(daydream)short story
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「名無し、いるかい?」
土曜日。
寮の管理人室をノックして開ければ、テレビに釘付けになっている女の子が一人。
いや。正確には女の子と言える年齢ではもうないのかもしれないし、女性と言うべきなのは分かっているのだが……。
高校一年生程の年齢で見た目が止まっているせいで、どうしてもまだ子供扱いしてしまう。気をつけなければ。
「あ、夏油さん。すみません、どうされました?」
彼女の視線から逸らされた映像。
羊毛フェルトのアニメーション。
……モルモット?と、車を合わせたような、謎の生き物が、ファミレスと思しき駐車場で大暴れしている。
そう、これは昔見た………
「……ニャッキ?」
「…え?あぁ。テレビ。
惜しいです。ストップモーションアニメなのは同じですけど。」
車内放置された猫。
どんどん上がる気温。
なぜか焦るモルモットらしき車。
行政の手続きの件で知っていたら教えて欲しいと思っていたのに、つい釘付けになってしまう。なんだ、これ。
「最近流行ってるPUI PUIモ〇カーってアニメです。」
「PUI PUIモル〇ー。」
「気になっているなら見られますか?」
にこにこと人のいい笑顔で勧めてくる名無し。
結末が気になってしまい、私は「じゃあ…」と頷いてしまった。
それが、沼だとも知らずに。
PUIPUI夏油くん
「人間は悪だ………」
「そこまで言います?」
名無しが録り溜めていたモルカーのアニメを見終わり、私の口から出た感想はこの一言に尽きた。
渋滞を気にしないマナーのなっていない男。
忠実に主人の帰りを待っていたモルカーを脅す銀行強盗。
可愛い猫を真夏の炎天下に車内放置する女。
ゴミ捨てをし、モルカーにゴミを食べさせる男。
よし。非呪術師、滅ぼそう。
「過激な思想は控えて下さいね、夏油さん。」
「名無し、心を読むのはやめないか?」
「いえ。顔に出ていたので。」
悪い顔してましたよ。
そう言って屈託なく笑う彼女は、どこか灰原に似ていた。
「しかし……いいね…モルカー…。菜々子と美々子にも教えてあげよう…」
「喜ぶんじゃないですかね、多分。」
女子高生は大抵こういう可愛い&シュールなものが流行ると相場は決まっている。
いや。そんなことがなくとも、きっとあの二人は喜んでくれる。そんな予感がした。
そんな新しい発見に満ち足りた気持ちでいると、突如開かれる管理人室のドア。
ノックもなしに、無遠慮に入ってきたのは――
「名無し〜、デートしよ…って、何で傑がいるのさ。」
親の顔よりも見飽きた親友の顔。
久しぶりに見た私服の姿は、誘う前から既にデートに行く気満々といったところか。
「モルカー鑑賞会だよ。」
「え?なんて?モル?」
サングラスをズラしながら怪訝そうに問う悟。
どうやら悟はモルカーを知らないらしい。
きっとあぁいうアニメを見ても『ふ〜ん』と味気のない反応しか返ってこないと踏んだのだろう。
名無しの予想は当たらずとも遠からず……といったところか。悟の事をよく分かっている。
カジュアルながらも洒落こんだ悟と、モルカー第二話の映像が流れるテレビを見比べる名無し。
黒々とした丸い目を、悪戯っ子のように細めてくすりと笑った。
「夏油さん、夏油さん。」
「ん?」
服の裾を軽く引かれる。
菜々子や美々子に対してしてしまう――つまりいつもの癖で、私は腰を小さく屈めた。
「――ご覧下さい、これが銀行強盗シロモが人間になった姿です。」
「ぶっ」
既視感。
そう。モルカー第二話で出てきたシロモは、銀行強盗に利用される際に、目隠しのような黒いハチマキを巻かれた。
白い身体。
黒い目隠し。(今はサングラスだが)
だが、
「ククッ…名無し…悟はあそこまで可愛くないよ…」
「お?傑。喧嘩売られてるのは分かるぞ〜?」
ジトリと不満そうに私を睨んでくる悟。
これは『喧嘩売られている』からではなく、どちらかというと『名無しと共通の話題を持っている』ことからの嫉妬心だろう。
悟の独占欲に関しては、大人になるにつれ子供じみてきているような気がしてならない。
物事にあまり興味も分別もなかった学生時代に比べて人間らしくなったとはいえ――執着される側からしたらいい迷惑かもしれない。
そこまで考えて、ふと気がつく。
……いや。そんな悟の子供っぽいところも、人格破綻しているところも、世間一般から見てちょっとアレなところも、あまり意に介さずいなしてしまうのがななし名無しという人物だったことを思い出した。
「あ、それもそうですね。実際の五条さんはカッコイイですし。」
息を吐くように出てくる言葉。
名無しのそれには裏表がない。
だからこそ性根がひねくれた悟にはよく『効く』。
「名無し〜〜〜そういうとこだぞ〜?」
「う、わ、やめてください。禿げたらどうしてくれるんですか!」
くしゃくしゃくしゃくしゃと名無しの黒髪を執拗に撫で回す悟。
あれだけ顔面偏差値がいい男に対して、露骨に嫌そうな顔をする名無しも名無しだ。大物と言えるだろう。
さて。長居して親友の機嫌を損ねてもいけない。
