
破面の喉元を掴み、細指でギリギリと締め付ける。
「危険。あなたは、危険。あたし達にとって、危険。危険は、敵。
敵、は
排除」
破面の顔面に叩き込まれる拳。
それは何度も、肉を削ぐような音を奏でる。何度も、何度も。
「く、そがぁぁあ!」
渾身の力で雨を振り切る破面。
「突き砕け、『蒼角王子』」
破面が解号を唱えた瞬間、貫かれる彼女の体。
破面が角を振るえば、軽々と小さな体は空を舞った。
宙を舞った雨の体を掴んだのはジン太だ。
力いっぱい金棒を破面に振るうが表皮にヒビひとつ入らない。
反撃が繰り出される、瞬間。
「『砕け』」
ジン太と雨を庇うように、瞬歩で割って入った名無しが一撃を放つ。
一方の角は恋次の蛇尾丸を貫いたまま止まり、もう一方の角は粉砕された。
「阿散井くん。半歩下がって。
――『穿て』」
人差し指と中指を下へ振り下ろす。
破面であるイーフォルト・グランツの腹を大きく穿つ。鋼より硬い、表皮を貫いて。
「ぐ、が…!」
呻く破面を冷徹に見下ろして、名無しは雨を大事そうに抱き抱えた。
「この場は任せますね。雨の怪我、見てもらわなくちゃ」
「…おう」
「駄目そうだったら、後で来ますね」
「来なくていいぞ、そろそろ、奥の手が来るはずだからな」
「…わかりました」
破面から視線を外さず、恋次が答える。
きっと彼なら大丈夫だろう。
小さくひとつ頷き、彼女とジン太は浦原商店へと急いだ。
***
雨の治療中、部屋の外で胡座をかいてじっと待つジン太。
膝を掴んだ手が僅かに震えている。
「ジン太くん」
隣に座れば、泣きそうな彼の視線と絡む。
涙が出そうなのをぐっと堪えてる顔だった。
「…大丈夫。鉄裁さんが治してくれるよ」
「俺が、外に出て、見てなければ、」
絞り出すように出てきた言葉は、続くことはなかった。
「私がもっと早く出てくればよかったんだ。ジン太くんのせいじゃないよ。
助けに入ってくれてありがとうね。かっこよかったよ。…怖かったね、もう大丈夫だから」
そっと抱きしめて背中を軽く叩くと、嗚咽を堪える声が聞こえた。
怖くないはずがない。それなのに迷わず助けに入った。
あぁ、男の子なんだな。
Tシャツが濡れる感覚を気づかないフリをしながら、トントンと背中を優しく摩った。
***
「雨はもう大丈夫っスよ」
「そうですか…良かった」
「ジン太、寝ちゃいました?」
「ちょっと疲れちゃったみたいです」
「そうっスか」
泣き疲れて膝の上で眠っているジン太。
雨が治療に入ってから、彼此三時間は経過していた。
子供が眠る時間はとうに過ぎていた、眠くないわけが無い。
跳ね返った赤髪をそっと撫でながら、ふと気がつく。
向けられる視線が居心地悪くて、こちらをじっと見ている浦原を見上げた。
「…なんです?」
「いや、こう見たら名無しサンもすっかりお姉さんだなぁって」
「そう見えるのは、喜ばしいことですね」
家族に見えるのなら、これ以上に喜ばしいことはない。
浦原が眠るジン太をそっと抱き抱えて、起こさないようにゆっくりと立ち上がる。
「寝かせてくるっス」
「ありがとうございます」
「名無しサン」
「はい?」
「まだ、動く時ではありません。いいですね」
「…はい」
ふつふつと煮立つような怒りを、見透かしたかのような一言。
分かっている。まだ、その時ではないと。
それでも家族を傷つけられた怒りは、しばらく収まりそうになかった。
こっそり抜け出し、屋根の上で恋次の戦っている様子を眺めるジン太。
彼の後には、いつの間にか雨が立っていた。
「雨?…ンだよ、オメー寝てろって言ったろ…」
ジン太がそう言うも、彼女には届かない。
