#12.5 short story
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
気がつけば、目で追っていた。
戸惑いメランコリック
「名無しサン」
「はい?」
「今日これ貰ったんスけど、いります?」
ピラリと懐から出したのは甘味屋の割引券。
甘いものは嫌いじゃないから普通に受け取ったが、どうやらこれはペアチケットらしい。
「『甘味度 極楽鳥』…すごい名前の店ですね」
「尸魂界では有名店スよ。現世の甘味も取り揃えてるとか」
「なるほど」
彼女手作りの胡麻豆腐を口に運びながらチケットを見る名無しサン。
今日も料理は絶品だ。
「浦原さん、いつ空いてます?」
「へ、」
「え?浦原さんが行きたいんじゃ」
大きな黒い瞳を丸くして、意外そうな顔をする名無しサン。
ボクはひよ里サンと行くんだろう、と勝手に思っていたから、これは不意打ちだった。
「じゃあ、明日」
「明日。また急ですね」
「いいんスよぉ、最近ヒマですし」
「それ言ったら手伝ってるひよ里ちゃん、怒りません?」
まぁ研究職なんて突き詰めてしまえば休みがあるようでないような、完全任意のシフト制だ。
…十二番隊の仕事はどうしたって?
まぁ他の隊に仕事を振られてるからいいんじゃないんスか?
「明日、楽しみっスね」
柄にもなく、少しだけ浮き足立っていた。
彼女と出かけるのはこれで二回目。
一回目はどうやって彼女を元の世界に戻すか、ずっと考えていたからあまり覚えていない。
色々あって彼女の手によって帰す術を壊されてからは、正直少しだけ気が楽になった。
同時にわいてきたのは、彼女への興味。
勿論、底なしの霊力とか15歳程なのにどこか達観した性格だとか、色々興味は元からあった。
でも、そうじゃない。
仕草の癖とか、好きな食べ物とか、寝る時どんな寝相なのかとか。
今までになかった心境の変化だった。
涅サンとどんな話をしているのか、ひよ里サンと何処に行ったとか。
そんな些細なことすら気になる始末だ。
(妙な、気持ちっス)
でも不思議と不愉快ではなかった。
少しだけ、戸惑いはあったけど。
***
「その格好で行くんスか」
「え?」
普段着の作務衣を指さされた。
浦原はどうせいつもの死覇装…と思ったら、普段着なのか出かける用の着物なのか。
少しだけゆるっと着てはいるが、いつもと違う格好だった。しまった。
「や、浦原さんもいつもの格好で行くのかと思って」
「今日はオフっスよぉ。年がら年中、いくら死神でも死覇装は着ませんって」
「そういうもんなんですね」
どうしよう。
『いつも通り』を意識したから、すごく私、失礼じゃないか?
デートでおめかしした女の子が、彼氏がジャージで来た日なんか、デート開始から変な空気になるに決まっている。
(って、浦原さんは彼氏じゃないし)
いや、論点はそこではない。
TPOを弁えなかった私の落ち度だ。恥ずかしい。
「ささ、着替えましょ。お手伝いしますよ」
「はい、…はい!?」
ゴソゴソと箪笥を開けると、明らかに女物の着物。
一度も着ていないものなのだろう、パリッと糊がきいた新品のものばかりだった。
京楽のように女物の羽織を着る趣味がなければ、それは恐らく、
「どれにしましょうかねぇ」
「あの、浦原さん?それ」
「春ですし、暖色の着物もいいっスね」
完全に無視だ。
作務衣上から羽織らせて、あれこれ勝手に決める浦原。
買ってきたのか?彼が?いつの間に?どうして?
色々ぐるぐる脳内を巡るが、きっとどれを言葉にしてもヒラリと躱されてしまうだろう。
「名無しサン、着物の着付けは?」
「…精々浴衣くらいしか着れませんけど」
「なら良かった」
良かった?
何が?