書類の件は脳筋学長にでも聞くことにしよう。
……ついでに、モルカーの形をした呪骸が作れないか打診もして。
土曜日。
寮の管理人室をノックして開ければ、テレビに釘付けになっている女の子が一人。
いや。正確には女の子と言える年齢ではもうないのかもしれないし、女性と言うべきなのは分かっているのだが……。
高校一年生程の年齢で見た目が止まっているせいで、どうしてもまだ子供扱いしてしまう。気をつけなければ。
「あ、夏油さん。すみません、どうされました?」
彼女の視線から逸らされた映像。
羊毛フェルトのアニメーション。
……モルモット?と、車を合わせたような、謎の生き物が、ファミレスと思しき駐車場で大暴れしている。
そう、これは昔見た………
「……ニャッキ?」
「…え?あぁ。テレビ。
惜しいです。ストップモーションアニメなのは同じですけど。」
車内放置された猫。
どんどん上がる気温。
なぜか焦るモルモットらしき車。
行政の手続きの件で知っていたら教えて欲しいと思っていたのに、つい釘付けになってしまう。なんだ、これ。
「最近流行ってるPUI PUIモ〇カーってアニメです。」
「PUI PUIモル〇ー。」
「気になっているなら見られますか?」
にこにこと人のいい笑顔で勧めてくる名無し。
結末が気になってしまい、私は「じゃあ…」と頷いてしまった。
それが、沼だとも知らずに。
PUIPUI夏油くん
「人間は悪だ………」
「そこまで言います?」
名無しが録り溜めていたモルカーのアニメを見終わり、私の口から出た感想はこの一言に尽きた。
渋滞を気にしないマナーのなっていない男。
忠実に主人の帰りを待っていたモルカーを脅す銀行強盗。
可愛い猫を真夏の炎天下に車内放置する女。
ゴミ捨てをし、モルカーにゴミを食べさせる男。
よし。非呪術師、滅ぼそう。
「過激な思想は控えて下さいね、夏油さん。」
「名無し、心を読むのはやめないか?」
「いえ。顔に出ていたので。」
悪い顔してましたよ。
そう言って屈託なく笑う彼女は、どこか灰原に似ていた。
「しかし……いいね…モルカー…。菜々子と美々子にも教えてあげよう…」
「喜ぶんじゃないですかね、多分。」
女子高生は大抵こういう可愛い&シュールなものが流行ると相場は決まっている。
いや。そんなことがなくとも、きっとあの二人は喜んでくれる。そんな予感がした。
そんな新しい発見に満ち足りた気持ちでいると、突如開かれる管理人室のドア。
ノックもなしに、無遠慮に入ってきたのは――
「名無し〜、デートしよ…って、何で傑がいるのさ。」
親の顔よりも見飽きた親友の顔。
久しぶりに見た私服の姿は、誘う前から既にデートに行く気満々といったところか。
「モルカー鑑賞会だよ。」
「え?なんて?モル?」
サングラスをズラしながら怪訝そうに問う悟。
どうやら悟はモルカーを知らないらしい。
きっとあぁいうアニメを見ても『ふ〜ん』と味気のない反応しか返ってこないと踏んだのだろう。
名無しの予想は当たらずとも遠からず……といったところか。悟の事をよく分かっている。
カジュアルながらも洒落こんだ悟と、モルカー第二話の映像が流れるテレビを見比べる名無し。
黒々とした丸い目を、悪戯っ子のように細めてくすりと笑った。
「夏油さん、夏油さん。」
「ん?」
服の裾を軽く引かれる。
菜々子や美々子に対してしてしまう――つまりいつもの癖で、私は腰を小さく屈めた。
「――ご覧下さい、これが銀行強盗シロモが人間になった姿です。」
「ぶっ」
既視感。
そう。モルカー第二話で出てきたシロモは、銀行強盗に利用される際に、目隠しのような黒いハチマキを巻かれた。
白い身体。
黒い目隠し。(今はサングラスだが)
だが、
「ククッ…名無し…悟はあそこまで可愛くないよ…」
「お?傑。喧嘩売られてるのは分かるぞ〜?」
ジトリと不満そうに私を睨んでくる悟。
これは『喧嘩売られている』からではなく、どちらかというと『名無しと共通の話題を持っている』ことからの嫉妬心だろう。
悟の独占欲に関しては、大人になるにつれ子供じみてきているような気がしてならない。
物事にあまり興味も分別もなかった学生時代に比べて人間らしくなったとはいえ――執着される側からしたらいい迷惑かもしれない。
そこまで考えて、ふと気がつく。
……いや。そんな悟の子供っぽいところも、人格破綻しているところも、世間一般から見てちょっとアレなところも、あまり意に介さずいなしてしまうのがななし名無しという人物だったことを思い出した。
「あ、それもそうですね。実際の五条さんはカッコイイですし。」
息を吐くように出てくる言葉。
名無しのそれには裏表がない。
だからこそ性根がひねくれた悟にはよく『効く』。
「名無し〜〜〜そういうとこだぞ〜?」
「う、わ、やめてください。禿げたらどうしてくれるんですか!」
くしゃくしゃくしゃくしゃと名無しの黒髪を執拗に撫で回す悟。
あれだけ顔面偏差値がいい男に対して、露骨に嫌そうな顔をする名無しも名無しだ。大物と言えるだろう。
さて。長居して親友の機嫌を損ねてもいけない。
書類の件は脳筋学長にでも聞くことにしよう。
……ついでに、モルカーの形をした呪骸が作れないか打診もして。