星霜を辿る
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五月に入って言い渡された、名無しと二人きりの任務の時のことだ。
「名無しはいつも飴を持ち歩いてるよね。好きなのかい?」
ミント味ののど飴をもらった私は、つい反射的に尋ねた。
甘ったるいキャンディから風邪気味の時に重宝しそうなのど飴まで、彼のポケットには常に何かしら入っていた。
「僕?まぁ、それなりに。いるかと思って。…あ、飴が苦手ならガムもあるよ」
「何の話だい?」
「夏油くんの話。」
「私?」
甘いものが好きなんて言った覚えがないんだけど。
悟と間違えているのかな、なんて首を傾げたが、どうやら本当に私の話だったらしい。
「口直し、いらない?」
何の、とは言わない。
今は任務帰りだ。周りには非呪術師もいる。
怪しまれぬよう、自然な会話の範疇で収めたいのだろう。
「……それはまぁ、欲しいな。」
「甘いのとミント系だったら?」
「ミントかな」
「ふんふん、了解」と頷きながら、彼はポケットの中を漁る。
取り出したのは甘ったるいいちごミルクの飴。
美味しそうに頬張る表情から察するに、彼も悟と同じように甘党なのかもしれない。
「じゃなくて、ちょっと待った。」
「何?」
「なんで」
「なんでって、そりゃあ毎度丸呑みだから。あ、暫く飲食ダメとかある?」
「いや…別にそんな毎食後の薬じゃあるまいし」
呪霊を飲み込む行為だって、術式的な都合である。
味は最悪のくせに、当然腹は膨れない。本来なら好き好んで飲み込みたいものではない。
一呼吸置く。
「そんな不味そうに飲み込んでたかい?」
なるべく表情に出さないようにしていたつもりだ。
不味そうに飲み込んだところで周りに気を使わせるだけだ。しかし取り込まなければ術式は使えない。
こんな吐瀉物を拭いた雑巾みたいな、気を抜けば嘔吐いてしまいそうな味を、誰かに話したところで無駄だと思っていた。
「いや、表情ひとつ変えていなかったよ」
「じゃあ、」
「だって美味しいわけないよな、と思って。」
ただの彼の想像力の賜物だった。
「もしかして余計な世話だった?」
「…いや。そんな風に言われたのは初めてだったから驚いただけだよ」
私がそう答えると、名無しはどこか自慢げに目を細めて笑った。
所謂、ドヤ顔というやつだ。
「イイヤツでしょ。」
「自分で言うかな?そういうこと」
06.ポケットの中にあるもの
「良いやつだよ、名無しは。」
「名無しはいつも飴を持ち歩いてるよね。好きなのかい?」
ミント味ののど飴をもらった私は、つい反射的に尋ねた。
甘ったるいキャンディから風邪気味の時に重宝しそうなのど飴まで、彼のポケットには常に何かしら入っていた。
「僕?まぁ、それなりに。いるかと思って。…あ、飴が苦手ならガムもあるよ」
「何の話だい?」
「夏油くんの話。」
「私?」
甘いものが好きなんて言った覚えがないんだけど。
悟と間違えているのかな、なんて首を傾げたが、どうやら本当に私の話だったらしい。
「口直し、いらない?」
何の、とは言わない。
今は任務帰りだ。周りには非呪術師もいる。
怪しまれぬよう、自然な会話の範疇で収めたいのだろう。
「……それはまぁ、欲しいな。」
「甘いのとミント系だったら?」
「ミントかな」
「ふんふん、了解」と頷きながら、彼はポケットの中を漁る。
取り出したのは甘ったるいいちごミルクの飴。
美味しそうに頬張る表情から察するに、彼も悟と同じように甘党なのかもしれない。
「じゃなくて、ちょっと待った。」
「何?」
「なんで」
「なんでって、そりゃあ毎度丸呑みだから。あ、暫く飲食ダメとかある?」
「いや…別にそんな毎食後の薬じゃあるまいし」
呪霊を飲み込む行為だって、術式的な都合である。
味は最悪のくせに、当然腹は膨れない。本来なら好き好んで飲み込みたいものではない。
一呼吸置く。
「そんな不味そうに飲み込んでたかい?」
なるべく表情に出さないようにしていたつもりだ。
不味そうに飲み込んだところで周りに気を使わせるだけだ。しかし取り込まなければ術式は使えない。
こんな吐瀉物を拭いた雑巾みたいな、気を抜けば嘔吐いてしまいそうな味を、誰かに話したところで無駄だと思っていた。
「いや、表情ひとつ変えていなかったよ」
「じゃあ、」
「だって美味しいわけないよな、と思って。」
ただの彼の想像力の賜物だった。
「もしかして余計な世話だった?」
「…いや。そんな風に言われたのは初めてだったから驚いただけだよ」
私がそう答えると、名無しはどこか自慢げに目を細めて笑った。
所謂、ドヤ顔というやつだ。
「イイヤツでしょ。」
「自分で言うかな?そういうこと」
06.ポケットの中にあるもの
「良いやつだよ、名無しは。」