anemone days
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
尸魂界、西流魂街。
無事についた一行は、悩ましい状況に直面していた。
耳を思わず塞ぎたくなるような、サイレン。
anemone days#13
ではなく、門番の兕丹坊の泣き声。
泣いている理由は、彼の持っていた斧を二本とも一護が壊してしまったからだ。
まさか子供のように泣くとは思わず、一護も慌てふためいている。
「わ、悪かったな、斧壊しちまって…何も二本壊すことなかったよな俺も…なっ?」
なんとか宥めて泣き止ませようとする姿は少し滑稽だった。妹をうっかり泣かせてしまった時も、こんな風に宥めるのだろうか。
一護の努力も実り、ようやく兕丹坊が泣き止んだ後、彼は涙を拭ってこう言った。
「通れ!白道門の通行を兕丹坊が許可する!」
「お、おうっ!」
「…夜一さん、いいの?」
「手間が省けた、と考えればな」
そっと夜一が答えるが、現実はそう簡単に行くはずもない。
兕丹坊が門を持ち上げ開門すると、そこには見知った顔の男がいた。
100年経った今でも、忘れもしない。
「あ・ああぁぁ…」
「…誰だ?」
「さ…三番隊隊長、市丸ギン…!」
絶望に満ちた兕丹坊の表情。
「あァ、こらあかん。門番は門開けるためにいてんのとちゃうやろ」
高速の刃が岩のような兕丹坊の腕を切り落とす。
降り注ぐのは、血の雨。
「う、が、 ぁああああ!!」
「な、何だ!?今…あいつ、何をした!?」
一護達が目を白黒させている間、一歩後ろでそれを眺めていた名無しがゆっくり立ち上がる。
「夜一さん。こりゃ予定通りのルートで侵入になりそう…ってことですよね」
「恐らく」
「じゃあ皆さんは予定通りのルートで侵入をお願いします。指揮系統は、私が中から崩しておきますね」
「何をするつもりじゃ名無し!まさかおぬし、」
「すみません。大丈夫ですよ、いざとなったらちゃんと隠れますから」
にっこりと名無しが綺麗に笑う。
夜一の制止の声より速く、彼女は門へ駆けて行った。
「『穿て』!」
市丸に斬りかかった後、一旦間合いを取った一護の横から衝撃波がはしる。
まるで突風が吹き抜けた時のように、一護の死覇装がバサッと音を立ててはためいた。
「久しぶり、市丸ギン。…ぶん殴りに来てやったわよ!」
「なんや、名無しちゃん。久しいなぁ。…わざわざ戻ってくるなんてなァ」
「な…!名無し、下がってろって!」
「下がるのはキミの方や。射殺せ、『神槍』」
名無しの傍を通り、一護を射抜く市丸の斬魄刀。
刀で辛うじて受け止めた一護だったが、門を片手で受け止めていた兕丹坊ごと後ろへ吹き飛ばされた。
「しまった、門が下りる!」
「名無しちゃん!」
織姫の声も、もう届かない。
ズン…と重い音を立てて、白道門は固く閉ざされた。
***
「さて、と。邪魔者もおらんなったし、大人しく捕まってもらおうか」
「残念、それは無理。破道の七十三『双蓮蒼火墜』!」
詠唱破棄で放つ鬼道が轟音を立てる。
咄嗟に瞬歩で避けた市丸がいた場所は、轟々と炎を上げていた。
「危ない子やなぁ!いつの間に鬼道使えるようになったんや。しかも詠唱破棄とは、たまげたわぁ」
「縛道の六十三『鎖条鎖縛』」
避けた瞬間の隙を見逃さず、太い霊子の鎖が市丸を縛る。
手足の自由を奪って、名無しは冷ややかに市丸を見下ろした。
「お喋りね。本当はアンタをここでぶん殴りたいけど、釘を刺されているからね。しばらくそこで大人しくして。」
「あちゃー油断したわ」
市丸はいつもの調子で軽口を叩くが、笑顔の下ではほんの少しだけ動揺していた。
(あかんわ、ホンマにこの鬼道、ビクともせぇへん。
…藍染隊長。この子、予想より、)
「市丸隊長!大丈夫ですか!?」
少し後ろで控えていた一般隊士が駆け寄る。
彼らに、鬼道を使ったり手の内を見せる必要はない。――圧し潰す。
「邪魔よ。」
名無しが左腕の鎖を耳障りな音を立てて剥ぎ取る。
辺りを息ができない程の霊圧が覆う。
空気が震え、霊圧だけで石畳に亀裂がはしる。
それは酷く重く殺意に満ちたもので。
「う、あ…っ」
隊長格ならまだしも、目の前にいたのは一般隊士。
霊圧に当てられ気絶し、その場に全員崩れ落ちた。
「おーこわ。霊圧だけなら、尸魂界にかなう人間おらんのんちゃうか?」
「興味ない。私は、ただ役目をこなすだけよ。
…あの男に伝えておいてください。『あんたをぶん殴りに来たぞ』って」
それは、まぎれもない宣戦布告。
彼女は瞬歩を使って、瞬きのような早さで瀞霊廷の中へ姿をくらました。
殺気に満ちた双眸。
負の感情が渦巻いた、狂気に近い霊圧は恐ろしいと同時に、少しだけ居心地がよかった。
