#12.5 short story
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溜まりに溜まった仕事を終わらせるため、ボクは技術開発局…ではなく、十二番隊の仮設デスクにいた。
卓袱台のようなテーブルに、一応上等なフカフカの座布団。
というのも、機材が場所を圧迫してテーブルと椅子が置けない状況になっていた。
サインをしては判子をついて、判子をついてはサインをして。
(あぁ、退屈な仕事っス)
マユリに嫌味を言われたり、ひよ里に背中を蹴られたりする方がマシなくらいだ。
欲を言えば、見てて飽きない名無しがここにいれば仕事も幾分か楽しくなるかもしれない。
まぁ今日の彼女は夜一のところへ行っているのだが…
バンッ!
「浦原さん!匿ってください!!」
部屋の扉を開けて入ってきたのは、名無しだ。
ゼーゼーと息を切らせてやってきた様子からして只事ではなさそうだった。
「どしたんっスかぁ、名無しサン。そんな慌てて…」
「ちょっと、野暮用が…って、この部屋隠れる場所が全然ない!機械ばっかじゃないですか!」
絶望感でいっぱいになる彼女の表情。
隠れる場所?なんのことだ?
意識を集中させれば、遠くからこちらへ物凄いスピードで近づいてくる霊圧。
あぁ、何となく察しはついた。
「浦原さん!ごめんなさい、すみません!」
「わ、わわっ!?名無しサン!?」
ボクの隊長羽織を捲って、咄嗟に背中に入り込む名無し。
小柄なおかげで羽織の中に隠れることは出来ているが、如何せん近い。物凄く、近い。
肌寒くなってきた秋だからか、いつもより彼女の体温が高く感じた。
あったかいし、いい匂いがする。
最近女性関係がご無沙汰なせいか、それだけでも物凄くドキドキしてしまった。あぁ情けない。
ゼロ距離にいるのが、最近好意を自覚してしまった大事な女の子なら尚更。
しかし羽織の中とは…隠れるには少し無理があるのではないだろうか。
特に、かくれんぼの鬼が彼女なら分が悪いにも程がある。
「名無し!ここじゃろう!」
スパン!と容赦なく扉を開けたのは夜一だ。
恐らく暇を持て余した彼女がかくれんぼを提案して、名無しが捕まったらとんでもない要求をされる遊びにでも巻き込まれたのだろう。
「なんじゃ、喜助か。名無しを見なんだか?」
夜一の言葉に、背中…もとい、羽織の中で小さく飛び上がる名無し。
息を潜めた呼吸が、死覇装越しにそっとあたたまる。
あぁ、近い近い。顔が緩んでしまうじゃないっスか。
「名無しサン?知らないっスねぇ」
「ほーう。」
一応シラを切ってみるが、恐らくバレてしまっているだろう。
ニヤニヤと笑う夜一は、遊びの天才でもあるけれど、その前に隠密機動の長だ。
ボクの羽織の中で息を潜めている名無しの存在なんて、霊圧を感じずとも分かっているだろう。
あぁ、名無しが見つかって大変な目にあうのも可哀想だし、折角彼女が来たというのに夜一に連れていかれるのも口惜しい。
「ところで喜助。暇しておるようじゃな?」
「いやいや、どう見てもボク、忙しいんっスけど。」
「そんな退屈な仕事、暇に決まっておるじゃろう?」
尊大な、それはもう悪い笑顔で。
夜一がボクを見下ろすように歯を剥いて悪戯っぽく笑う。
……あぁ、なるほど。そういうことか。
「まぁ、退屈といえば退屈っスね」
「ならば仕方あるまい。貸しがひとつ、じゃぞ」
踵を返してヒラヒラと手を振りながら部屋を出ていく夜一。
優雅なその後ろ姿は、あっという間にこの場から立ち去ってしまった。
「……名無しサン、もう大丈夫っスよ。」
「ぷ、はぁ。ありがとうございます、浦原さん!
