星霜を辿る
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古来より陰陽師とは──
陰陽五行説や道教を基に占術、祈祷、呪術の行使をしていたと記録に残っている。
その中には天体の観測をもとに、吉凶の占いや時間の測定も含まれている。
天元から渡された、とある呪物。
『使い方は、君に任せるよ』
そう言われ、渡されたもの。
呪術界の防人となった彼女 はこうなることを知っていたのだろうか。
それとも『私』の古い知人だからこうなることを見越していたのだろうか。
もしかすると──私の遥か未来に吠えるであろう慟哭を、この呪物を作った人物は予見していたのかもしれない。
星見の彼女はもう過去の人となり、その真意を問い詰めることは叶わない。
だからこそこの呪物を使う判断は、私自身の『もうどうしようもなくなってしまった』と腹を括る覚悟に委ねられたのだ。
もう、誰もいない。
賑やかだったあの学び舎。
快活な笑顔が眩しくて、どことなく境遇が似ていた男の子。
おしゃれが好きで勝気だった女の子。
誰よりも鍛錬を怠らなかったストイックだった女の子。
不自由な語彙であるにも関わらず、茶目っ気のあった男の子。
気配りが上手で、やわらかくて温かだったふわふわの男の子。
気が弱くとも最後まで勝つことを諦めなかった男の子。
やんちゃな見た目に反して常識人だった男の子。
そんな男の子を放っておけなかった女の子みたいな男の子。
いつも周りに振り回されながらも、どんな時も優しさを手放さなかったあの人。
厳しさの中に温かさがあった、学び舎を守っていたあの人。
いつか一級になるぞ、と意気込んでいた後輩の男の子。
何度も任務で助けてくれた、頼もしいあの人。
他人よりもよっぽど疲れた顔色なのに、いつも『おかえり、お疲れ様』と笑ってくれたあの人。
そして──
ぶっきらぼうで、誰よりも器用なくせに不器用な男の子は、呪いに呑まれ、何もかもを鏖殺する『呪いの王』に君臨した。してしまった。
これ以上最悪な状況があるだろうか。
忌み嫌い続けたこの身体 がなければ、私などとっくの前に死んでいただろう。
それでも私を生かすのは、皮肉なことにこの呪いのお陰だ。
息を、吸う。
焦げた臭い。焦土と化した、街だった場所。目の前の景色は文字通り《地獄絵図》だ。
気を抜けば手放してしまいそうな正気を必死に手繰り寄せ、私は震える手で古めかしい巻子本を紐解いた。
古い紙。本来なら枯葉を砕くような乾いた音がするであろう巻物は、広げられるのを待ち侘びていたか反物の様にするりと解けた。
「 !」
銀朱の髪を逆立て、私の名前を吼えるように呼ぶ。
呪いの王の表情を彩るものは、憤怒か、それとも柄にもない焦燥だろうか。
それでも止めない。止められない。私はもう、選んだのだ。
血濡れとなった二対の腕がこちらへ伸ばされ、展開した術式を止めようと私の肩を掴まれる。
(あ。)
身体が、解ける。
人外じみた力に掴まれて砕かれたのではない。
眩い粒子。光の粉。紅茶にとける砂糖のように、肉体が崩れるのは呆気ないものだった。
嫌という程思い知った《死》の痛み。
それでも至ることはなかった《死》という境地。
しかしこれは全く別物だ。これが《星読み》を極めた、陰陽師の極地だというのか。
とける、ほどける、流れていく。
時間という波に逆らって、わたしの魂は遥か過去に連れていかれる。
向かう先は、2005年。
春を迎えるその前。
──そうだ、どうせなら冬がいい。
彼と出会った、あの季節。
00.拝啓 2005年のあなたへ
眩いくらいの白銀と、澄んだ蒼にもう一度。
私は、時を超えて逢いに行く。
陰陽五行説や道教を基に占術、祈祷、呪術の行使をしていたと記録に残っている。
その中には天体の観測をもとに、吉凶の占いや時間の測定も含まれている。
天元から渡された、とある呪物。
『使い方は、君に任せるよ』
そう言われ、渡されたもの。
呪術界の防人となった
それとも『私』の古い知人だからこうなることを見越していたのだろうか。
もしかすると──私の遥か未来に吠えるであろう慟哭を、この呪物を作った人物は予見していたのかもしれない。
星見の彼女はもう過去の人となり、その真意を問い詰めることは叶わない。
だからこそこの呪物を使う判断は、私自身の『もうどうしようもなくなってしまった』と腹を括る覚悟に委ねられたのだ。
もう、誰もいない。
賑やかだったあの学び舎。
快活な笑顔が眩しくて、どことなく境遇が似ていた男の子。
おしゃれが好きで勝気だった女の子。
誰よりも鍛錬を怠らなかったストイックだった女の子。
不自由な語彙であるにも関わらず、茶目っ気のあった男の子。
気配りが上手で、やわらかくて温かだったふわふわの男の子。
気が弱くとも最後まで勝つことを諦めなかった男の子。
やんちゃな見た目に反して常識人だった男の子。
そんな男の子を放っておけなかった女の子みたいな男の子。
いつも周りに振り回されながらも、どんな時も優しさを手放さなかったあの人。
厳しさの中に温かさがあった、学び舎を守っていたあの人。
いつか一級になるぞ、と意気込んでいた後輩の男の子。
何度も任務で助けてくれた、頼もしいあの人。
他人よりもよっぽど疲れた顔色なのに、いつも『おかえり、お疲れ様』と笑ってくれたあの人。
そして──
ぶっきらぼうで、誰よりも器用なくせに不器用な男の子は、呪いに呑まれ、何もかもを鏖殺する『呪いの王』に君臨した。してしまった。
これ以上最悪な状況があるだろうか。
忌み嫌い続けたこの
それでも私を生かすのは、皮肉なことにこの呪いのお陰だ。
息を、吸う。
焦げた臭い。焦土と化した、街だった場所。目の前の景色は文字通り《地獄絵図》だ。
気を抜けば手放してしまいそうな正気を必死に手繰り寄せ、私は震える手で古めかしい巻子本を紐解いた。
古い紙。本来なら枯葉を砕くような乾いた音がするであろう巻物は、広げられるのを待ち侘びていたか反物の様にするりと解けた。
「 !」
銀朱の髪を逆立て、私の名前を吼えるように呼ぶ。
呪いの王の表情を彩るものは、憤怒か、それとも柄にもない焦燥だろうか。
それでも止めない。止められない。私はもう、選んだのだ。
血濡れとなった二対の腕がこちらへ伸ばされ、展開した術式を止めようと私の肩を掴まれる。
(あ。)
身体が、解ける。
人外じみた力に掴まれて砕かれたのではない。
眩い粒子。光の粉。紅茶にとける砂糖のように、肉体が崩れるのは呆気ないものだった。
嫌という程思い知った《死》の痛み。
それでも至ることはなかった《死》という境地。
しかしこれは全く別物だ。これが《星読み》を極めた、陰陽師の極地だというのか。
とける、ほどける、流れていく。
時間という波に逆らって、わたしの魂は遥か過去に連れていかれる。
向かう先は、2005年。
春を迎えるその前。
──そうだ、どうせなら冬がいい。
彼と出会った、あの季節。
00.拝啓 2005年のあなたへ
眩いくらいの白銀と、澄んだ蒼にもう一度。
私は、時を超えて逢いに行く。
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