(藍染隊長。アンタ、どえらい怪物を怒らせてしもうとるで)
無事についた一行は、悩ましい状況に直面していた。
耳を思わず塞ぎたくなるような、サイレン。
anemone days#13
ではなく、門番の兕丹坊の泣き声。
泣いている理由は、彼の持っていた斧を二本とも一護が壊してしまったからだ。
まさか子供のように泣くとは思わず、一護も慌てふためいている。
「わ、悪かったな、斧壊しちまって…何も二本壊すことなかったよな俺も…なっ?」
なんとか宥めて泣き止ませようとする姿は少し滑稽だった。妹をうっかり泣かせてしまった時も、こんな風に宥めるのだろうか。
一護の努力も実り、ようやく兕丹坊が泣き止んだ後、彼は涙を拭ってこう言った。
「通れ!白道門の通行を兕丹坊が許可する!」
「お、おうっ!」
「…夜一さん、いいの?」
「手間が省けた、と考えればな」
そっと夜一が答えるが、現実はそう簡単に行くはずもない。
兕丹坊が門を持ち上げ開門すると、そこには見知った顔の男がいた。
100年経った今でも、忘れもしない。
「あ・ああぁぁ…」
「…誰だ?」
「さ…三番隊隊長、市丸ギン…!」
絶望に満ちた兕丹坊の表情。
「あァ、こらあかん。門番は門開けるためにいてんのとちゃうやろ」
高速の刃が岩のような兕丹坊の腕を切り落とす。
降り注ぐのは、血の雨。
「う、が、 ぁああああ!!」
「な、何だ!?今…あいつ、何をした!?」
一護達が目を白黒させている間、一歩後ろでそれを眺めていた名無しがゆっくり立ち上がる。
「夜一さん。こりゃ予定通りのルートで侵入になりそう…ってことですよね」
「恐らく」
「じゃあ皆さんは予定通りのルートで侵入をお願いします。指揮系統は、私が中から崩しておきますね」
「何をするつもりじゃ名無し!まさかおぬし、」
「すみません。大丈夫ですよ、いざとなったらちゃんと隠れますから」
にっこりと名無しが綺麗に笑う。
夜一の制止の声より速く、彼女は門へ駆けて行った。
「『穿て』!」
市丸に斬りかかった後、一旦間合いを取った一護の横から衝撃波がはしる。
まるで突風が吹き抜けた時のように、一護の死覇装がバサッと音を立ててはためいた。
「久しぶり、市丸ギン。…ぶん殴りに来てやったわよ!」
「なんや、名無しちゃん。久しいなぁ。…わざわざ戻ってくるなんてなァ」
「な…!名無し、下がってろって!」
「下がるのはキミの方や。射殺せ、『神槍』」
名無しの傍を通り、一護を射抜く市丸の斬魄刀。
刀で辛うじて受け止めた一護だったが、門を片手で受け止めていた兕丹坊ごと後ろへ吹き飛ばされた。
「しまった、門が下りる!」
「名無しちゃん!」
織姫の声も、もう届かない。
ズン…と重い音を立てて、白道門は固く閉ざされた。
***
「さて、と。邪魔者もおらんなったし、大人しく捕まってもらおうか」
「残念、それは無理。破道の七十三『双蓮蒼火墜』!」
詠唱破棄で放つ鬼道が轟音を立てる。
咄嗟に瞬歩で避けた市丸がいた場所は、轟々と炎を上げていた。
「危ない子やなぁ!いつの間に鬼道使えるようになったんや。しかも詠唱破棄とは、たまげたわぁ」
「縛道の六十三『鎖条鎖縛』」
避けた瞬間の隙を見逃さず、太い霊子の鎖が市丸を縛る。
手足の自由を奪って、名無しは冷ややかに市丸を見下ろした。
「お喋りね。本当はアンタをここでぶん殴りたいけど、釘を刺されているからね。しばらくそこで大人しくして。」
「あちゃー油断したわ」
市丸はいつもの調子で軽口を叩くが、笑顔の下ではほんの少しだけ動揺していた。
(あかんわ、ホンマにこの鬼道、ビクともせぇへん。
…藍染隊長。この子、予想より、)
「市丸隊長!大丈夫ですか!?」
少し後ろで控えていた一般隊士が駆け寄る。
彼らに、鬼道を使ったり手の内を見せる必要はない。――圧し潰す。
「邪魔よ。」
名無しが左腕の鎖を耳障りな音を立てて剥ぎ取る。
辺りを息ができない程の霊圧が覆う。
空気が震え、霊圧だけで石畳に亀裂がはしる。
それは酷く重く殺意に満ちたもので。
「う、あ…っ」
隊長格ならまだしも、目の前にいたのは一般隊士。
霊圧に当てられ気絶し、その場に全員崩れ落ちた。
「おーこわ。霊圧だけなら、尸魂界にかなう人間おらんのんちゃうか?」
「興味ない。私は、ただ役目をこなすだけよ。
…あの男に伝えておいてください。『あんたをぶん殴りに来たぞ』って」
それは、まぎれもない宣戦布告。
彼女は瞬歩を使って、瞬きのような早さで瀞霊廷の中へ姿をくらました。
殺気に満ちた双眸。
負の感情が渦巻いた、狂気に近い霊圧は恐ろしいと同時に、少しだけ居心地がよかった。
(藍染隊長。アンタ、どえらい怪物を怒らせてしもうとるで)