泡影に游ぐ
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とある、任務帰り。
ザァザァと雨が降りしきる中、補助監督が運転するセダン車は高専への帰路を辿っていた。
硝子は助手席に陣取って、傑は補助監督のすぐ真後ろ。俺は硝子の後ろ。
小柄なななしは必然的に後部座席の真ん中で、俺と傑によって両側から挟まれていた。
任務で草臥れたのか雨音が心地いいのか、珍しくななしはうつらうつらと船を漕いでいる。
小さな頭が頼りなさげにユラユラと揺れて、張子の虎のようにコクコク頷いていた。
傑もそれが気になるらしく窓の外の景色へ釘付けになったいた視線を、チラチラとななしへ向けている始末。
俺はと言うと携帯をポチポチ触りながら、あまり気にしないようにしていたのだけれど――
ガタン、
電車の踏切を越えて、クルマが不意に大きく揺れる。
ゴツ、とななしの石頭が当たり、覚束なく揺れていた頭が遂に着地地点を見つけたようだった。
――俺の二の腕で。
呑気に立てられる寝息に乱れはない。
むしろ気持ち良さそうに寝ていてちょっとだけ憎らしいくらいだった。
「悟、」
傑が声を抑えて俺を呼ぶ。
起こすな、って言いたいんだろ。流石に俺だってそこまで鬼畜じゃねーよ。
「へいへい。」
携帯を弄っていた手を、右手から左手へ。
俺の利き手は完全に同級生の枕と化した。
老若男女含め、俺の腕で呑気に寝る大物はコイツくらいなものだろう。
いや。適当に身体を重ねた女が垂れかかって来ることはあるが、それを甘んじて受け入れたことは一度もなかった。
だって気持ち悪いだろ。セックスした後で、汗ばんだ身体でベタベタ触られんの。
(……そいやコイツに触るのは別に何ともなかったな。)
東京駅で成り行きとはいえ、コイツの手を引いた時。
思っていた以上にやわらかくて、あたたかくて、他人に触れた時の不快さは
――不思議と微塵もなかった。
雨音と寝息
「オイ、着いたぞ。起きろ寝坊助。」
右肩を雑に揺らせば、ななしはとろんと寝惚けた顔のまま目を擦った。
「う、わっ。ごめん、寝てた…」
「おーおー。人の腕を枕にしてな。爆睡だったな〜。腕が痺れて痛てぇな〜」
まるでちゃちな当たり屋のような言い分だと、俺自身笑ってしまいそうになる。
だが目の前のクソ真面目な同級生は本気にしてしまったようだ。申し訳なさそうに顔をくしゃりと歪め、後ろめたそうに抗議してきた。
「ぐ……だったら起こしてくれてもよかったじゃないか…無下限ガードだって、あるんだし…」
「あー」
言われたらそうだな。
だけど、
「それとこれとは話は別。」
「なにそれ…」
起こすのがちょっとだけ可哀想だったとか、意外と心地いい重みだったとか、死んでも言わねー。
「さぁて、と。どう落とし前つけてもらおうか」
「五条くん、言ってることがヤクザだよ…」
ザァザァと雨が降りしきる中、補助監督が運転するセダン車は高専への帰路を辿っていた。
硝子は助手席に陣取って、傑は補助監督のすぐ真後ろ。俺は硝子の後ろ。
小柄なななしは必然的に後部座席の真ん中で、俺と傑によって両側から挟まれていた。
任務で草臥れたのか雨音が心地いいのか、珍しくななしはうつらうつらと船を漕いでいる。
小さな頭が頼りなさげにユラユラと揺れて、張子の虎のようにコクコク頷いていた。
傑もそれが気になるらしく窓の外の景色へ釘付けになったいた視線を、チラチラとななしへ向けている始末。
俺はと言うと携帯をポチポチ触りながら、あまり気にしないようにしていたのだけれど――
ガタン、
電車の踏切を越えて、クルマが不意に大きく揺れる。
ゴツ、とななしの石頭が当たり、覚束なく揺れていた頭が遂に着地地点を見つけたようだった。
――俺の二の腕で。
呑気に立てられる寝息に乱れはない。
むしろ気持ち良さそうに寝ていてちょっとだけ憎らしいくらいだった。
「悟、」
傑が声を抑えて俺を呼ぶ。
起こすな、って言いたいんだろ。流石に俺だってそこまで鬼畜じゃねーよ。
「へいへい。」
携帯を弄っていた手を、右手から左手へ。
俺の利き手は完全に同級生の枕と化した。
老若男女含め、俺の腕で呑気に寝る大物はコイツくらいなものだろう。
いや。適当に身体を重ねた女が垂れかかって来ることはあるが、それを甘んじて受け入れたことは一度もなかった。
だって気持ち悪いだろ。セックスした後で、汗ばんだ身体でベタベタ触られんの。
(……そいやコイツに触るのは別に何ともなかったな。)
東京駅で成り行きとはいえ、コイツの手を引いた時。
思っていた以上にやわらかくて、あたたかくて、他人に触れた時の不快さは
――不思議と微塵もなかった。
雨音と寝息
「オイ、着いたぞ。起きろ寝坊助。」
右肩を雑に揺らせば、ななしはとろんと寝惚けた顔のまま目を擦った。
「う、わっ。ごめん、寝てた…」
「おーおー。人の腕を枕にしてな。爆睡だったな〜。腕が痺れて痛てぇな〜」
まるでちゃちな当たり屋のような言い分だと、俺自身笑ってしまいそうになる。
だが目の前のクソ真面目な同級生は本気にしてしまったようだ。申し訳なさそうに顔をくしゃりと歪め、後ろめたそうに抗議してきた。
「ぐ……だったら起こしてくれてもよかったじゃないか…無下限ガードだって、あるんだし…」
「あー」
言われたらそうだな。
だけど、
「それとこれとは話は別。」
「なにそれ…」
起こすのがちょっとだけ可哀想だったとか、意外と心地いい重みだったとか、死んでも言わねー。
「さぁて、と。どう落とし前つけてもらおうか」
「五条くん、言ってることがヤクザだよ…」