虚空を見上げ、口元が僅かに開いている。まるで何かを見つめるように。
意識がとんでしまっている彼女は、屋根から空へ飛び上がった。
「待て!雨…っくそ!!」
anemone days#27
防戦一方だった恋次と破面の間に、割って入る雨。
破面の喉元を掴み、細指でギリギリと締め付ける。
「危険。あなたは、危険。あたし達にとって、危険。危険は、敵。
敵、は
排除」
破面の顔面に叩き込まれる拳。
それは何度も、肉を削ぐような音を奏でる。何度も、何度も。
「く、そがぁぁあ!」
渾身の力で雨を振り切る破面。
「突き砕け、『蒼角王子』」
破面が解号を唱えた瞬間、貫かれる彼女の体。
破面が角を振るえば、軽々と小さな体は空を舞った。
宙を舞った雨の体を掴んだのはジン太だ。
力いっぱい金棒を破面に振るうが表皮にヒビひとつ入らない。
反撃が繰り出される、瞬間。
「『砕け』」
ジン太と雨を庇うように、瞬歩で割って入った名無しが一撃を放つ。
一方の角は恋次の蛇尾丸を貫いたまま止まり、もう一方の角は粉砕された。
「阿散井くん。半歩下がって。
――『穿て』」
人差し指と中指を下へ振り下ろす。
破面であるイーフォルト・グランツの腹を大きく穿つ。鋼より硬い、表皮を貫いて。
「ぐ、が…!」
呻く破面を冷徹に見下ろして、名無しは雨を大事そうに抱き抱えた。
「この場は任せますね。雨の怪我、見てもらわなくちゃ」
「…おう」
「駄目そうだったら、後で来ますね」
「来なくていいぞ、そろそろ、奥の手が来るはずだからな」
「…わかりました」
破面から視線を外さず、恋次が答える。
きっと彼なら大丈夫だろう。
小さくひとつ頷き、彼女とジン太は浦原商店へと急いだ。
***
雨の治療中、部屋の外で胡座をかいてじっと待つジン太。
膝を掴んだ手が僅かに震えている。
「ジン太くん」
隣に座れば、泣きそうな彼の視線と絡む。
涙が出そうなのをぐっと堪えてる顔だった。
「…大丈夫。鉄裁さんが治してくれるよ」
「俺が、外に出て、見てなければ、」
絞り出すように出てきた言葉は、続くことはなかった。
「私がもっと早く出てくればよかったんだ。ジン太くんのせいじゃないよ。
助けに入ってくれてありがとうね。かっこよかったよ。…怖かったね、もう大丈夫だから」
そっと抱きしめて背中を軽く叩くと、嗚咽を堪える声が聞こえた。
怖くないはずがない。それなのに迷わず助けに入った。
あぁ、男の子なんだな。
Tシャツが濡れる感覚を気づかないフリをしながら、トントンと背中を優しく摩った。
***
「雨はもう大丈夫っスよ」
「そうですか…良かった」
「ジン太、寝ちゃいました?」
「ちょっと疲れちゃったみたいです」
「そうっスか」
泣き疲れて膝の上で眠っているジン太。
雨が治療に入ってから、彼此三時間は経過していた。
子供が眠る時間はとうに過ぎていた、眠くないわけが無い。
跳ね返った赤髪をそっと撫でながら、ふと気がつく。
向けられる視線が居心地悪くて、こちらをじっと見ている浦原を見上げた。
「…なんです?」
「いや、こう見たら名無しサンもすっかりお姉さんだなぁって」
「そう見えるのは、喜ばしいことですね」
家族に見えるのなら、これ以上に喜ばしいことはない。
浦原が眠るジン太をそっと抱き抱えて、起こさないようにゆっくりと立ち上がる。
「寝かせてくるっス」
「ありがとうございます」
「名無しサン」
「はい?」
「まだ、動く時ではありません。いいですね」
「…はい」
ふつふつと煮立つような怒りを、見透かしたかのような一言。
分かっている。まだ、その時ではないと。
それでも家族を傷つけられた怒りは、しばらく収まりそうになかった。