「さー、着付けて差し上げますよー」
「……はい!?」
「大丈夫大丈夫、目を瞑っても出来るスよ、ボク。目を瞑る保証はしませんけど」
「なんでそこで保証しないんですか!!」
戸惑いメランコリック
「名無しサン」
「はい?」
「今日これ貰ったんスけど、いります?」
ピラリと懐から出したのは甘味屋の割引券。
甘いものは嫌いじゃないから普通に受け取ったが、どうやらこれはペアチケットらしい。
「『甘味度 極楽鳥』…すごい名前の店ですね」
「尸魂界では有名店スよ。現世の甘味も取り揃えてるとか」
「なるほど」
彼女手作りの胡麻豆腐を口に運びながらチケットを見る名無しサン。
今日も料理は絶品だ。
「浦原さん、いつ空いてます?」
「へ、」
「え?浦原さんが行きたいんじゃ」
大きな黒い瞳を丸くして、意外そうな顔をする名無しサン。
ボクはひよ里サンと行くんだろう、と勝手に思っていたから、これは不意打ちだった。
「じゃあ、明日」
「明日。また急ですね」
「いいんスよぉ、最近ヒマですし」
「それ言ったら手伝ってるひよ里ちゃん、怒りません?」
まぁ研究職なんて突き詰めてしまえば休みがあるようでないような、完全任意のシフト制だ。
…十二番隊の仕事はどうしたって?
まぁ他の隊に仕事を振られてるからいいんじゃないんスか?
「明日、楽しみっスね」
柄にもなく、少しだけ浮き足立っていた。
彼女と出かけるのはこれで二回目。
一回目はどうやって彼女を元の世界に戻すか、ずっと考えていたからあまり覚えていない。
色々あって彼女の手によって帰す術を壊されてからは、正直少しだけ気が楽になった。
同時にわいてきたのは、彼女への興味。
勿論、底なしの霊力とか15歳程なのにどこか達観した性格だとか、色々興味は元からあった。
でも、そうじゃない。
仕草の癖とか、好きな食べ物とか、寝る時どんな寝相なのかとか。
今までになかった心境の変化だった。
涅サンとどんな話をしているのか、ひよ里サンと何処に行ったとか。
そんな些細なことすら気になる始末だ。
(妙な、気持ちっス)
でも不思議と不愉快ではなかった。
少しだけ、戸惑いはあったけど。
***
「その格好で行くんスか」
「え?」
普段着の作務衣を指さされた。
浦原はどうせいつもの死覇装…と思ったら、普段着なのか出かける用の着物なのか。
少しだけゆるっと着てはいるが、いつもと違う格好だった。しまった。
「や、浦原さんもいつもの格好で行くのかと思って」
「今日はオフっスよぉ。年がら年中、いくら死神でも死覇装は着ませんって」
「そういうもんなんですね」
どうしよう。
『いつも通り』を意識したから、すごく私、失礼じゃないか?
デートでおめかしした女の子が、彼氏がジャージで来た日なんか、デート開始から変な空気になるに決まっている。
(って、浦原さんは彼氏じゃないし)
いや、論点はそこではない。
TPOを弁えなかった私の落ち度だ。恥ずかしい。
「ささ、着替えましょ。お手伝いしますよ」
「はい、…はい!?」
ゴソゴソと箪笥を開けると、明らかに女物の着物。
一度も着ていないものなのだろう、パリッと糊がきいた新品のものばかりだった。
京楽のように女物の羽織を着る趣味がなければ、それは恐らく、
「どれにしましょうかねぇ」
「あの、浦原さん?それ」
「春ですし、暖色の着物もいいっスね」
完全に無視だ。
作務衣上から羽織らせて、あれこれ勝手に決める浦原。
買ってきたのか?彼が?いつの間に?どうして?
色々ぐるぐる脳内を巡るが、きっとどれを言葉にしてもヒラリと躱されてしまうだろう。
「名無しサン、着物の着付けは?」
「…精々浴衣くらいしか着れませんけど」
「なら良かった」
良かった?
何が?
「さー、着付けて差し上げますよー」
「……はい!?」
「大丈夫大丈夫、目を瞑っても出来るスよ、ボク。目を瞑る保証はしませんけど」
「なんでそこで保証しないんですか!!」