浦原隊長の食卓シリーズ
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鼻腔をくすぐる、独特の香り。
どこか慣れ親しんだような匂いに、思わず二度・三度と息を吸い込んでしまう。
「どしたんっスかぁ?」
「いえ、梅の匂いがするな…って。」
隣を歩いていた浦原が、下駄の乾いた音を立てながらやんわり問うてくる。
先程名無しがしたように、鼻をスン・と鳴らせば「あぁ、確かに。」と小さく頷いた。
「寒い日が続きますけど、もうすぐ春ですね」
「そうっスねぇ。こうも寒いと年寄りには堪えて仕方ないっスから、早く暖かくなればいいんスけど。」
襟巻にもっふり顔を埋めて、浦原がふんわり白い吐息を吐き出す。
確かに、どちらかというと低体温の彼にとって、冬は少しばかり過ごしにくい季節だろう。
「梅といえば…梅酒とか自家製で作るのもいいかもしれませんね。」
「へぇ、そんな簡単に作れるモンなんっスか?」
「お酒と氷砂糖があれば。梅酒以外にも、梅ジュースとか作れますよ」
ヘタを竹串で取る作業は少し手間だが、まぁ手馴れたものだ。
店で買う既製品ももちろん美味しいが、自家製というのも中々乙なもので。
勿論、名無し自身は未成年なので梅酒の出来を味見することは出来ないのだけど。
「お、イイっスねぇ。じゃあ次の春は梅酒作りっスか?」
「はい。大体一年くらい漬けると美味しくなりますよ」
「はー、楽しみっスねぇ」
カランコロン。と。
機嫌よく笑うように、下駄の軽やかな音が瀞霊廷の石畳へ鳴り響く。
まるで浦原の浮き足立つ心が、音になって喋るように。
「梅酒が出来たらピッタリのおつまみ作りますね」
「お。そりゃ楽しみっスね」
浦原隊長の食卓-番外編#梅
(一年後、ねぇ)
人の生は、死神からすれば瞬きをするような早さで消えてしまう。
目まぐるしい生と死の循環。
それは見慣れたもので『当たり前』のことだ。
――あぁ。こんな些細でささやかな約束が、ずっと毎年出来たらいいのに。
(なんて、平子サンに聞かれたら笑われちゃいそうっスね)
いつもの隊首私室へ向かう帰路の中、梅の花を見つけてはしゃぐ名無しをぼんやり眺めながら、ボクは護廷十三隊隊長らしかぬことを、思うのだった。
それは蕾よりも小さな、咲くかも分からぬ恋心。
どこか慣れ親しんだような匂いに、思わず二度・三度と息を吸い込んでしまう。
「どしたんっスかぁ?」
「いえ、梅の匂いがするな…って。」
隣を歩いていた浦原が、下駄の乾いた音を立てながらやんわり問うてくる。
先程名無しがしたように、鼻をスン・と鳴らせば「あぁ、確かに。」と小さく頷いた。
「寒い日が続きますけど、もうすぐ春ですね」
「そうっスねぇ。こうも寒いと年寄りには堪えて仕方ないっスから、早く暖かくなればいいんスけど。」
襟巻にもっふり顔を埋めて、浦原がふんわり白い吐息を吐き出す。
確かに、どちらかというと低体温の彼にとって、冬は少しばかり過ごしにくい季節だろう。
「梅といえば…梅酒とか自家製で作るのもいいかもしれませんね。」
「へぇ、そんな簡単に作れるモンなんっスか?」
「お酒と氷砂糖があれば。梅酒以外にも、梅ジュースとか作れますよ」
ヘタを竹串で取る作業は少し手間だが、まぁ手馴れたものだ。
店で買う既製品ももちろん美味しいが、自家製というのも中々乙なもので。
勿論、名無し自身は未成年なので梅酒の出来を味見することは出来ないのだけど。
「お、イイっスねぇ。じゃあ次の春は梅酒作りっスか?」
「はい。大体一年くらい漬けると美味しくなりますよ」
「はー、楽しみっスねぇ」
カランコロン。と。
機嫌よく笑うように、下駄の軽やかな音が瀞霊廷の石畳へ鳴り響く。
まるで浦原の浮き足立つ心が、音になって喋るように。
「梅酒が出来たらピッタリのおつまみ作りますね」
「お。そりゃ楽しみっスね」
浦原隊長の食卓-番外編#梅
(一年後、ねぇ)
人の生は、死神からすれば瞬きをするような早さで消えてしまう。
目まぐるしい生と死の循環。
それは見慣れたもので『当たり前』のことだ。
――あぁ。こんな些細でささやかな約束が、ずっと毎年出来たらいいのに。
(なんて、平子サンに聞かれたら笑われちゃいそうっスね)
いつもの隊首私室へ向かう帰路の中、梅の花を見つけてはしゃぐ名無しをぼんやり眺めながら、ボクは護廷十三隊隊長らしかぬことを、思うのだった。
それは蕾よりも小さな、咲くかも分からぬ恋心。