2012 winter┊︎short story
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「はい、どうぞ。」
僕の可愛い生徒。
彼女と過ごすバレンタインは初めてではないけれど、きちんとこうしてラッピングされたものを貰ったのは初めてだ。
去年は『外』に出てきてから数ヶ月だったため、そういった行事どころではなかったが、今年は少し違う。
もうすぐ彼女は高専2年生。
無事に1年生という学年を繰り上がり、日々成長する年頃だ。
生活にも精神的にも、随分余裕が出てきてイベント事も楽しめるようになったのだが――
「え〜名無しったら。もしかして本命?」
「いえ、普段お世話になっているので。」
ピシャリ。
気持ちがいいくらい、僕の淡い期待を一刀両断する。
まぁそうだろう。それもそうだろう。知ってたよ。
「他にも誰かあげるの?」
「えぇ。家入さんにはお渡ししたので、あとは夜蛾学長と七海さんと、伊地知さんに。」
僕はどうやら学長や七海達と同列らしい。
納得したいけどどうも腑に落ちない。
だって僕は彼女の担任兼保護者みたいなものだし。
それに、それに。
「えー…もうちょっと僕、欲しかったな〜」
「?、だって五条さんは色んな方から貰うのでは?」
「え。誰から聞いたの。」
「家入さんと、七海さん。」
あの野郎。
心の中でそっと僕は毒づく。
そりゃあ、まぁ、学生時代も呪術師になってからも貰わなかったわけじゃないけど?
でも、でも、そうじゃない。
「だって僕、甘党だよ?」
「知ってます。でも、たくさん頂くのでしたら…ご迷惑では?」
「いや、全然。」
というより、名無しからもっと貰えるのなら他の人からのチョコレートなんて全部いらない。
……流石にそれを口にしたら『食べ物は粗末にしてはいけませんよ。』と真剣な顔で言われるのだろうから、絶対言わないけど。
「名無しから貰えるんだったらいくらでも欲しいなぁ」
あわよくばいつか本命を。
……なんて、流石に欲張りだろうか。
欲張りバレンタイン
本人は気付いていないようで、少しだけホッとした。
一番綺麗に出来たフォンダンショコラ。それをラッピングして渡した、だなんて。
ちなみに他の形が不格好なものは寮の冷蔵庫の中ですやすや眠っている。
家入さん達にはクッキーを焼いたのだが……はてさて、どうしてやろうか。
余ったクッキーをあげる?不格好なフォンダンショコラを追加であげる?
いや、五条さんの分だけ別で作ったことがバレるのは恥ずかしい。
もっと言えばフォンダンショコラの下手くそなものを見られるのは、もっと恥ずかしい。
(……一番簡単なのはチョコレートフォンデュだけど)
欲しがりの担任はそれで満足するだろうか。
そうなれば部屋に招かねばならないのだが――甘ったるい匂いが未だに取れないあの部屋に入って、なんて顔をされるのやら。
僕の可愛い生徒。
彼女と過ごすバレンタインは初めてではないけれど、きちんとこうしてラッピングされたものを貰ったのは初めてだ。
去年は『外』に出てきてから数ヶ月だったため、そういった行事どころではなかったが、今年は少し違う。
もうすぐ彼女は高専2年生。
無事に1年生という学年を繰り上がり、日々成長する年頃だ。
生活にも精神的にも、随分余裕が出てきてイベント事も楽しめるようになったのだが――
「え〜名無しったら。もしかして本命?」
「いえ、普段お世話になっているので。」
ピシャリ。
気持ちがいいくらい、僕の淡い期待を一刀両断する。
まぁそうだろう。それもそうだろう。知ってたよ。
「他にも誰かあげるの?」
「えぇ。家入さんにはお渡ししたので、あとは夜蛾学長と七海さんと、伊地知さんに。」
僕はどうやら学長や七海達と同列らしい。
納得したいけどどうも腑に落ちない。
だって僕は彼女の担任兼保護者みたいなものだし。
それに、それに。
「えー…もうちょっと僕、欲しかったな〜」
「?、だって五条さんは色んな方から貰うのでは?」
「え。誰から聞いたの。」
「家入さんと、七海さん。」
あの野郎。
心の中でそっと僕は毒づく。
そりゃあ、まぁ、学生時代も呪術師になってからも貰わなかったわけじゃないけど?
でも、でも、そうじゃない。
「だって僕、甘党だよ?」
「知ってます。でも、たくさん頂くのでしたら…ご迷惑では?」
「いや、全然。」
というより、名無しからもっと貰えるのなら他の人からのチョコレートなんて全部いらない。
……流石にそれを口にしたら『食べ物は粗末にしてはいけませんよ。』と真剣な顔で言われるのだろうから、絶対言わないけど。
「名無しから貰えるんだったらいくらでも欲しいなぁ」
あわよくばいつか本命を。
……なんて、流石に欲張りだろうか。
欲張りバレンタイン
本人は気付いていないようで、少しだけホッとした。
一番綺麗に出来たフォンダンショコラ。それをラッピングして渡した、だなんて。
ちなみに他の形が不格好なものは寮の冷蔵庫の中ですやすや眠っている。
家入さん達にはクッキーを焼いたのだが……はてさて、どうしてやろうか。
余ったクッキーをあげる?不格好なフォンダンショコラを追加であげる?
いや、五条さんの分だけ別で作ったことがバレるのは恥ずかしい。
もっと言えばフォンダンショコラの下手くそなものを見られるのは、もっと恥ずかしい。
(……一番簡単なのはチョコレートフォンデュだけど)
欲しがりの担任はそれで満足するだろうか。
そうなれば部屋に招かねばならないのだが――甘ったるい匂いが未だに取れないあの部屋に入って、なんて顔をされるのやら。