あー、見つかるかと思った!」
いやいや、恐らく夜一サンにバレてたっスよ。
心の底から安堵する名無しの顔を見て、ボクはぐっと言葉を呑み込んだ。水を差すような真似はよしておこう。
ボクにくっついたまま羽織を捲って顔を出す彼女は、悪戯が成功した子供のような表情だった。
あぁ、可愛いなぁ。
キラキラした笑顔はあまりにも眩しくて目眩を覚えた。
「それにしても羽織の中って、浦原さんの匂いでいっぱいですね」
ふにゃふにゃと呑気に笑いながら、爆弾発言をする名無し。
あぁ、待って欲しい。そんなこと言われたら大人の威厳がグラグラと揺れてしまう。
そうでなくとも(故意ではないとはいえ)抱きついてこられた後なのだ。本当に勘弁してほしい。
もう心拍数が上昇しっぱなしだ。
まるでボクがかくれんぼで隠れている側みたいじゃないっスか。
「お気に召したのならいつでもどうぞ。ここは名無しサン専用の隠れ家っスから」
「あはは。いざとなったらお借りしますね」
羽織の中からスルリと抜け出せば、彼女の体温がなくなった分やけに寒く感じた。
あぁ、秋は人肌恋しくなる季節だ。
本当に心底、そう思う。
「さて。夜一さんも遠くに行ったみたいですし、どうしましょうか。」
「このままここにいればいいじゃないっスかぁ。ボク、暇してるんっスよ」
「でも、お仕事の邪魔じゃないですか?」
「そんなことはないっスよ。ボク、話し相手がいないと作業が捗らなくて。」
まぁ嘘だけど。
どちらかというと一人の方がサクサク作業が出来るが、こんな単純な事務作業になると話は別だ。
ずっとこんなものと睨めっこしていると眠くなってしまう。正直苦手だ。
「じゃあお言葉に甘えて。」
名無しがあどけなく笑いながら、小さなテーブルを挟んで座り込む。
あぁ、夜一サン。
最高の置き土産ありがとう。
キミと鼓動とかくれんぼ
まだ淡いボクの想いも、そっと羽織の中へ隠して。
卓袱台のようなテーブルに、一応上等なフカフカの座布団。
というのも、機材が場所を圧迫してテーブルと椅子が置けない状況になっていた。
サインをしては判子をついて、判子をついてはサインをして。
(あぁ、退屈な仕事っス)
マユリに嫌味を言われたり、ひよ里に背中を蹴られたりする方がマシなくらいだ。
欲を言えば、見てて飽きない名無しがここにいれば仕事も幾分か楽しくなるかもしれない。
まぁ今日の彼女は夜一のところへ行っているのだが…
バンッ!
「浦原さん!匿ってください!!」
部屋の扉を開けて入ってきたのは、名無しだ。
ゼーゼーと息を切らせてやってきた様子からして只事ではなさそうだった。
「どしたんっスかぁ、名無しサン。そんな慌てて…」
「ちょっと、野暮用が…って、この部屋隠れる場所が全然ない!機械ばっかじゃないですか!」
絶望感でいっぱいになる彼女の表情。
隠れる場所?なんのことだ?
意識を集中させれば、遠くからこちらへ物凄いスピードで近づいてくる霊圧。
あぁ、何となく察しはついた。
「浦原さん!ごめんなさい、すみません!」
「わ、わわっ!?名無しサン!?」
ボクの隊長羽織を捲って、咄嗟に背中に入り込む名無し。
小柄なおかげで羽織の中に隠れることは出来ているが、如何せん近い。物凄く、近い。
肌寒くなってきた秋だからか、いつもより彼女の体温が高く感じた。
あったかいし、いい匂いがする。
最近女性関係がご無沙汰なせいか、それだけでも物凄くドキドキしてしまった。あぁ情けない。
ゼロ距離にいるのが、最近好意を自覚してしまった大事な女の子なら尚更。
しかし羽織の中とは…隠れるには少し無理があるのではないだろうか。
特に、かくれんぼの鬼が彼女なら分が悪いにも程がある。
「名無し!ここじゃろう!」
スパン!と容赦なく扉を開けたのは夜一だ。
恐らく暇を持て余した彼女がかくれんぼを提案して、名無しが捕まったらとんでもない要求をされる遊びにでも巻き込まれたのだろう。
「なんじゃ、喜助か。名無しを見なんだか?」
夜一の言葉に、背中…もとい、羽織の中で小さく飛び上がる名無し。
息を潜めた呼吸が、死覇装越しにそっとあたたまる。
あぁ、近い近い。顔が緩んでしまうじゃないっスか。
「名無しサン?知らないっスねぇ」
「ほーう。」
一応シラを切ってみるが、恐らくバレてしまっているだろう。
ニヤニヤと笑う夜一は、遊びの天才でもあるけれど、その前に隠密機動の長だ。
ボクの羽織の中で息を潜めている名無しの存在なんて、霊圧を感じずとも分かっているだろう。
あぁ、名無しが見つかって大変な目にあうのも可哀想だし、折角彼女が来たというのに夜一に連れていかれるのも口惜しい。
「ところで喜助。暇しておるようじゃな?」
「いやいや、どう見てもボク、忙しいんっスけど。」
「そんな退屈な仕事、暇に決まっておるじゃろう?」
尊大な、それはもう悪い笑顔で。
夜一がボクを見下ろすように歯を剥いて悪戯っぽく笑う。
……あぁ、なるほど。そういうことか。
「まぁ、退屈といえば退屈っスね」
「ならば仕方あるまい。貸しがひとつ、じゃぞ」
踵を返してヒラヒラと手を振りながら部屋を出ていく夜一。
優雅なその後ろ姿は、あっという間にこの場から立ち去ってしまった。
「……名無しサン、もう大丈夫っスよ。」
「ぷ、はぁ。ありがとうございます、浦原さん!
あー、見つかるかと思った!」
いやいや、恐らく夜一サンにバレてたっスよ。
心の底から安堵する名無しの顔を見て、ボクはぐっと言葉を呑み込んだ。水を差すような真似はよしておこう。
ボクにくっついたまま羽織を捲って顔を出す彼女は、悪戯が成功した子供のような表情だった。
あぁ、可愛いなぁ。
キラキラした笑顔はあまりにも眩しくて目眩を覚えた。
「それにしても羽織の中って、浦原さんの匂いでいっぱいですね」
ふにゃふにゃと呑気に笑いながら、爆弾発言をする名無し。
あぁ、待って欲しい。そんなこと言われたら大人の威厳がグラグラと揺れてしまう。
そうでなくとも(故意ではないとはいえ)抱きついてこられた後なのだ。本当に勘弁してほしい。
もう心拍数が上昇しっぱなしだ。
まるでボクがかくれんぼで隠れている側みたいじゃないっスか。
「お気に召したのならいつでもどうぞ。ここは名無しサン専用の隠れ家っスから」
「あはは。いざとなったらお借りしますね」
羽織の中からスルリと抜け出せば、彼女の体温がなくなった分やけに寒く感じた。
あぁ、秋は人肌恋しくなる季節だ。
本当に心底、そう思う。
「さて。夜一さんも遠くに行ったみたいですし、どうしましょうか。」
「このままここにいればいいじゃないっスかぁ。ボク、暇してるんっスよ」
「でも、お仕事の邪魔じゃないですか?」
「そんなことはないっスよ。ボク、話し相手がいないと作業が捗らなくて。」
まぁ嘘だけど。
どちらかというと一人の方がサクサク作業が出来るが、こんな単純な事務作業になると話は別だ。
ずっとこんなものと睨めっこしていると眠くなってしまう。正直苦手だ。
「じゃあお言葉に甘えて。」
名無しがあどけなく笑いながら、小さなテーブルを挟んで座り込む。
あぁ、夜一サン。
最高の置き土産ありがとう。
キミと鼓動とかくれんぼ
まだ淡いボクの想いも、そっと羽織の中へ隠して。